我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第五十一話 エルブ山脈攻防(六)

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 力任せに吹き飛ばした仮面の魔族は木々にぶつかり、派手な音を立てて倒れる。が、ダメージはさほどなかったのか、すぐに起き上がってきた。


「アァァ、オォォォオッ」


 知性を感じさせない雄叫びとともに、そいつは、我輩……というより、我輩の背後でラーミアに治療を受けているバルディスへと向かっていく。どうやら、我輩は眼中にないようだった。
 そのため、我輩、仮面の魔族の顔面までジャンプして……。


「にゃおーんっ! (猫流奥義、猫パンチっ!)」


 唯一、飼い主が名付けてくれた技名を声高に唱えて右前足を、仮面ごと奴の左頬にめり込ませる。

 バキッと白い仮面が割れる音と同時に、仮面の魔族は横に飛ばされながら倒れる。


「にゃにゃっ(今度こそ、ダメージが入ったのだっ)」


 手応えは確かにあった。恐らく仮面はすでにボロボロで、顔も酷いことになっているであろうそいつに、我輩、警戒を向けながら、追撃のために駆け出す。しかし……。


「ふにゃっ(お、起き上がったのだっ)」


 勢いよく起き上がった仮面の……いや、もはや仮面はボロボロで一部崩れ落ちてしまっている魔族を見て、我輩は一旦飛び退く。体格差が激しいと、あまり無闇に突撃はできないのだ。


「おいおい、嘘だろ?」


 もう一度、『ガリガリプラス』辺りを繰り出すのが良いだろうかと思っていると、ふいに、バルディスが声を上げる。どうしたのだろうかと思いながらも、魔族から視線を外せずにいた我輩は、直後、思いがけない言葉を聞く。


「タロっ、そいつは何者かに操られてるっ」

「にゃっ!? (なんとっ!?)」

「顔にある紋様がその証だっ」


 言われて見れば、確かに、その魔族の色白の顔には赤い十字の紋様が右頬から鼻、左頬にかけて横に並んでいた。恐らく、それがバルディスの言う操られている証なのだろう。だが、そうすると問題が出てくる。操られているとなれば、我輩達を襲うのも、本来のこの魔族の意思ではないのかもしれない。それに……。


 この感じ…………あのレディの気配に似ている?


 あのレディ、サリアーシャ・フォン・アルトルムの気配になぜか似たものを漂わせ始めたその魔族に、我輩、困惑する。顔立ちも種族も全く違うのに、こんなにも似た気配がするというのは珍しい。


「にゃあ? (お前は、何者なのだ?)」

「アァァアッ」


 我輩、魔族に問いかけてみるものの、返ってきたのは悲しげな表情と咆哮のみ。
 再び戦斧を掲げて迫ってくるその様子に、我輩、戦いが避けられないことを思い知る。


「にゃあにゃー(バルディス、我輩、できる限りこの者を無力化できるよう頑張るのだ)」

「っ、頼む、タロっ」


 不当に操られている同胞ならば助けたいだろうと、我輩、精一杯加減をしながら戦うことにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


うぅ、ちょっとだけ体調不良です。

頭痛い……きっと一時的なもので、明日には治ってると思いますけどね。

多分、明日の更新あたりでエルブ山脈攻防は終わるんじゃないかなぁと見込んでます。

結構長かった……。

それでは、また!
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