我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百三十三話 ジルクの真実

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 ジルクに連れられて小走りになる俺は、とにかく今は静観の構えでいようと考える。もしも、ジルクが何かしようとすれば、それを止めるだけの力量はある。

 そうして、ノルディの姿が見えて、そろそろ声をかけようかという時に、ふいに、背後に気配が生じた。


「っ、ディアムか」

「は? いつの間に?」


 振り返ることなく正体を当てると、前を走っていたジルクが立ち止まり、勢い良く振り向いて、目を見開く。
 音もなく消えたり現れたりするディアムは、正直、心臓に悪いと思う。しかし、これがディアムの隠密に身を入れ続けた弊害であることを知っている俺は、言及などしない。毎度毎度ヒヤリとはさせられるが、ディアム自身は優秀な隠密部隊隊長なのだから。


「調査結果、報告」

「ん? ちょっと待て、ディアム。それは今必要なのか?」


 ジルクの調査をさせたのに、ジルクの目の前でそれを報告しようとするディアムに、俺は咄嗟に疑問を投げ掛ける。ディアムが、空気を読めないなどということはない。それはつまり、今、必要な報告である可能性が高いのだ。


「是。防音結界、展開許可を。ジルク、巻き込む」

「……分かった」

「へ? ちょっ、バルディスさんっ!?」


 わけが分からないといった様子のジルクを容赦なく捕まえて、ディアムが張る防音結界の中に引き込む。


「報告、ジルク、二重スパイ。裏切り者、別に居る可能性、有り」

「あー、バレちゃいましたかぁ」


 ディアムの言葉に、あっけらかんとしたジルク。どうやら、ディアムの言葉に間違いはないらしい。


「……誰の指示で動いてたんだ?」

「ん? ……そりゃあ、言えないですねぇ」


 命令を下した者が誰かを問えば、ジルクはその目を怪しく光らせて微笑みを浮かべる。


 これは、吐かせるのに苦労しそうだな……。


 ただ、そう思っていたのは、ほんの数秒のことだった。


「ノルディの指示と思われる」

「って、ちょおっ!? そこはぼかすところでしょおっ! このことがバレたら、僕がノルディさんにどやされるんですよっ!」


 盛大に暴露したジルクを見て、俺は、ふと思うところがあって、ディアムの方へと視線を向ける。


「鎌かけ、成功」

「えっ? ちょっ、まさか……僕、墓穴掘りました?」

「……そのようだな」


 残酷な事実を教えてやれば、ジルクは頭を抱えて座り込む。


「うわー、うわー、どやされるー。どうしよう。僕、今日が命日になったりしない?」


 涙目で嘆くジルクを見ていると、さすがに可哀想に思えてきたが、今回ばかりは仕方ない。簡単に引っかかったジルクが悪い。


「まぁ、なんだ……ドンマイ?」

「うぅぅ……と、とにかく、足の痺れで立てなくなるなんてことがないように頑張ります。……それより、早く、ノルディさんに伝えないといけないことがあるんです。僕がどやされる時間を短縮するためにも、一緒に来てください。お願いします」


 そう、ジルクは土下座せんばかりの勢いで俺達に頼み込む。しかし……。


「ここに攻め込む、ミルテナの騎士の戦力、戦法、および、対抗のための罠の張り方、ノルディに、報告、提案ずみ」

「……えっ?」


 唯一、説教を軽減させる手段が、ディアムによって奪われた後だと知ったジルクは、その場で燃え尽きたように白くなるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


と、いうわけで、ジルクは敵ではありませんでした。

それどころか、とってもからかいやすゲフンゲフン可哀想なキャラクターとなり果ててます。

いやぁ、ジルクで遊ぶのは楽しかったですよ。

それでは、また!
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