我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百八十話 見つからない手がかり

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 手がかりが一つも見当たらない状況で、我輩達の間には沈黙が訪れる。結局のところ、犯人も、その目的も分からないままだ。


「そういえば、なぜ、ミアト殿下はフルルを見て、自分を襲撃した犯人だと?」


 そんな中、バルディスが切り口を変えてミアトへと質問する。


「……僕は、部屋で休んでいたんですが、その時、フルルに良く似た誰かが部屋に入ってきたんです」


 最初、ミアトは目の前に現れたフルルに良く似た存在に、心を震わせたそうだ。『やっと会えた』と、心から喜んだ。しかし、鼻を掠めるその匂いが、フルルであることを否定した。相手の声を聞いて、フルルではないと直感した。だから、刃物を振り上げたそいつを相手に、ミアトは即座に回避行動を取ることができ、逃げ出せたのだ。


「そんなことがあったばかりだったから、ここでフルルを見た時、襲撃してきた犯人だと思ったんです」

「そんな……怪我はっ! どこか痛いところはっ!」

「大丈夫だよ。フルル。僕はちっとも傷ついてなんかいないから」


 とても心配だと耳をピルピルさせるフルルに、ミアトは優しく応える。


「記憶を書き換える者と、変装の達人か……」

「ふむ、さすがに私もこの世界に来たばかりで、心当たりはないのだが……ルーデルはどうであるか?」

「調べてみないことには分からないが、余もそういった者の心当たりはないな……」


 完全なる手詰まり状況に、全員が沈黙する。すると、何やら外が騒がしくなり始めた。


「む? この気配は、先程の王太子達のようなのだ」

「ちょっと待て。ここは人払いしているんだぞ? 緊急事態でもない限り、王太子殿下達がここに来るわけないだろう?」

「しかし、事実なのだ」

「にゃ? にゃ……にゃあ(うむ? 『探知サーチ』……確かに、王太子達なのだ)」


 我輩も飼い主のように気配を探ろうとして、『探知』を行い、近くに王太子達が接近していることを告げる。ただ、何やら言い争ってもいるようで、すぐにここに入ってくる様子はない。


「なぜ、バルト達が……? まさか、襲撃者が見つかったのか?」

「父上、それでしたら、兄上達が動くことなどありません。せいぜい、騎士が報告に来るくらいでしょう」


 そんな会話の中、我輩は何だか嫌な予感がするのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タロの嫌な予感は、きっと野生の勘!

いや、野生を捨てているタロにも、少しは野生を取り戻してあげないとと思いまして……。

それでは、また!
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