我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百四十二話 入国門前にて(二)

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 門から離れた場所に陣取って、少し遅い昼食を摂っている時に、それは起こった。


「……リリナ」

「なん…………あぁ、なるほど」


 私の視線から、リリナはその異常に気づく。


 囲まれましたね。ですが、こんなに門に近い場所で盗賊というのはなさそうですし……いったい、何者でしょうか?


 門の前まで来て気が緩んでいたのか、囲まれるまで私はその存在に気づけなかった。
 いつでも動けるように双剣に手をかけながら、ひとまずは誰何すいかする。


「何者ですかっ?」


 殺意までは感じられないために行ったその行動が、間違っていたとは思わない。ただ、想定外だったのは、そこに居た人間とその目的だった。


「我は聖騎士長、グラハム・ヴェリー。そなた達には、国宝盗難の嫌疑がかけられている」

「は?」
「はい?」


 大物過ぎる人間の登場と、不可解な嫌疑。それに、私もリリナも一瞬、呆けてしまう。しかし、私達の理解を、彼らは待ってはくれない。


「投降するなら今のうちだ。さぁ、どうする?」


 銀の甲冑に身を包んだ彼の、有無を言わさぬ威圧感で圧倒しながらの問いかけに、私は急速に頭を回転させる。


 今、ここで捕まるのは非常に不味い。かといって、簡単に倒せる相手ではなさそうですわね……。仕方ありません。


《リリナ、私とは先程出会ったばかりだと通して捕まっておきなさい。使者であることを話せば、悪いようにはならないと思います》


 念話は、相手が使えなくとも、送るだけならできる。その性質を利用してリリナに指示をすると、リリナはこちらを振り向いて大きく目を見開く。


「やってもいない罪で投降するなんてごめんですわね」

「そうか、なら、捕縛せよっ!」

「「「はっ!」」」


 グラハムの声が響けば、即座に隠れていた聖騎士達が姿を現し、襲いかかってくる。私は、わざとリリナを守ることはせずに、そいつらを死なない程度に倒していく。しかし……。


 これはっ、随分ときついですね。


 ミルテナ帝国の騎士に比べ、セイクリア教国の聖騎士は一人一人の練度が高い。これからのことを考えれば、手加減するべきだと分かっていても、それがとても難しい。


「うわっ!」

「抵抗するなっ!」


 リリナは早々に捕まり、後方に下げられる。

 そして、私に疲れが出始めた頃になって、グラハムが動く。


「ふんっ、女の癖に良くもった方だと褒めてやろう。だが、ここからは倒せると思うなよ?」


 そう言って、グラハムはすさまじいスピードで私に肉薄してくる。


「っ!?」


 咄嗟に水魔法で結界を張ったものの、それはあっさりと破られ、剣がかち合う。


「ぐあっ」


 鍔迫り合いくらいはできるだろうと思っていた私は、その予想に反したグラハムの力強さに簡単に弾かれてしまい、その無防備になった腹部に強烈な蹴りを見舞われる。


「ごほっ、げほっ」


 立つことすらままならない程のダメージに、私は頭の奥で警鐘がけたたましく鳴り響くのを感じながらもどうにか顔を上げ……直後、全身を襲った雷らしき衝撃によって、意識を失うのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よしっ、これでラーミア視点は終わりです。

次からはまた、タロ達の方に話が戻ります。

それでは、また!
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