我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百九十六話 酒の席で(一)

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 一応、酒を断ることも考えたのだが、それを言うとやたらと男が絡んできて鬱陶しかったため、俺達は慎重に歩を進め、カウンター席に着く。椅子がギシギシと音を立てる様子が、何とも恐ろしい。


「ほら、これは結構上等な酒でよ。『火竜の伊吹』つうんだ」

「『火竜の伊吹』……ドワーフにとっても貴重な酒じゃなかったか?」

「おぉっ、俺の孫はそんなことも知ってるのか。その通り、この酒は、ドワーフにもっとも人気のある酒だ。かなり強い酒だが、深みのある辛口な味わいがなんとも言えん。孫と飲みたいと思って、ずっととってあったんだ」


 このボロボロの建物に似合わない綺麗なグラスを出してきた男は、トクトクと瓶の中身をグラスへ移していく。


「つまみは、そうだな……。ワイバーンの皮膜を塩振って炙ったやつとかどうだ?」

「……いただこう」


 ワイバーンの皮膜は、細切りにして塩を振って炙れば、程よい弾力があり、中々の旨味を出してくれる食べ物だ。しかし、ワイバーンは標高の高い山にしか住み着かず、かなり凶暴な生き物であるため、その皮膜自体、ほとんど流通しない。そのため、普通に買おうと思えば、いつ入荷するか分からない上に、とんでもなく値が張る。ただ、そんなワイバーンの皮膜は、俺の好物でもあった。


「おう、食え食え。リュミーからお前はこれが好きだと聞いてたからな。ちょっくら行って狩ってきたんだ」

「リュミーとは、リュミエル様のことですか?」


 リュミエルという名前には、さすがに聞き覚えがある。確か、父方の祖母の名前で、俺より二代前の魔王だったはずだ。


「おう、そうだ。お嬢ちゃんも食べるか?」

「……では、少しだけ」


 『お嬢ちゃん』という言葉に複雑そうな表情をしながらも、ラーミアは一欠片ほど皮膜を摘まむ。


「では、アグニ様?」

「そうだ。さっきは悪かったなぁ。坊主」

「……いえ」


 酒を勧められて、とりあえずチビチビと飲むディアムは、やはり、『坊主』という言葉に複雑そうな顔をする。


「そんで、ここには依頼でも受けに来たのか?」

「そのつもりだったが……今は、貴方のことを知っておきたい」

「孫に知りたいと言われるなんて……お祖父ちゃん、張り切っちゃうぞ?」

「いえ、張り切らないでもらいたい」


 冗談っぽく言われたものの、何ともゾワゾワとするその物言いに、俺は速攻で反論しておく。


「何だ、つまらんな。それで? 知りたいのは『心術』使いのことか? それとも、ミルテナ帝国の動向か?」


 どうやら、この男は、アグニは、俺達が知りたいことをピンポイントで知っているらしい。その事実に、俺はラーミア達と目を合わせて、お互いに顔をしかめるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


なぜか、お祖父ちゃんに情報だだ漏れらしいことに気づいたバルディス達。

次回辺りで、その辺りはちょこっと出せるかな?

そしてお知らせです。

もしかしたら、明日は更新できないかもしれないです。

明後日は確実に更新しますので、もし、更新がなかった場合は少しだけお待ちください。

それでは、また!
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