我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第一章 アルトルム王国の病

第五十八話 父娘

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 父娘の感動の抱擁を前にしながら、我輩、魔法を解いて姿を現したバルディス達の元へと駆け寄る。

 セルバスの登場で作戦が変更になり、しかも、話の内容からバルディス達が魔族であると知られてしまった時はどうしようかと思ったものの、ちゃんと新たに採取したパクの花を用いた薬を届けることも、レディを守ることも出来て、本当に安心したのだ。

 ただ……。


「にゃ……(飼い主……)」


 こんな光景を見ていると、我輩、飼い主のことがとても恋しくなってしまう。自立した一流の紳士になると決めていたのに、寂しくなってしまう。


「にゃあ(いや、今の我輩は、紳士なのだ)」


 寂しい思いを振り払って、我輩、気合いを入れ直す。


「にゃーにゃ(レディが無事で良かったのだ)」


 我輩、抱擁が解けたタイミングで、レディに声をかける。


「げほっ、あれ? この猫、この前の……? ごほっげほげほっ」

「あぁ、サリアっ、すまない。先に薬を飲もう。特効薬を持ってきたんだ。これで、治る」


 酷く咳き込み始めたレディに、セルバスは慌てて我輩達が持ってきた薬を手に取る。最初は怪しいと言われ、他の者に毒味をということになったものの、そのおかげでドキン薬であることは証明された。
 ちなみに、今回は、我輩とバルディスではなく、ラーミアが作ってくれたため、宿屋が悲惨なことになったりはしていない。

 ベッドに座らされて、レディは特効薬と言われて渡されたそれを、目を丸くして見つめ、セルバスと薬を交互に見る。


「本当はもっと早くに渡したかったのだがな。多くの薬を調達するためには騎士の快復を優先させねばならず、サリアには辛い思いをさせた。すまない」

「げほっ、いいえ、父上。父上の判断は正しいです。ありがとうございます」


 特効薬がすぐに自分の手に渡らなかった理由を思いがけず知ることになったレディは、微笑みを浮かべ、心から感謝を述べているように見えた。

 ……しかし、その事実に、我輩、ちょっと納得できなかった。


「ふしゃーっ。ふしゃーっ(なぜ、納得するのだっ。こういう時は、子供は我が儘になって、思いの丈をぶつけるべきなのだっ)」

「まぁまぁ、納得してるなら良いじゃないか」

「ふーっ(バルディスっ、ここはガツンと言うべきなのだっ)」


 我輩の言葉を唯一通訳できるバルディスは、我輩をなだめるばかりで我輩の言葉を伝えてはくれない。だから、我輩、サポートシステムに尋ねる。


「にゃーっ。にゃあ? (意思疏通の、話ができる手段がほしいのだっ。何か、ないであろうか?)」

「タロ?」

《『サポートシステム』起動します。これより、最適方法を選出します。……最適方法、魔法の使用を推奨します。特殊魔法による『人化』が適切です。サポートは必要ですか?

はい/いいえ 》

「にゃ(『はい』なのだ)」


 そうして、我輩は光に包まれた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ふっふっふっ、楽しみにとっておいたタロの人化。

最後じゃないと書けないように設定を組んでいましたので、やっと書けると思うとちょっと楽しいです。

明日の更新で、どんな姿になるのかを書きますのでお楽しみにっ。

それでは、また!
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