我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百四十一話 入国門前にて(一)

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 夜闇に紛れて警備を突破し、馬を奪って私達は駆けた。セイクリア教国へ助力を願うために、リリナとともに先を急いだ。
 追っ手は全て蹴散らし、何の障害もなく、セイクリア教国の前に辿り着いた私達の間には、少しだけ弛緩した空気さえ流れていた。思えば、それがいけなかったのかもしれない。


「ようやく着きましたわね」

「あぁ、道中は助かった。ありがとうな」

「いえ、お互い様ですよ」


 笑顔さえ浮かべて、私はリリナと話す。ここまで、かなり飛ばしてきて五日。疲れは残るものの、これで任務を達成できるとあれば安心もできる。


 帰ったら、たっぷり給料をふんだくりましょうか。


 転移に巻き込まれ、すぐに帰ることもできない状況。厄介事にばかり首を突っ込むバルディスと、厄介事の塊であるタロ。それらに付き合い続けているのだから、相応の報酬をもらわなければ気がすまない。


「さて、それでは、正々堂々入国するか、夜にでも侵入するかですが……どうしましょうか」

「ん? 普通に入国すれば良いんじゃねぇのか?」


 不思議そうに私を見てくるリリナに、私はリリナがこの国のことを良く知らないのではないかと気づく。


「リリナ。セイクリア教国は、亜人差別が顕著な国なんですよ」

「そりゃあ……なるほど。バレたら不味いな」


 少し考えて、私が魔族であるとバレたら危険だという結論に至ったリリナは、頭をガリガリ掻いて考え込む。
 すでにセイクリア教国へ入国できる門は目の前にあるというのに、私が居るせいで簡単には入国できない。それに申し訳なさを感じつつも、詳しい提案をしていく。


「一つは、私を置いてリリナだけが入国するという手です。そうすれば、私のことがバレる心配はないでしょうが、リリナ自身が危険かもしれません。まだ、追っ手が居ないとも限りませんしね」


 そして、一つ呼吸を置くと、私はもう一つの提案を告げる。


「もう一つは、先程言ったように、夜、国に侵入するというものです。侵入に成功したとしてもバレる危険性はついて回りますが、私がリリナを守れます」


 私の強さは、ここに来るまでに随分と披露してきたつもりだ。だから、ここで男のプライドを理由にリリナが断りを入れることはない。


「侵入の成功率はどのくらいだと思う?」

「そうですね。ほぼ確実に侵入できるかと」

「なら、侵入の方で行こう。俺は、役目を確実に果たしたいんでな」

「分かりました。では、夜まで待ちましょう。それと、もし、私の素性がバレるようなことがあれば、私のことは切り捨ててくださいね」


 微笑んでそう告げれば、リリナは大きく目を見開く。


「そんなこと、できるわけねぇだろっ」

「いいえ、そうしてもらわなければ困ります。私はバルからあなたを守ることを命じられていますので」

「けどっ」

「それができないのであれば、私はバレたらその場で自害せざるを得ません。分かってください」

「っ!?」


 少し言い過ぎではあったものの、きっとこれくらい言った方が効果的だと思い、そう告げると、リリナは言葉に詰まった後、渋々とうなずく。


「……分かった。けど、できるだけ、そんなことがないようにしてくれ」

「もちろんです。私とて、好んで捕まりたいわけではありませんからね」


 そうして、私達は夜になるまで門から離れた場所で待つことにする。この時は、まさか、夜を待つことすらできないとは思わなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タロを出したいと宣言しておいてなんですが、ちょっとばかしラーミア視点が続くことになります。

宣言を書いて、更新して、しばらくした頃になって『そういえば、プロットで次に書く内容はラーミア達のことだったような……?』と気づいた次第でありまして……タロはもうしばらくお預け状態になりそうです。

それでは、また!
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