我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百八十話 水は嫌っ

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 船旅は、もちろん、穏やかなものとはいかなかった。まず、漁師達の話にあった渦潮が発生し、タロに『浮遊』魔法をかけてもらって回避した。それからまたしばらく進めば、『監視』魔法であるはずのない岩礁を見つけることとなり、大きく迂回。またしばらくすれば、海の魔物が押し寄せてきて、タロが仕組んだ『反射』魔法によってどんどん弾かれて一部は俺達の食料となった。


 ……あれ? 俺達何もしてない?


 穏やかな船旅ではない……はずなのだが、タロのおかげで俺達はただ船の操舵に集中していれば良かった。


「にゃあ(同胞達にもごちそうしたいのだ)」

「あぁ、ある程度は持ち帰ろうな」


 果たして、猫達が魔物を食べられるのかどうかは知らないが、タロに言わせると魚の味だから大丈夫とのことだった。


 ……まぁ、毒もなさそうだしな。


 タロは規格外だとしても、俺達でも美味しく食べられるそれは、恐らく猫にやっても問題ないだろう。


「それ、猫が普通に食べるわよ?」


 そんなヨナからの言葉もあったから、大丈夫なはずだ。
 他の猫達のお土産にできると知ったタロは、それから暇さえあれば魔物をどこからともなく狩ってきて、『収納』に入れていった。

 それから十日。俺達は、いよいよボスティア海国の前に辿り着く。


「ここか?」

「ここよ」

「にゃ? (ここ?)」


 ヨナに確認を取れば、間違いなくここらしい。しかし、タロは見渡す限りの海を見て首をかしげる。


「そういえば、タロには話してなかったか?」

「にゃあ? (何なのだ?)」


 もしかしたら、話していなかったかもしれないと思い、タロを見てみると、案の定首をかしげている。


「ボスティア海国は、海の中にある。これから潜るぞ」

「にゃ……にゃ……にゃあぁぁあっ!! (『海の中』……『潜る』……ノォォォォオッ!!)」


 一気に逃げ出そうとするタロを捕まえられたのは、きっと奇跡的なことだったのだろう。


「にゃあっ。にゃあっ(嫌なのだっ。水は嫌なのだっ)」

「落ち着け、タロ。ちゃんと結界を張って入るから、水に濡れることはない」

「にゃーっ、にゃ……にゃあ? (嫌なのだっ、嫌……うむ?)」

「良いか、タロ。水に濡れることはないんだ」


 そう言い聞かせると、タロはうるうると瞳を潤ませながら『本当に?』と尋ねてくる。


「本当だ。大丈夫だ」


 そう言うと、タロはようやく暴れるのを止めて、大人しくなるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


猫は水を嫌うもの。

と、いうわけで、今回はタロが大暴れ。

次回、ようやく入国です。

それでは、また!
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