我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第四十六話 エルブ山脈攻防(一)

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 どんよりとした曇り空。今にも雨が降りそうなその天候の下で、彼らはひっそりと息を潜めて待機していた。

 彼らの目的はただ一つ。アルトルムからエルブ山脈へと侵入しようとするものの排除だ。

 数日前までは、巨大な岩に擬態した竜が道を塞いでいたものの、なぜか今ではそれがない。つまりは、よりいっそう、ミルテナ帝国の精強なる騎士達が活躍しなければならないということだ。


「交代だ」

「あぁ、分かった」


 任務終了までどのくらいかかるのか、彼らは知らない。しかし、祖国のため、任務をこなすことは絶対だった。

 木々の影に隠れながら、短く会話を交わした男は、視線をエルブ山脈の通りから外し、声をかけてきた男を見ようとして……視界が暗くなる。


「……は?」


 そして、間を置かずして、激痛が走り、その命は、容易く散るのであった。








「バル。見張りはそれで全てです」 

「あぁ、後は、奥にある本拠地か」

「警備、厳しい。それと、あの仮面の魔族、居るかもしれない」


 バルディスは最後の見張りを殺し、剣を納めながら、合流してきたラーミアとディアムを見る。


「ディアムが厳しいというなら、相当だな。それに、あの時の魔族か……居た場合、俺が出るしかないな」

「三人がかり、良いと思う」

「それだけしなければ勝てない相手、ということですか?」

「そう」


 ディアムの提案に眉間にしわを寄せたラーミアは、自分の言葉を肯定されて、目を閉じて考え込む。


「ディアムが言うなら間違いないだろうな。ならば、先にできる限り雑兵を減らしてしまおう」

「そうですね。できるだけ慎重に減らしていきましょう」


 話が纏まると、バルディス達は走り出す。時間は有限。一刻も早く、全てを終わらせなければならない。

 しかし……。


「っ、避けろっ!」


 気配もなく、そいつは戦斧を降り下ろしてきた。


 ズドンッと、大きな地響きが鳴り、その衝撃で強い風が吹き荒れる。バルディスの言葉で即座に散開したラーミアとディアムは無傷ではあったが、身体強化の魔法をかけている様子がないにもかかわらず、とんでもない威力を発揮するその敵に戦慄する。


「あの時の、魔族」


 ポツリとディアムが溢す言葉の通り、そこには、かつてスラム街で戦い、撤退を選ばざるを得ない状況に持ち込んだ、仮面の魔族が居た。それに加え……。


「敵襲ー、敵襲ーっ!」


 武装したミルテナの騎士達が、ゾロゾロとこの場に集まってしまう。足場が悪く、木々が生い茂るせいで見通しも悪いこの場に。


「おい、ディアム……本当に三人がかりで勝てるか?」

「……五分五分?」

「それはそれは、随分ときつい戦いになりそうですわね」


 静かに奇襲をかけるつもりだったが、仮面の魔族によって、その作戦は破綻する。上手くいかないのみならず、絶体絶命のピンチだ。


「あの魔族は俺が相手取る。その隙に、雑兵は任せるぞ」

「「御意っ」」


 そうして、戦いの火蓋は切られた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


更新できないと思ってましたが、何とか更新できました。

さぁ、ここからは戦闘シーン……かっこよく書きたいなぁとは思うものの、果たしてどのくらいかっこよくできることやら。

とりあえず、頑張ってみます。

そして、次章のプロットもそろそろ完成させねばっ!

それでは、また!
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