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第二章 反撃のサナフ教国
第九十六話 それぞれの思考(一)
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バルディスと名乗った男とその仲間は、恐ろしく強く五十人近く居た騎士達をあっという間に伸してしまった。その後も私達、レジスタンスの護衛を務めてくれるし、レジスタンスへの加入を勧めてみるとすぐに入ってくれるようなことを言ってくれるし……もう、惚れそうっ。
ノルじいこと、ノルディにバルディス達のことを聞いてみると、『いきなりあそこにやってきた客、ということくらいしか知らないの。ただ、一緒に居た猫が手強くて大変だったとしか……』との答え。猫のことなんてどうでも良いから、バルディスの情報をと求めるも、ノルじいは全く知らないそうだった。ただ、しきりに猫に気をつけろというようなことを言われて、時間を潰すだけだった。
今のところ、バルディス達に怪しいところは見られない。それどころか、他にも仲間を助けてくれていたらしく、夜にその仲間を迎えに行こうということになった。さすがに、レジスタンスの旗頭であるロッダは連れて行けないので、私が行く。
騎士達が探っている場所の情報までもたらしてくれたバルディス達を、私はあまり疑いたくなくて、ロッダのことも話してしまった。後で、ノルじいにしこたま絞られたけど……。
そうして、私はバルディスとレジスタンスの男二人を連れて仲間が居るという場所に向かった。
砂漠の中だというのは意外だったわ。
そう思いながらも、国内に安全な場所が乏しいことから、砂漠もありだと思えた。そして、私は出会ったのだ。バルディスの仲間だという……猫と。
「使い魔とはいえ、まさか猫だとは思わなかったわ」
私は、キングコッコーを『収納術』で納めながらバルディスに声をかける。
「すまない。先に言うと信用されない気がしたからな」
そう言って、バルディスはさっさと剥ぎ取り作業に戻ってしまう。
チラリと視界の端に映るその猫は、丸く太っていて、どこか美味しそうにも見える体型だった。しかし、あのキングコッコーの亜種を倒すだけの実力があるのだとすれば、この猫は、確実に何か高位の魔物が擬態した姿であろう。バルディスが言葉を濁したから正確な種族は分からないものの、バルディスと会話をしているような様子からして、言葉を解する竜種辺りだったりするのかもしれない。
使い魔は、知性ある魔物を何らかの形で屈服させ、互いの意思で契約を結ぶことで成り立つ。だから、きっと、バルディスの強さはこの猫以上なのだろうとは思われた。
「私、とんでもないものを仲間に引き入れたのかもしれないわね」
そう呟きながらも、さすがにもう持ちきれないと思い、恨めしげにキングコッコーの肉を見ていると、バルディスは残りの肉の四分の一を風で浮かせて猫に持っていく。
猫に食べさせるにしては多くない?
そう思っていた私は、次の瞬間には目を見張ることとなる。
「タロ、いけるか?」
「にゃっ」
そんな受け答えの後だった。キングコッコーの残りの肉の四分の一が消えたのは。
「えっ? えっ?」
「ほら、タロ」
「にゃっ」
そう言ってバルディスが渡すと、またしても肉が消える。
「もう少し」
「にゃっ」
同じ作業によって、肉が消えていく。
「これで終わりだ」
「にゃあっ」
そして、とうとう、キングコッコーの肉は消えてしまった。それも、恐らくは猫が持つ異空間の中に。
「随分と高位な使い魔なのね」
私は呆然とそう言うことしかできなかった。連れてきた男達や、怪我人だった男どもも呆然とするのみで動きがない。
「勝手とは思ったが、タロにある程度の肉を回収させた。戻った後にしっかり出すことにするから、それで良いか」
「え、えぇ」
美味しい肉が増えることは大歓迎だ。そうして、私は役目を思い出して指示を出す。
「それじゃあ、撤収よ」
私は、今更ながらにノルじいの『猫が手強くて』という発言を思い出し、嘆息する。
どうやら、私は本当に、とんでもないものを引き入れたみたいね。
私は、これからのことを思い、少しだけ、ウキウキするのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ちょっとだけ入れるつもりが、がっつりリリナ視点になっちゃいました。
まぁ、これはこれで良いのかな?
次回は……タロ視点に戻れると良いなぁというところ。
誰視点が入るかは今回は言いませんけどね。
それでは、また!
ノルじいこと、ノルディにバルディス達のことを聞いてみると、『いきなりあそこにやってきた客、ということくらいしか知らないの。ただ、一緒に居た猫が手強くて大変だったとしか……』との答え。猫のことなんてどうでも良いから、バルディスの情報をと求めるも、ノルじいは全く知らないそうだった。ただ、しきりに猫に気をつけろというようなことを言われて、時間を潰すだけだった。
今のところ、バルディス達に怪しいところは見られない。それどころか、他にも仲間を助けてくれていたらしく、夜にその仲間を迎えに行こうということになった。さすがに、レジスタンスの旗頭であるロッダは連れて行けないので、私が行く。
騎士達が探っている場所の情報までもたらしてくれたバルディス達を、私はあまり疑いたくなくて、ロッダのことも話してしまった。後で、ノルじいにしこたま絞られたけど……。
そうして、私はバルディスとレジスタンスの男二人を連れて仲間が居るという場所に向かった。
砂漠の中だというのは意外だったわ。
そう思いながらも、国内に安全な場所が乏しいことから、砂漠もありだと思えた。そして、私は出会ったのだ。バルディスの仲間だという……猫と。
「使い魔とはいえ、まさか猫だとは思わなかったわ」
私は、キングコッコーを『収納術』で納めながらバルディスに声をかける。
「すまない。先に言うと信用されない気がしたからな」
そう言って、バルディスはさっさと剥ぎ取り作業に戻ってしまう。
チラリと視界の端に映るその猫は、丸く太っていて、どこか美味しそうにも見える体型だった。しかし、あのキングコッコーの亜種を倒すだけの実力があるのだとすれば、この猫は、確実に何か高位の魔物が擬態した姿であろう。バルディスが言葉を濁したから正確な種族は分からないものの、バルディスと会話をしているような様子からして、言葉を解する竜種辺りだったりするのかもしれない。
使い魔は、知性ある魔物を何らかの形で屈服させ、互いの意思で契約を結ぶことで成り立つ。だから、きっと、バルディスの強さはこの猫以上なのだろうとは思われた。
「私、とんでもないものを仲間に引き入れたのかもしれないわね」
そう呟きながらも、さすがにもう持ちきれないと思い、恨めしげにキングコッコーの肉を見ていると、バルディスは残りの肉の四分の一を風で浮かせて猫に持っていく。
猫に食べさせるにしては多くない?
そう思っていた私は、次の瞬間には目を見張ることとなる。
「タロ、いけるか?」
「にゃっ」
そんな受け答えの後だった。キングコッコーの残りの肉の四分の一が消えたのは。
「えっ? えっ?」
「ほら、タロ」
「にゃっ」
そう言ってバルディスが渡すと、またしても肉が消える。
「もう少し」
「にゃっ」
同じ作業によって、肉が消えていく。
「これで終わりだ」
「にゃあっ」
そして、とうとう、キングコッコーの肉は消えてしまった。それも、恐らくは猫が持つ異空間の中に。
「随分と高位な使い魔なのね」
私は呆然とそう言うことしかできなかった。連れてきた男達や、怪我人だった男どもも呆然とするのみで動きがない。
「勝手とは思ったが、タロにある程度の肉を回収させた。戻った後にしっかり出すことにするから、それで良いか」
「え、えぇ」
美味しい肉が増えることは大歓迎だ。そうして、私は役目を思い出して指示を出す。
「それじゃあ、撤収よ」
私は、今更ながらにノルじいの『猫が手強くて』という発言を思い出し、嘆息する。
どうやら、私は本当に、とんでもないものを引き入れたみたいね。
私は、これからのことを思い、少しだけ、ウキウキするのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ちょっとだけ入れるつもりが、がっつりリリナ視点になっちゃいました。
まぁ、これはこれで良いのかな?
次回は……タロ視点に戻れると良いなぁというところ。
誰視点が入るかは今回は言いませんけどね。
それでは、また!
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