我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百十二話 張り巡らせるもの

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 フィフィーの考えはこうだった。
 リィちゃんは、恐らく今回騒ぎになっている人間達が連れてきた可能性が高いということ。そして、それを証明し、保護するという名目ができれば、リリーヌ公爵家も無視できない可能性があるということ。


「ただし、あくまでも可能性です。それに、それまでピィちゃんが無事でいられる保証はありません」

「それでも、やるしかないだろう」


 わずかでも可能性があるのであれば、私は躊躇しない。現在、人間の目撃情報は少ないながらも存在する。きっと奴らは、自分達で持ってきた食料が尽きれば、民を襲って奪うだろう。


 いや、まぁ、そこらの生き物を狩るという可能性もあるがな。


 とりあえずは、どちらの可能性も視野に入れて、行動するほかない。


「地上の者であれば、水中での動きは鈍い。場所さえ分かれば、そして、その場所が陸上地帯ならば、一時的に水を流し込んであぶり出すこともできる」


 このボスティア海国には、一部、空気が満ちた陸上地帯と呼ばれる場所がある。そこは、本来ボスティア海国に住んでいた魚人と地上の者が結ばれた結果、生まれたハーフの子供達が住まう場所だ。彼ら彼女らは、見た目こそ我々と変わらないものの、永遠に海中で暮らすことができず、時々は地上の空気を吸わなければ生きていけない。ただ、地上に出ることは危険を伴うことが多いため、地上の空気をこの海中に届け、留めるための魔法具が開発され、数ヶ所でそれらが稼働するようになっているのだ。


「最後の目撃情報によりますと、パルピンの村周辺で、二名の人間を確認したとのことです」

「とっくにそこには増員してあるが……さて、そいつらは、どこに逃げるつもりか……」

「この国に用がないのであれば、地上に戻るでしょうが、その形跡はありません。何らかの目的を持って、この国に来たことは間違いないでしょうし、まずはその目的を探るのが先決かと」

「目的、ね……」


 人間達の考えることは、大抵同じだ。珊瑚や海中資源の密漁、魚人拐いが一番目的となりそうなものだ。現在の情勢を鑑みるに、もし魚人拐いだとするならば、もう、国家間の溝は埋めようもなくなりそうではあるが……。


「陸上地帯の警備をさらに増員しよう。万が一、彼らの目的が誘拐であれば、何としてでも阻止しなければならない」

「はっ」


 海中資源の問題も問題といえば問題だが、誘拐よりはマシだ。
 そうして、あれやこれやと対策を練って、網を張った私達は知らない。地上から来た者達の目的が、この国の姫様の救済だったこと。どんなに網を張り巡らしても、地中を進む彼らには無意味だったこと。食料は、リィちゃんが大量に所持しており、当面は困らない状態だったこと。
 何もかもが計算外な中、私達は、彼らが網にかかるのを、じっと、待つのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


思いっきり空回りしている隊長さん達。

でも、まぁ、相手は魔王と勇者なんだから、仕方ないのかも?

次回は、タロ達の方に視点を戻したいと思いますっ。

それでは、また!
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