我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百三十四話 砂漠の中の作戦(一)

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 しん、と静まり返った砂漠。少しずつ暗闇が迫り、寒さが肌を刺すようになる頃、我輩は、ジルクに抱き上げられてドームの外へと出る。


「にゃあ(うむ、良い夜になりそうなのだ)」


 通じないと分かっていながらも、我輩、ついつい呟いてしまう。それに対して、ジルクは困ったような表情を返す。いや、それ以前に、どこか思い詰めた様子でもあった。


「すみませんね。猫さん。僕も死にたくないもので」

「にゃっ(大丈夫なのだっ)」


 暗い顔のジルクを見て、我輩、元気づけるべく鳴き声をあげる。ついでに、うるうるとした目で見つめれば、きっと悩み事も吹き飛ぶのだ。
 我輩の体を片手に抱え直して、頭を撫でてくれるジルクに、我輩、にゃんごろにゃんごろと甘える。そして、はたととんでもない事実に気づく。


「にゃ……? にゃあっ!? (我輩、片手で抱えられてる……? 痩せたのだっ!?)」

「ん? 何を鳴いてるのかは知らないですが……そろそろですよ」


 嬉しい事実にホクホクになりながら、我輩、ジルクの言葉に従って準備する。


「にゃ。にゃあ(分かったのだ。合図とともに、走るのだ)」


 我輩に指示されたのは、ジルクの合図で、真っ直ぐ前に走り出すことと、その際、とある魔法を使うこと。それ以上のことは、何も告げられていない。ただ、そうすればとても良いことがあるらしい。もしかしたら、何か美味しいものがもらえるのかもしれないと、今から楽しみにしているのだ。

 砂漠にかけた幻術の結界から抜け出し、しばらく歩いたところで、何やら前方でごそりと動くものが視界に入る。


「にゃ? (うむ?)」


 さすがに暗くなってきているせいで、それが何かまでは判断できない。しかし、ジルクにはそれだけの情報で充分だったようだ。
 トントンと体を指で叩かれ、我輩、すぐさま足に力を込め、ジルクの腕から抜け出す。


「っと、そっちに行きましたよーっ」


 そんなジルクの声がしたものの、我輩、走る。一直線に、バルディスの言葉を信じて、一つの魔法を使いながら走る。


「総員準備! 竜を倒すぞっ」

「「「「はっ」」」」


 そんな声が聞こえても、そう言った人間達が我輩の目の前に現れても、我輩、走るスピードを落とすことはない。
 きっと、人間達は何らかの魔法で見えない状態になっていただけなのだろう。突如として現れたように見えた人間達は、いずれも我輩の方を見て、臨戦態勢を整えていた。そんな中に、我輩は突っ込む。


「……はっ?」


 そして、なぜか間抜けな顔を晒した司令官らしき男の股下を潜り抜け、我輩はまだ走るのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さて、何が起こっているのでしょうね。

完全スルーなタロと、なぜか迎え撃たない敵達。

種明かしは明日の更新でっ。

それでは、また!
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