我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百二十三話 巨大魚の腹をぶち破れ(六)

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 何か、変な夢を見た気がするのだ。


 内容は覚えていないものの、何か、大切なことだったような気がした。しかし、そう考えたのも一瞬のこと。


「タ、ロ……」


 目の前に、辛そうな表情のラーミアが居て、我輩、大慌てで『結界』を張り直す。


「は、ぁ……何とか、一時間、もったようですね」


 どうやら、我輩が倒れてから、しっかり一時間は経っていたらしい。ちょっと前までは、このプリティーなボディが重かったのに、今はとても軽い。


「にゃあ(ありがとうなのだ)」


 改めて辺りを確認してみれば、他の魚人達は、まさに死屍累々の状態だった。


「……にゃ(……まずは、回復なのだ)」


 魔力が残り少ないこともあるのだろうが、何よりも気力を消耗しているらしい彼らに、我輩、食材を出してみる。


「今から、食事、ですか?」

「にゃあっ! (腹が減っては戦はできぬ、なのだっ!)」


 ラーミアの顔色もよろしくない。きっと、我輩が起きるまでに、必死に頑張ってくれていたのだろう。こんな時は、食事をして、体調を整えるのが何よりも大切だ。


「……はぁ、何となく、ですが、タロの心配は分かりましたわ。私は、その果物をいただきます。他のものは、魚人達に渡しましょう」


 そうして、しばしの食事タイム。こうしている間にも、穴から瘴気が溢れているのだが、我輩の『結界』によって、それらは全て弾かれている状態だ。


「よっしゃっ、復活だっ!」


 ビー兄さんのその雄叫びにビクリとしながら、我輩、全員が魔力こそないものの、そこそこに復活したことを確認する。


「にゃっ! (行くのだっ!)」


 そうして、我輩達は、『結界』を張ったまま瘴気が漏れ出る穴の中へと飛び込む。


「にゃー(『光源』なのだ)」


 真っ暗な中。我輩達はお互いに離れないよう手を繋ぎ、我輩は、ビー兄さんに抱き上げられている。ラーミアは水中ではまともに動けないため、他の魚人達に連れられている形だ。


「何というか……不気味だな」


 洞窟のようなその場所を、我輩達はゆっくりと進む。今のところ、ここがちゃんと巨大魚の腹の中なのかは不明だ。それというのも、『探索能力』を使った結果、エラーしか起こっていなかったからだ。


 とっても嫌な予感がするのだ。


 ここに飼い主が居てくれたら、どれだけ心強かったことだろうか。しかし、今、飼い主はカレッタ小王国で国の建て直しに尽力しているはずで、頼ることなどできはしない。

 そうして進み続けていると……一つの行き止まりにぶち当たったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さぁ、タロ達の現在地はいったい……?

それでは、また!
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