我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第五十話 エルブ山脈攻防(五)

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 『闇化やみか』という名の魔法を行使した我輩は、なんと、体が闇そのものになったのだ。それは、実体のない軟体と表現すべき状態であり、そのまま移動しようと考えると、動いているつもりはなくともスイスイと、闇から闇へと体(?)が動く。
 建物の影に居たことも相まって、我輩、建物の影の闇を伝うようにして窓へ移り、そのままスルリとバルディス達の居る部屋に侵入できたのだった。どうやら、障害物があっても、闇が続く限りは乗り越えられるらしかった。しかし……。


 う、む? 気のせいか?


 バルディスがちょうど話をしようと言い出したところで、我輩、ディアムと目が合ったような気がした。


「? ディアム、どうしましたか?」


 ただ、その視線はラーミアに話しかけられることで逸らされる。


「……タロ、引き入れなくて、良かった?」

「そうですわね。タロは勇者で少し強いかもしれませんが、ただの猫です。このまま私達に関われば、良いことなんて一つもありません」


 やはり気のせい。そう思っていると、ディアムは我輩が聞きたかったことをピンポイントで聞いてくれ、またしてもこちらに視線を寄越す。


 うむ、これは、確実に気づかれているのだ。


 気づかれた理由までは分からないものの、どうやら、ディアムは我輩のことを黙認してくれるらしかった。そこで分かったのは、やはり、バルディスは……いや、バルディスだけでなく、ラーミアも、我輩のためを思って我輩を追い出したのだということと、集まった情報、今後の方針だった。

 だから、我輩、バルディス達が宿を後にするのを、こっそり尾行した。
 『闇化やみか』の状態のまま移動するのは、影を見つけなければならないために少しだけ難しかったが、それも、街に居る間だけだった。エルブ山脈は、木々が生い茂っていて、影に飛び放題だったのだ。

 誤算だったのは、バルディスが腕を切られる瞬間、我輩が、すぐに『闇化やみか』を解除出来なかったことくらいだろうか。どうやら、解除と告げなければ、我輩、ただたゆたうのみの闇でしかいられなかったのだ。
 そのせいで、バルディスは本当にピンチに陥ったものの、どうにか、そのピンチには間に合う。


「ふしゃーっ(覚悟っ)」


 毛を逆立てた我輩は、仮面の魔族へと目にも止まらぬスピードで肉薄する。そして……。


「にゃおーんっ!! (猫流奥義、ガリガリプラスッ!!)」


 それが、我輩の登場だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よ、よしっ、回想終わりっ!

次からは、次からは、ようやくまともな戦闘シーンに戻ります。

そして、きりの良い十話ごとくらいに『感想がほしいっ』とここに書いても、きっとバチは当たりません……よね?

本当に誰かが書いてくださったら大喜びですし、モチベーションもアップしますし、踊り出し……たりは、多分、きっと、しない、とは思いますが……ま、まぁ、とにかく喜びますので良かったら感想をよろしくお願いします。

それでは、また!
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