我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

文字の大きさ
129 / 574
第二章 反撃のサナフ教国

第百二十八話 ロッダとリリナ

しおりを挟む
 あれから、色々なことがあった。サナフ教国がミルテナ帝国に攻め滅ぼされ、その半年後にマリー姉を目の前で失った。ハーグやジルク、ノルディと出会い、リリナは僕を心配して一緒に居てくれた。
 今や、僕にとって大切な存在はリリナだけだ。他は知らない。誰がマリー姉を殺した首謀者か分からない以上、気を許す気はない。だから、どうか、どうか、リリナには無事でいてほしい。

 その願いが届いたのだろうか。そう思えるようなタイミングで、ドームの外からバルディスの声がかかる。


「誰か、起きてるか?」


 その声に、側に居たノルディがいち早く反応する。


「起きてはいるが……どうしたのかの?」


 あの火事騒ぎ以降、特に大きな騒ぎは起きていないはずだ。それにもかかわらず声をかけてくるとなれば、何か情報が入ったか、リリナの身に何かあったかくらいではないだろうか。


「あぁ、リリナのことでな」

「っ、リリナに、リリナに何かあったのかっ!?」


 暗闇の中、バルディスらしき影が入ってきて、僕は声を荒げる。リリナに何かあれば、僕はどうして良いか分からない。


「おいおい、ロッダは早く寝ないと背が伸びねぇぞ?」


 取り乱した僕を抑えたのは、そんな、男の方のリリナの声だった。


「リリナ……?」

「あぁ、心配かけたみてぇだな。悪かった」


 バルディスに続いて入ってきたのは、リリナだ。大切な、友達リリナだ。


「おぉっ、無事であったかっ!」

「本当に……」


 リリナが無事だった。バーの近くに居るはずなのに、どうしてここに居るのかは知らないが、無事が確認できたのだから、そんな些細なことはどうでも良い。今は、ただただ、リリナの無事が嬉しかった。


「俺はこの通り、怪我もないからな。って、この暗闇じゃあ分からねぇか」


 そうリリナが呟くと、直後に光の球体がドームの中にいくつか浮かび上がる。


「タロか。ありがとうな」

「にゃあ」


 バルディスがお礼を言ったことで、それがタロの仕業だと分かる。そして、目の前に現れたリリナは、確かに、怪我などどこにも見当たらなかった。


「よくぞ無事だったのっ」

「おう、ノルじいも、ロッダの側に居てくれてありがとうな」

「ほっほっ、ロッダ様のお側に仕えるのは当然のことだの」


 ノルディとリリナが何か話しているが、僕は、それを無視してリリナへと抱きつくようにして飛び込む。


「おっと……ロッダ?」

「うるさい。さっさと帰ってこないのが悪い」


 少し声が震えるのを自覚しながら、僕は離さないとばかりにリリナをギュッと抱き締める。もう、大切な人を失うのはこりごりだ。


「あぁ、悪かった」


 苦笑混じりに告げられて、僕はさらに抱き締める腕に力を込める。
 レジスタンスに居る以上、危険は常につきまとう。僕はリリナを危険にさらしたくないのに、僕が居るだけでそうなってしまう。それをどうすべきかという答えは、未だに出ないが、今回の件は、僕を焦らせるのに充分な効果を持っていた。


「あー、感動の再会を邪魔して悪いんだが、少し話がある。良いか?」


 そんなバルディスの声がして初めて、僕は抱擁を解き、バルディス達と向き合うのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ロッダがリリナを大切に思う気持ちはとっても強いです。

依存していると言われかねないほどに。

それがこれからどう転ぶか、頑張って書いていこうと思います。

それでは、また!
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...