我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百五十六話 おとぎ話

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 ハーレの元に、邪神の情報を届けることに決めた俺達は、待機組と情報収集組、そして、情報を届けに行く組とで分かれることとする。


「説得に時間がかかりそうですね」

「あぁ、確かにな」


 そして、俺とラーミアが、ハーレへ邪神の情報を持っていくこととなった。ただ、ラーミアの言う通り、ハーレ達に邪神のことを理解させるのは時間がかかるかもしれない。


「ざっと調べた限りでは、この国で邪神といえば、おとぎ話の中の存在でしかないらしいしな」

「邪神が猛威を奮ったという史実が、ボスティア海国にはありませんでしたものね」


 邪神、邪神とは言うが、具体的にそれは何か、ということになってくると、様々な伝承が残っている。その中でも有名なのが、『勇者物語』だ。


「勇者が邪神を倒す物語の中に、確かに魚人は出てこないからな」


 人族の勇者が、様々な種族を仲間に加えて冒険し、世の中を混沌とさせていた邪神を討つという内容のおとぎ話は、地上ではわりと多くの種族が知っている。ファルシス魔国でも、それは絵本にまでなっており、長らく人気のある作品だ。


「そもそも、邪神の存在を信じてもらえたとしても、対抗手段がないことにはどうしようもありませんが……」


 厄介なのはやはり、瘴気の存在だ。あれがある限り、俺達は邪神に抵抗する術がない状態になってしまう。そこで活躍するのは、もちろん、タロとケントなのだが……それを話すには、まだ、信頼関係がしっかり築けていると言えるかどうか、微妙なところではあった。たとえ、今回のことで恩を売れるとしても、話をまともに捉えてもらえるかどうか分からない。

 そんな話をしているうちに、ハーレの居る騎士舎へと辿り着き、さっさと執務室へと向かわせてもらう。


「ハーレ。バルだ。報告があってきた。入っても良いか?」

「うん? あぁ、良いぞ。入ってくれ」


 ハーレの言葉で、俺は入り口にかかっている布を押し上げて入室する。


「今、忙しいから、手短に頼む」


 ハーレの執務室には、ハーレだけではなく、フィフィーも居て、二人して必死に何かをワカメに書き続けていた。


「あぁ、リリーヌ公爵は、邪神復活を目論む一派だったらしいことが分かった」

「邪神?」

「……おとぎ話の、ですか?」


 顔を上げたハーレに対して、フィフィーは顔を上げることなく質問する。やはり、邪神はおとぎ話の中でしか存在していないらしい。


「いや、おとぎ話じゃない。邪神は、実在する」

「この忙しい時にそんな話を聞く暇は「聞こう」隊長?」


 フィフィーには断られそうになったものの、ハーレは何か感じるものでもあるのか、聞く体勢に入る。


「ちょうど、邪神のことは知りたいところだったんだ」


 そんな反応を示すハーレに、俺とラーミアは困惑しながらも、話を進めることにしたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さてさて、話は着々と進んでいっております。

次回は……そろそろタロ達を出たいところ?

それでは、また!
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