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第一章 アルトルム王国の病
第四十一話 見えた希望の光
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『病の特効薬が出来た』という情報は、まず、王城にもたらされた。そのことで、この国の王、セルバスは内心、狂喜乱舞する。これで、自身の娘であるサリアーシャが助かるのだ。喜ばないはずがなかった。
しかし、もたらされたものは、薬だけではなかった。それは、病の原因。水辺に毒草が生えているという異常事態。特効薬を得ることを邪魔立てする存在。
セルバスは、即座にこれらの情報に規制をかけた。何者の行いであるにしろ、国を滅ぼそうとしたのだ。慎重に捜査を進め、その者を捕らえる必要があった。
また、問題は他にもある。それは、誰から先に特効薬を飲ませるかということ。
エイルが回収してきた薬瓶は、全部で五十八。エイルが先に飲んでしまったことに関しては不問とされたが、ここからは、誰から先に快復させるかを考えなければならない。
「陛下、サリアーシャ様に薬を持っては行かないのですか?」
「う……む」
執務室にて、ダウロスの問いかけに、セルバスは言葉を濁す。
快復させたい者として、娘のサリアーシャはもちろん、真っ先に思い浮かぶ。しかし、この先の薬の確保を考えるのであれば、騎士団の面々を快復させることが一番でもあった。特に、薬の材料を得るための行動が妨害されるとなれば、それに対抗できる戦力が必要となってくる。
むろん、自分にこそ薬が必要だと訴える貴族が居るのは確かだが、その意見はまず通らない。いや、通すわけにはいかない。そして、通さないためにも、サリアーシャには今しばらく我慢してもらう必要があった。
「ままならぬものだな。王であるが故に、娘の快復を先送りにしなければならないとは」
そうは思えど、希望は確かに見えた。幸い、サリアーシャは発症してまだ間がない。これですぐに死ぬようなことはないはずだ。
「騎士団の精鋭部隊を優先的に快復させろ。それで余ることはないだろうが、余った場合は……宮廷薬師に回せ」
「はっ、承知いたしました」
ダウロスはセルバスのかつての教育係であり、かけがえのない側近でもある。この国に宰相という地位はないものの、ダウロスがやることは宰相のそれだった。
「それと、どのような薬であるかについての情報統制はどうなっている?」
「はっ、薬の内容を知るものは、陛下と私、ゴート子爵家次男、ベリル公爵家長男の四名に収まっております」
ゴート子爵家次男は、エイルのことであり、ベリル公爵家長男というのはエイルの直属の上司に当たる人物だ。この薬の件が漏れなかったのは、エイルが真っ先にベリル公爵家長男のアディル・ベリルに相談したことと、そのアディルが聡明な人物であり、この情報の重要性を正しく理解し、エイルに口止めを命じ、セルバスに素早く報告したことがあったからだ。
「うむ、ならば、騎士達に薬を渡した後、その情報が漏れぬよう、箝口令を敷く」
「はっ、承知いたしました」
毒の特効薬である『ドキン薬』は、あまりにも特徴的な薬であり、馴染み深い薬でもある。それ故に、もしも、『ドキン薬』が特効薬だと知れ渡ってしまえば、原料であるパクの花やハチツボ草が乱獲されかねない。いや、もしかしたら、報告にあった妨害を受けて、無用な血が流れる事態もあり得る。それだけは避けねばならないとばかりに、セルバスは情報の規制を命じる。
「それでは、すぐに対処して参ります」
ダウロスは深々と礼をすると、すぐさま立ち去る。早く対処すれば、それだけ早くサリアーシャも助かる。セルバスは、素早く対処してくれるダウロスに感謝しながらも、これからのことについての考えを巡らすのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さてさて、この度は王様の周辺事情でした。
そーろそろ、アルトルムの病もとい、毒はその影響を消してくれることでしょう。
章の終わりが見えてきて、ちょっと安心です。
章が一つ終わっても、話はまだまだ続きますがね。
それでは、また明日、頑張って更新していきますね。
しかし、もたらされたものは、薬だけではなかった。それは、病の原因。水辺に毒草が生えているという異常事態。特効薬を得ることを邪魔立てする存在。
セルバスは、即座にこれらの情報に規制をかけた。何者の行いであるにしろ、国を滅ぼそうとしたのだ。慎重に捜査を進め、その者を捕らえる必要があった。
また、問題は他にもある。それは、誰から先に特効薬を飲ませるかということ。
エイルが回収してきた薬瓶は、全部で五十八。エイルが先に飲んでしまったことに関しては不問とされたが、ここからは、誰から先に快復させるかを考えなければならない。
「陛下、サリアーシャ様に薬を持っては行かないのですか?」
「う……む」
執務室にて、ダウロスの問いかけに、セルバスは言葉を濁す。
快復させたい者として、娘のサリアーシャはもちろん、真っ先に思い浮かぶ。しかし、この先の薬の確保を考えるのであれば、騎士団の面々を快復させることが一番でもあった。特に、薬の材料を得るための行動が妨害されるとなれば、それに対抗できる戦力が必要となってくる。
むろん、自分にこそ薬が必要だと訴える貴族が居るのは確かだが、その意見はまず通らない。いや、通すわけにはいかない。そして、通さないためにも、サリアーシャには今しばらく我慢してもらう必要があった。
「ままならぬものだな。王であるが故に、娘の快復を先送りにしなければならないとは」
そうは思えど、希望は確かに見えた。幸い、サリアーシャは発症してまだ間がない。これですぐに死ぬようなことはないはずだ。
「騎士団の精鋭部隊を優先的に快復させろ。それで余ることはないだろうが、余った場合は……宮廷薬師に回せ」
「はっ、承知いたしました」
ダウロスはセルバスのかつての教育係であり、かけがえのない側近でもある。この国に宰相という地位はないものの、ダウロスがやることは宰相のそれだった。
「それと、どのような薬であるかについての情報統制はどうなっている?」
「はっ、薬の内容を知るものは、陛下と私、ゴート子爵家次男、ベリル公爵家長男の四名に収まっております」
ゴート子爵家次男は、エイルのことであり、ベリル公爵家長男というのはエイルの直属の上司に当たる人物だ。この薬の件が漏れなかったのは、エイルが真っ先にベリル公爵家長男のアディル・ベリルに相談したことと、そのアディルが聡明な人物であり、この情報の重要性を正しく理解し、エイルに口止めを命じ、セルバスに素早く報告したことがあったからだ。
「うむ、ならば、騎士達に薬を渡した後、その情報が漏れぬよう、箝口令を敷く」
「はっ、承知いたしました」
毒の特効薬である『ドキン薬』は、あまりにも特徴的な薬であり、馴染み深い薬でもある。それ故に、もしも、『ドキン薬』が特効薬だと知れ渡ってしまえば、原料であるパクの花やハチツボ草が乱獲されかねない。いや、もしかしたら、報告にあった妨害を受けて、無用な血が流れる事態もあり得る。それだけは避けねばならないとばかりに、セルバスは情報の規制を命じる。
「それでは、すぐに対処して参ります」
ダウロスは深々と礼をすると、すぐさま立ち去る。早く対処すれば、それだけ早くサリアーシャも助かる。セルバスは、素早く対処してくれるダウロスに感謝しながらも、これからのことについての考えを巡らすのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さてさて、この度は王様の周辺事情でした。
そーろそろ、アルトルムの病もとい、毒はその影響を消してくれることでしょう。
章の終わりが見えてきて、ちょっと安心です。
章が一つ終わっても、話はまだまだ続きますがね。
それでは、また明日、頑張って更新していきますね。
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