我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百二十七話 巨大魚の腹をぶち破れ(十)

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 激しい地震で、上下左右も分からなくなりそうではあったが、それでもビー兄さんは的確に水流を操作してくれていた。思っていたほどの勢いはないものの、大穴に向かってしっかり前進し、その奥へと侵入していく。


「くっ……」

「ビー兄さん、頑張るのだっ!」


 苦しそうに呻くビー兄さんに、我輩、しっかりとエールを送る。穴が空いて、脱出経路を確保した我輩には、もう、他にできることはない。


「う、おぉぉぉぉぉおっ!!」


 ビー兄さんの雄叫びに連動して、水の流れが加速する。そして、その直後……。


「で、出られ、たぁぁぁあっ!?」


 肉の壁がなくなった解放感に叫ぼうとした我輩は、そのまま別の悲鳴を上げることとなる。


「うわぁぁぁぁぁあっ!」

「きゃあぁぁぁぁあっ!」

「ぬあぁぁぁぁぁあっ!」


 我輩達は、全員で悲鳴を上げる。何せ、視界が回っているのだ。それはそれは面白いくらいに、グルグルと。


 にゃ、にゃに、がぁっ……。


 何が起こったのか分からないまま、我輩達は、瘴気に包まれた場所から離脱していく。バキバキと、何かをなぎ倒す音も聞こえてくるものの、今の我輩にそれを確認する力はない。


「う、うぅ……」

「……」

「お、え……」


 我輩、ラーミア、ビー兄さん、そして、ビー兄さんの部下の魚人達。それぞれが、いつの間にか止まっていた視界の中、グッタリと横たわる。


「……きっと、巨大魚に、弾き飛ばされたんです、ね」

「ぐぬぅ……」


 真っ青な顔をしながら、先程のグルリン地獄の原因を分析したラーミア。しかし、それを聞いているのは我輩だけのようで、他は完全にグロッキー状態だ。


「目が、回ったのだ。まだ、クラクラなのだ……」

「えぇ、しばらくは、休みましょう。辺りの警戒は、しなければなりませんが……」


 ようやく巨大魚の腹から脱出できた我輩達。しかし、今はそれを喜ぶ余裕は全くなく、ただただ、まだ回っているように感じる視界を正常に戻すべく、ゆっくり、静かに休憩を取るのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


とりあえず、脱出成功!

次回は、バルディス達の方でお話を展開していきますね。

それでは、また!
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