我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第五十九話 人化

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「タロっ!?」


 タロが何かぶつくさ言っていたと思ったら、いきなり光に包まれて、俺は少し焦る。この猫は、時々とんでもないことをやらかすので、今度は何をやらかしたのかと冷たい汗が頬を伝う。

 そして、光が収まってみると、そこには…………小柄な紳士服を身に纏った、黒目黒髪の幼い少年が居た。その少年は、十歳くらいの年頃、色白な肌で、どこか妖艶な雰囲気を持ちながら、パチパチと瞬きコテンと首をかしげる。


「うむ? 何がどうなったのだ?」


 キョロキョロと辺りを見渡し、下を見て、俺達を見て、そのあどけない顔に驚愕を浮かべる。


「なんと、我輩、成長したのだっ!」

「違うだろっ!」

「なぬっ!?」


 あまりにも突飛な答えに、俺はついつい突っ込む。そして、それに対して、少年……十中八九タロであろうそいつは、またしても驚いた表情になる。


「はっ、そうか、話せているということは、きっと飼い主が話していた猫又とやらに進化したのだっ」

「いや、猫は猫又に進化しても話せないからなっ」


 確かに、長く生きた猫は稀に猫又という異形へと変わることがある。ただ、だからと言って猫又が人間の言葉をしゃべることはないし、人間の姿をとることもない。


「……バル、それは、タロ、ですの?」

「にゃー? (し、師匠?)」


 タロの馬鹿な話に付き合っていると、ようやく驚愕による硬直が解けたらしい。


「む、そうなのだ。我輩、紳士のタロなのだ」

「ラーミア、『水鏡』を出してやってくれ。そうしたらきっと、タロも現状が分かるだろ」

「わ、分かりましたわ」


 そう頼むと、ラーミアはすぐに水魔法である『水鏡』をタロの目の前に発動させる。すると……。


「……か」

「「「か?」」」

「飼い主ーっ!!」


 感極まった様子で水鏡に抱きつこうとするタロ。ラーミアはそれを見て、慌てて水鏡を消す。


「むっ、か、飼い主はどこなのだっ! どこへ行ったのだーっ」

「落ち着け、タロ。多分、その飼い主の姿をお前がとってるんだろ」

「む?」


 よく理解できていない、という表情をするタロに、俺は鏡がどういったものかの説明が必要だと判断する。確か、動物は鏡に映った自分の姿を、自分だと認識できなかったはずだ。そうして、鏡というものの説明をしてやると、タロは悲しげに納得する。


「では、飼い主は居ないのだな」

「あぁ」


 ズーンと落ち込むタロは、もう体の使い方に慣れている様子で、何やらしゃがみこみ、指でグルグルと丸らしきものを地面に書き続ける。


「それより、タロ。何が、したかった?」


 珍しく動揺が表情に出ているディアムが、そうタロに問いかけると、タロはハッとした様子で立ち上がる。


「そうだったのだ。我輩、レディに物申したかったのだっ」


 そう言うと、タロはサリアーシャ姫へと向き合う。そして、そのサリアーシャ姫はといえば……なぜか、キラキラとした目でタロを見ていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


おかしい……あと一話くらいでこの章は終わりだろうと思っていたら、もうちょっと続きそうなんです。

目測が、目測がぁぁあっ。

きっと、後二話?

多くても三話で終わる、はず?

……が、頑張ります。

それでは、また!
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