我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第四十話 作戦と実践(四)

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 途中、エイルは体調が思わしくないせいで何度も休憩を求めてきたが、我輩達は文句も言わずに付き合う。我輩達の行動が、このアルトルム王国の未来を担うと分かっていれば、当然のことだ。

 小さな道も、大きな道も、通れるなら通ってしまえとばかりに歩き続けて、辿り着いたのは、小さな教会だった。それは、随分とボロボロで、少し不安になる外観ではあったが、中は、ディアムが魔法を用いて綺麗にしたと言っていたから問題ない。

 ラーミアによると、『多少は小綺麗にしておかないと不審に思われるわよ』とのことだった。

 そうして、我輩はササッと教会へと入って…………後ろにエイルが着いてきていないことに気づく。見ると、エイルは教会の前で立ち止まって、何やらブツブツと言っている。もしかしたら、まだ体調が良くないのかもしれない。


「にゃあ(こっちですよっ)」


 声をかけるかどうかを迷っていると、チャーが先に声を出す。どうやら、チャーは少し焦っているようだった。
 だが、それも無理はない。ここで帰られでもしたら、また最初から人捜しをしなければならないのだから。

 そう考えると、我輩も少し心配になったが、それはどうやら杞憂に終わった。エイルは、どこか覚悟を決めたような表情になり、確かな足取りで教会へと来てくれた。


「お、お邪魔します?」


 そんな挨拶を受けながら、我輩、チャーとともに目的を果たすべく、歩く。


「にゃあ(こっちなのだ)」


 我輩は、注意を引くべく声を上げ、椅子に飛び移り、次は目的の物がある机にまで飛ぶ。


 ……ちょっとミシッていったのは、きっと、我輩が重いからじゃないのだっ。チャーも居たからなのだっ。


 不穏な音を立てた机に、我輩、心の中で言い訳をする。我輩、体重が気になるお年頃なのだ。


「にゃーにゃっ(これが、この国を救ってくれる薬ですっ)」


 そんな我輩の様子に気づかないチャーは、一生懸命、薬の存在を主張する。


 はっ、いけないのだ。我輩も、しっかりしなければっ。


「これは……?」


 そこにあるのは、薬が入ったいくつかの小瓶と手紙。なお、手紙に書かれている内容はこうだ。


『神の遣いに導かれし人の子よ。

この薬は『ドキン薬』と呼ばれるものです。

パクの花の花弁とハチツボ草の葉を十対一の割合で擂り潰し、水で割ったもの。

きっと、アルトルムの民にとっては馴染みのあるものでしょう。

今、この国は未曾有の病という名を借りた毒に苛まれています。

毒は、水辺に存在し、その水を今もなお、汚し続けています。

そして、それを救う唯一の薬を、何者かが入手できぬように妨害しています。

そう、この薬は、アルトルムを毒から救うもの。

私が前もって、直々に広めていた特効薬です。

アルトルムが滅ぶことは、私の本意ではありません。

ですので、どうか、この薬でアルトルムを救ってください。

世界神、セイクリアより』


 これを読んだエイルは、まず、小瓶の中身を確かめるべく、臭いを嗅いだり、少し舐めてみたりする。そうして、『ドキン薬』である確証を得たのか、いくつもある小瓶の一つを一気に飲み干した。飲んだ後のエイルは、少しの間、副作用の動悸のせいで胸を押さえるが、その顔色はみるみるうちに良くなる。


「こ、これは……本当に特効薬!?」


 『探索』でも調べてみると、どうやらマリス毒の影響は完全に抜けたらしい。ただ…………『神への信仰に目覚めた』という記述が増えていて、我輩、何だか妙な罪悪感に苛まれる。しかも、『ありがとうございます。セイクリア様。ありがとうございます。神の使者様。必ず、この命に変えましても、この特効薬を広めてみせます』と、神に祈った後、我輩達にも感謝を述べてくる。
 本当は、セイクリア神の名を騙って薬を広めようとしているので、とても気まずい。

 一通り感謝を告げたエイルは、その後、小瓶を抱えて、急いで走り去っていく。きっと薬を広めに行ったのだろう。これが上手くいけば、もう、心配はないはずだ。

 そうして、ガランとした教会に立ち尽くした我輩とチャーは、それからしばらくして、バルディス達と合流すべく、教会を後にしたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


やっと『作戦と実践』は終わりです。

今回は、ちょっと長めの分量を更新してます。

そして、次のお話は……また、タロ不在回の予定です。

また明日、更新できるように、チョコチョコ書いていきますね~

そして、感想とかももらえたら嬉しいです。

それでは、また!
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