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第二章 反撃のサナフ教国
第九十五話 持ち帰りたいもの
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怪我人として砂のドームの中に居た者達の確認をして、その面々をリリナが(文字通り)叩き起こし、さぁ戻ろうとなったところで、我輩、慌ててバルディスに声をかける。
「に、にゃあっ。にゃーっ(ま、待ってほしいのだっ。まだ、ささみを回収していないのだっ)」
「は? ささみ?」
「にゃにゃー。にゃー(討伐したのだ。大きな鶏なのだ)」
そう、大好物の鶏。決して置いていくわけにはいかない。
「鶏? そんなもの、見てないが……どこにあるんだ? こいつらは歩けるみたいだから、分担して持って行かせられそうだが」
そう言って、バルディスはリリナを筆頭とした男たちにチラリと視線を向ける。ただ、残念なことに、彼らには我輩の言葉が通じていないようで、首をかしげるばかりだった。
「バルディス、その使い魔は何て言ってるの?」
痺れを切らして問いかけてきたリリナ。しかし、我輩、引っ掛かる言葉があった。
「にゃ? (『つかいま』?)」
良く分からない言葉に、我輩、バルディスに問いかけるものの、バルディスはリリナ達への説明を先にすることにしたようだった。
「あぁ、タロが仕留めた獲物が居るから、それを運んでくれと言われたんだ」
「つまり食料!?」
「あ、あぁ」
「分かったわっ。さぁっ、あんた達っ、できる限り運ぶわよっ」
「「「はいっ」」」
なぜかやる気に満ちたその様子に、我輩、ついついたじろぐ。何がここまで彼らを本気にさせるのか分からないが、今の彼らは少し怖かった。
「それでっ、その獲物はどこに!?」
「ちょっと待ってろ。タロ。獲物はどこだ?」
「にゃあ。にゃ(この近くなのだ。幻術で隠しているのだ)」
「そうか、案内してくれるか?」
「にゃっ(もちろんなのだっ)」
案内しなければ、我輩もささみにありつけない。それだけは、絶対に嫌だったのだ。
ドームを出て、タッタッと走ること数秒。我輩、すぐに幻術を解く。
「にゃー(これなのだ)」
暗くてあまり判別はできないものの、それが鳥であることだけは分かるはずだ。
「これは……」
「まさか、キングコッコー?」
絶句するバルディスと、何やらモンスター名らしきものを告げるリリナ。
ふむ、なるほど。これは『キングコッコー』というのだな? 好物の名前は覚えておかなければ。
「でも、何でこんな魔物がここに? 大体平原に生息する魔物のはずよ?」
「にゃあにゃ? にゃーにゃあ(この鶏、キングコッコーと言ったか? これは、随分と砂遊びが好きな魔物だったのだ)」
「砂遊び?」
「にゃ。にゃーにゃーにゃあ(そうなのだ。砂で視界を遮ってきたり、砂を飛ばしてきたり、砂に突っ込もうとしてきたりしたのだ)」
「……多分、亜種だろうな」
「亜種!?」
我輩の説明の後、何かに納得した様子のバルディスが『あしゅ』という言葉を告げると、途端にリリナの目の色が変わる。
「亜種はとても美味だと聞くわ。あぁ、久々の肉が亜種の肉だなんて。それも、こんなに大量……なんて幸運! 野郎共っ! 持てる限りを持っていくぞ!」
リリナは『野郎共』のところから声をバリトンに切り替えながら、男達に命じる。
「……タロ。どうやら、レジスタンスの食料事情は深刻らしい。俺達も、持てるだけ持っていくぞ」
「にゃあ(でも我輩、人間ほど多く持てないのだ)」
「ん? あぁ、そうか、知らないのか。多分、タロなら『収納術』くらい使えるだろう」
「にゃあ? (『収納術』?)」
《 『サポートシステム』起動します。これより、能力説明を行います。『収納術』とは、生きたもの以外を異空間に納めることができる無属性魔法です。容量は本人の魔力量に依存しますが、簡単な魔法で、子供でも使用できます。『収納術』のサポートは必要ですか?
はい/いいえ 》
「にゃにゃ。にゃーっ(どうやら、我輩も使えるみたいなのだ。手伝うのだっ)」
「分かった。おい、俺も切り分けるから、それを納めていってくれ!」
そう言うなり、バルディスは他の男達と一緒になって、スイスイと大きなナイフで切り分けていく。そして、それをもらっては収納することを繰り返していると、なんと、あんなに大きかったキングコッコーは、全て収納されたのだった。……ほとんどが、我輩の異空間に。
『この猫、随分と高位な使い魔なのね』とリリナが言っていたのが気になったが、我輩、ささみが食べられるという事実に頭がいっぱいだった。
「それじゃあ、撤収よ」
そうして、我輩達は、レジスタンス達の居場所へと戻るのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
食料はちゃんと持ち帰らねばっ!
と、いうわけで、今回は食料調達編?
タイトルを『持ち帰らねばならぬのだっ』にしようかなぁと思いはしたものの、ちょっと今までのタイトルの付け方と異なることも分かっていたので、妥協しました。
次回は、ちょっとリリナ視点を入れようかなぁ、どうしようかなぁと悩んでいるところです。
それでは、また!
「に、にゃあっ。にゃーっ(ま、待ってほしいのだっ。まだ、ささみを回収していないのだっ)」
「は? ささみ?」
「にゃにゃー。にゃー(討伐したのだ。大きな鶏なのだ)」
そう、大好物の鶏。決して置いていくわけにはいかない。
「鶏? そんなもの、見てないが……どこにあるんだ? こいつらは歩けるみたいだから、分担して持って行かせられそうだが」
そう言って、バルディスはリリナを筆頭とした男たちにチラリと視線を向ける。ただ、残念なことに、彼らには我輩の言葉が通じていないようで、首をかしげるばかりだった。
「バルディス、その使い魔は何て言ってるの?」
痺れを切らして問いかけてきたリリナ。しかし、我輩、引っ掛かる言葉があった。
「にゃ? (『つかいま』?)」
良く分からない言葉に、我輩、バルディスに問いかけるものの、バルディスはリリナ達への説明を先にすることにしたようだった。
「あぁ、タロが仕留めた獲物が居るから、それを運んでくれと言われたんだ」
「つまり食料!?」
「あ、あぁ」
「分かったわっ。さぁっ、あんた達っ、できる限り運ぶわよっ」
「「「はいっ」」」
なぜかやる気に満ちたその様子に、我輩、ついついたじろぐ。何がここまで彼らを本気にさせるのか分からないが、今の彼らは少し怖かった。
「それでっ、その獲物はどこに!?」
「ちょっと待ってろ。タロ。獲物はどこだ?」
「にゃあ。にゃ(この近くなのだ。幻術で隠しているのだ)」
「そうか、案内してくれるか?」
「にゃっ(もちろんなのだっ)」
案内しなければ、我輩もささみにありつけない。それだけは、絶対に嫌だったのだ。
ドームを出て、タッタッと走ること数秒。我輩、すぐに幻術を解く。
「にゃー(これなのだ)」
暗くてあまり判別はできないものの、それが鳥であることだけは分かるはずだ。
「これは……」
「まさか、キングコッコー?」
絶句するバルディスと、何やらモンスター名らしきものを告げるリリナ。
ふむ、なるほど。これは『キングコッコー』というのだな? 好物の名前は覚えておかなければ。
「でも、何でこんな魔物がここに? 大体平原に生息する魔物のはずよ?」
「にゃあにゃ? にゃーにゃあ(この鶏、キングコッコーと言ったか? これは、随分と砂遊びが好きな魔物だったのだ)」
「砂遊び?」
「にゃ。にゃーにゃーにゃあ(そうなのだ。砂で視界を遮ってきたり、砂を飛ばしてきたり、砂に突っ込もうとしてきたりしたのだ)」
「……多分、亜種だろうな」
「亜種!?」
我輩の説明の後、何かに納得した様子のバルディスが『あしゅ』という言葉を告げると、途端にリリナの目の色が変わる。
「亜種はとても美味だと聞くわ。あぁ、久々の肉が亜種の肉だなんて。それも、こんなに大量……なんて幸運! 野郎共っ! 持てる限りを持っていくぞ!」
リリナは『野郎共』のところから声をバリトンに切り替えながら、男達に命じる。
「……タロ。どうやら、レジスタンスの食料事情は深刻らしい。俺達も、持てるだけ持っていくぞ」
「にゃあ(でも我輩、人間ほど多く持てないのだ)」
「ん? あぁ、そうか、知らないのか。多分、タロなら『収納術』くらい使えるだろう」
「にゃあ? (『収納術』?)」
《 『サポートシステム』起動します。これより、能力説明を行います。『収納術』とは、生きたもの以外を異空間に納めることができる無属性魔法です。容量は本人の魔力量に依存しますが、簡単な魔法で、子供でも使用できます。『収納術』のサポートは必要ですか?
はい/いいえ 》
「にゃにゃ。にゃーっ(どうやら、我輩も使えるみたいなのだ。手伝うのだっ)」
「分かった。おい、俺も切り分けるから、それを納めていってくれ!」
そう言うなり、バルディスは他の男達と一緒になって、スイスイと大きなナイフで切り分けていく。そして、それをもらっては収納することを繰り返していると、なんと、あんなに大きかったキングコッコーは、全て収納されたのだった。……ほとんどが、我輩の異空間に。
『この猫、随分と高位な使い魔なのね』とリリナが言っていたのが気になったが、我輩、ささみが食べられるという事実に頭がいっぱいだった。
「それじゃあ、撤収よ」
そうして、我輩達は、レジスタンス達の居場所へと戻るのだった。
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食料はちゃんと持ち帰らねばっ!
と、いうわけで、今回は食料調達編?
タイトルを『持ち帰らねばならぬのだっ』にしようかなぁと思いはしたものの、ちょっと今までのタイトルの付け方と異なることも分かっていたので、妥協しました。
次回は、ちょっとリリナ視点を入れようかなぁ、どうしようかなぁと悩んでいるところです。
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