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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇
第四百四十六話 ナージャ様の旅(十二)
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ケントの話を聞き終えたナージャは、ゆっくりと息を吐く。
「バル様は、ずっと魔王として動いておられたのですわね」
「うむ、立派な男なのだ」
すでに、ケントが勇者だからといってナージャが警戒する様子はない。ケントの話を聞いたことによって、ナージャはケントが味方であると判断したのだ。
「それで? 私には何を求めて声をかけたのです?」
「うむ、バルディスの婚約者とあったのでな。事情の説明くらいはしておいた方が良いと思ったのが一つ。少し協力してもらおうと思ったのが一つ、といったところなのだ」
『協力』の一言に、ナージャは眉をひそめる。
「協力? 私が、勇者であるケントに? 何のメリットもなくそんなことをするほどのお人好しではありませんわよ」
「む、もちろん、メリットはあるのだ。私の手伝いをしてくれた暁には、バルディスとの合流に同行しても良いこととするのだ」
「……バル様は、アグニ様の『転移』でファルシス魔国に帰還なさったのではないのですか?」
「それが、『転移』を頼もうと訪ねたところ、アグニはファルシス魔国に一人帰国していてな。いつ帰ってくるかも分からないと屋敷の者に教えられたそうなのだ。だから、バルディス達はルビーナ商国へと向かっているのだ」
バルディスの行き先を告げたケントを前に、ナージャはニンマリと笑う。
「それが聞ければ十分ですわ。私は、ルビーナ商国へと向かいますわ」
「だが、私と一緒にいれば、確実に合流できるのだぞ?」
「大丈夫ですわっ。私とバル様は運命の赤い糸で繋がっているのですからっ!」
小指を差し出して自慢げにするナージャに、ケントは冷たい声を返す。
「……これまで、ずっとすれ違ってきたのにか?」
「……だ、大丈夫ですわっ!」
確かに、アルトルムでも、サナフでも、セイクリアでも、バルディスとはすれ違い続けているナージャ。思うところがあったのか、少し間を置いての返事となる。
「ルビーナ商国は人が多い。そこで、バルディス達を見つけ出すのは至難の業だと思うが?」
「だ、大丈夫、ですわ」
それでもきっと見つけられると信じている様子のナージャに、ケントはさらに畳み掛ける。
「ちなみに、バルディス達はルビーナ商国では変装していくと言っていたぞ? タロ監修だから、全くの別人にしか見えないはずなのだ」
「……協力、させていただきますわ」
とうとう、ケントの言葉に折れたナージャ。
その後、このカレッタ小王国では、勇者が高笑いをする魔女を従えて、悪党を懲らしめる物語が流行するのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ナージャ様が、負けた、だと!?
ナージャ様も、ずっとバルディスとすれ違い続けていることに、思うところはあったみたいですね。
次回は、タロ達のお話となります。
次はどんな問題が起こっていることやら。
それでは、また!
「バル様は、ずっと魔王として動いておられたのですわね」
「うむ、立派な男なのだ」
すでに、ケントが勇者だからといってナージャが警戒する様子はない。ケントの話を聞いたことによって、ナージャはケントが味方であると判断したのだ。
「それで? 私には何を求めて声をかけたのです?」
「うむ、バルディスの婚約者とあったのでな。事情の説明くらいはしておいた方が良いと思ったのが一つ。少し協力してもらおうと思ったのが一つ、といったところなのだ」
『協力』の一言に、ナージャは眉をひそめる。
「協力? 私が、勇者であるケントに? 何のメリットもなくそんなことをするほどのお人好しではありませんわよ」
「む、もちろん、メリットはあるのだ。私の手伝いをしてくれた暁には、バルディスとの合流に同行しても良いこととするのだ」
「……バル様は、アグニ様の『転移』でファルシス魔国に帰還なさったのではないのですか?」
「それが、『転移』を頼もうと訪ねたところ、アグニはファルシス魔国に一人帰国していてな。いつ帰ってくるかも分からないと屋敷の者に教えられたそうなのだ。だから、バルディス達はルビーナ商国へと向かっているのだ」
バルディスの行き先を告げたケントを前に、ナージャはニンマリと笑う。
「それが聞ければ十分ですわ。私は、ルビーナ商国へと向かいますわ」
「だが、私と一緒にいれば、確実に合流できるのだぞ?」
「大丈夫ですわっ。私とバル様は運命の赤い糸で繋がっているのですからっ!」
小指を差し出して自慢げにするナージャに、ケントは冷たい声を返す。
「……これまで、ずっとすれ違ってきたのにか?」
「……だ、大丈夫ですわっ!」
確かに、アルトルムでも、サナフでも、セイクリアでも、バルディスとはすれ違い続けているナージャ。思うところがあったのか、少し間を置いての返事となる。
「ルビーナ商国は人が多い。そこで、バルディス達を見つけ出すのは至難の業だと思うが?」
「だ、大丈夫、ですわ」
それでもきっと見つけられると信じている様子のナージャに、ケントはさらに畳み掛ける。
「ちなみに、バルディス達はルビーナ商国では変装していくと言っていたぞ? タロ監修だから、全くの別人にしか見えないはずなのだ」
「……協力、させていただきますわ」
とうとう、ケントの言葉に折れたナージャ。
その後、このカレッタ小王国では、勇者が高笑いをする魔女を従えて、悪党を懲らしめる物語が流行するのだった。
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ナージャ様が、負けた、だと!?
ナージャ様も、ずっとバルディスとすれ違い続けていることに、思うところはあったみたいですね。
次回は、タロ達のお話となります。
次はどんな問題が起こっていることやら。
それでは、また!
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