我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百四十九話 必死な現実逃避

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 完全なるイロモノ集団となった俺達は、なぜか自分の姿を気に入ったらしいディアムと、すでに達観してしまっているマギウス以外、心に深い傷を負ってしばらく沈黙する。


「にゃっ(やりきったのだっ)」


 満足そうなタロが、今は憎らしい。しかし、タロにはどんなに言い聞かせても、まともな姿への変更はしてくれそうにない。むしろ、どんどん酷くなる有り様が目に浮かぶ。


「……諦めよう。ファルシス魔国に戻るまでの辛抱だ」


 そう言うと、ロギーとラーミアは虚ろな瞳でうなずく。


「にゃ? (うむ?)」


 何が何だか分かっていない様子のタロから視線を逸らし、思考も懸命に逸らしてみせる。


「ところで、ボスティアのお姫様とやらは、誰に拐われたんだろうな」

「そうですね、魔王が拐ったというのはあり得ないのですから、何者かが拐っているのですよね」

「む、ボスティア海国と敵対している国といえば、どこだ?」


 話題に食いついたのは、ラーミアとロギー。ディアムは、自分の姿が気に入ったらしく、『水鏡』の前で色々な角度で観察をしている。


「ボスティア海国といえば、海の中の人魚達の国で、交流している国はファルシス魔国とルビーナ商国くらいのものですね。敵対している国は、私達がファルシス魔国に居た頃には聞いていませんわ」

「むむぅ、では、何か、恨みを買うような事件はなかったか?」

「それこそ聞きませんわね」


 ラーミアとロギーの必死な現実逃避に、俺もどうにか加わることにする。


「となると、一番の候補はミルテナ帝国か?」

「それくらいしか現状、考えられませんわね」

「むぅ、確かに、これまでもミルテナ帝国が関わってきたのであったな」


 とりあえず、ミルテナ帝国が黒幕な可能性が高いことくらい、簡単に想像がつく。そうした無意味な会話をしていると、だんだんとマギウスの視線が呆れたものとなってくる。ちなみに、ディアムはタロにお礼を言いながら喜びをあらわにしている。


「……そろそろ、現実を見たら?」

「「「嫌だ(です)」」」


 マギウスの言葉に一斉に反論して、俺達は互いの変わり果てた姿を見る。


「……」

「……」

「……」


 受け入れがたい現実。ようやく、マギウスの苦悩を体験することとなり、俺は、マギウスをちゃんと救おうとしなかったことを後悔し始める。


「まぁ良いけど……タロ、どっか行ったよ?」

「何?」

「はっ?」

「むっ?」


 そうして見ると、確かに、タロの姿がない。


「タロっ、どこ行った!?」


 俺は、タロの天然っぷりを思って、また問題を起こすのではないかと叫ぶのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回は、思いっきり現実逃避をするバルディス達でした。

いやぁ、ショックが大きすぎたんでしょうね。

明日は、タロ視点で……何かトラブル発生の予感?

それでは、また!
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