我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百七十七話 一仕事終えて

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「にゃふぅっ(大漁なのだっ)」

「大漁?」


 刺身にしたり、ぶつ切りにしたりしたタコをひとまず『収納』した我輩は、バルディスを捜し出して自慢気に胸を張る。


「それよりも、無事で良かった。あのタコは討伐できたのか?」

「にゃっ(もちろんなのだっ)」


 抱き上げられた我輩は、バルディスの頬にスリスリする。


「そうか……とりあえず、話に聞いていた襲撃があれだけとは限らない。まだしばらく警戒はする予定だが……やはり、ミルテナ帝国が関わっているようだな」


 瘴気に包まれたタコを見ているバルディスとしては、あのタコは邪神教徒を抱えたミルテナ帝国の仕業と思えるらしい。


「にゃっ(そうだっ、タコの中に、こんなものが入っていたのだっ!)」


 そう言って我輩、『収納』からビー玉ほどの大きさの、元は球体だった黒い欠片を取り出す。


「これは?」

「にゃにゃー(『邪神の眼』のコア、の分体とやらなのだ)」


 半分に割れたそれは、もう、今では力を持たない欠片だ。しかし、これがタコの体内にあったからこそ、あんな風に暴れたのかもしれなかった。
 そのことを話せば、バルディスは途端に顔をしかめる。


「それは……『邪神の眼』があれば、あんな化け物をまた作れるってことか?」

「にゃ……(そういえば……)」


 確かに、あのタコは『邪神の眼』産の魔物ということになるだろう。そうなると、早く『邪神の眼』を塞がなければ、また同じことが発生するかもしれないのだ。


「いや、だが、もし量産できるようなら、とっくに量産してこの国を滅ぼしていてもおかしくないな。……何らかの制約があると見るべきか……」


 ブツブツと呟くバルディスに、我輩、不安になって声をかける。


「にゃー(バルディス)」

「ん、あぁ、すまないな。とりあえずは、他の港の方にも行ってみようか」

「にゃっ(分かったのだっ)」


 そうして、我輩達は他の港を巡り、それぞれに『結界』を張り巡らせていく。あのタコが現れた港には、ディアムを監視に置いて、どんどん作業を進めていき……四分の一の港に『結界』を張り終えた頃には、もう、日も沈みかけていた。


「にゃあぁ(眠いのだぁ)」

「あぁ、とりあえず、主要なところは押さえたから、もう寝て良いぞ? 何かあればすぐに起こすがな」

「にゃ(お休みなのだ)」

「お休み、タロ」


 バルディスの優しい声に導かれるようにして、我輩、ゆっくり眠りに落ちるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


前回までのことを考えると、今回はだいぶ落ち着きました。

タコ料理は、そのうちバルディス達と一緒に食べることとなりそうです。

それでは、また!
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