我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第三十五話 手紙(一)

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 僕は、ガンガンと痛みを訴える頭を無視して、フラフラと帰路に着いていた。

 アルトルム王国を襲った流行り病。これに対応するために、宮廷薬師はてんやわんやだった。が、どんなに努力すれど、改善されない状況に、一人、また一人と病に倒れ、今では僕ともう一人だけが頑張っている状態だった。

 ただ、それも僕が頭痛を訴え、倒れるまでの話。必死に取り繕って我慢してきたものの、どうやら限界だったらしい。とうとう、帰宅命令が出されてしまった。


「はぁっ、うっ……」


 ため息だけでも頭に響く。しかし、このままでは病は広がるばかり。アルトルムの民が死んでいくのを見ることしかできないなんて、宮廷薬師の名が廃る。


「にゃー」

「うっ、猫?」

「にゃーにゃにゃあ」


 ふいに聞こえた猫の声に、僕は痛む頭を押さえながらそれから離れようとする。頭痛があるときに音は凶器でしかない。例えそれが、可愛らしい猫の鳴き声だとしても。しかし……。


「にゃあ」

「みにゃあ」


 なぜか、猫は僕の足にまとわりついてきた。それも、二匹。一匹は白猫で、どこかの飼い猫なのか、ヘンテコな服を着ている。もう一匹は茶白の猫で、これは、まぁ、普通だ。


「にゃあにゃ」

「にゃー」


 普段なら、猫に懐かれるのは嬉しい限りだが、今は状況が悪い。頭が痛くて、吐きそうだ。


「た、のむから、鳴かないで、くれ」


 ガンガンと痛む頭を抱え、どうにかそう告げると、ピタリと鳴き声が止む。そのことにホッとしながらも、随分と聞き分けの良い猫が居たものだと足元を見ると、二匹の猫はお行儀よく並んで座り、こちらを見上げていた。しかも……白猫の方が、何かの紙を口にくわえて。


「? これ、は?」


 無意識に、僕はその紙を手に取る。


『この紙を受け取った者は、猫の案内に従ってください』


 ただ、それだけが書かれた紙に、僕は痛む頭で考える。

 明らかに誰かを呼び出そうとする文章。しかも、内容からするに、相手は猫を使役する力を持つ者。つまりは……。


「亜人、か?」


 ここ、アルトルム王国では、亜人に対する差別は禁止されている。獣人も、エルフも、ドワーフも、自由に暮らせる国だ。しかし、それでも差別する者が居ないわけではない。差別のせいで、生活が困窮する亜人は、未だに居る。


「差別され、て、助けを、求めて、るのか?」


 実を言うと、僕は亜人からは良く知られた薬師だった。差別をしない、優しい薬師だということで。今回のような呼び出しは珍しいが、それでも全くなかったわけではないそれに、僕は早々に結論付ける。


「分かった。行こう」


 頭は痛いし、吐き気も酷い。病を移す恐れもあるが、必ずしもその相手と会うとは限らない。行って、追い払われたらそれまでだ。

 そう思って、僕は、猫の案内に着いていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

二日後の更新、何とかできました!(分量はちょっと少ないですが…)

本当は、毎日更新できた方が良いんでしょうけどそれはボチボチということで?

……分量を減らしたら行けそうな気もしますが、そこは追々考えていきます。

それでは、次も二日後、もしくは明日の更新を目指して頑張りますね~。
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