我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百五十九話 帰ってきたリリナ

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 我輩達、即座に案内されるままに大きな建物へと向かう。バルディス曰く、そこは教皇が住んでいた家なのだそうだが、あのアルトルム王国の『城』というものを思い起こさせるような広さがある場所だった。そして、その一画に、リリナは居た。


「バルディス殿達をお呼びしましたぞ」

「っ、バルディス! すまねぇっ、本当に、すまねぇっ!」


 男姿のリリナは、帰ってきたばかりの旅装も解かずに、我輩達を呼んだらしい。砂ぼこりで汚れているリリナは、バルディスの姿を認めた途端、地面に頭をつけて謝り倒す。


「に、にゃあ(う、ううむ)」

「リリナ。謝る前に、まずは状況を話してくれ」


 ラーミアが捕まったらしいことだけしか分かっていない我輩達は、焦ってはいたものの、さすがにいきなり謝り倒されると困る。せめて何が起こったのかを知らなければ、リリナを責めることも、慰めることもできない。


「あ、あぁ、そうだったな。わりぃ」

「僕達も同席させてもらうが、良いか?」

「あぁ、大丈夫だ」


 リリナに気を取られていた我輩は、ロッダやジルクといったメンバーも居ることに今気づき、いつの間にかディアムも我輩の後ろに現れており、少しだけびっくりする。そうして、バルディスの許可が下りると、リリナは話し始める。


「俺達が捕まったのは、セイクリア教国に入国する直前だった。何でも、国宝盗難の嫌疑があるとかで、聖騎士長率いる聖騎士団に囲まれて、手も足も出なかったんだ」


 リリナの話しによると、事前に何かあれば、ラーミアは自分を見捨てるようにと言っていたらしい。そして、リリナはそれを実行した。任務を遂行するためには、そうせざるを得なかったのだそうだ。ロッダ達とラーミアを天秤にかけて、ロッダ達を選んだというわけだ。


「俺は、サナフからの使者だってことですぐに解放されて、でも、すでにサナフには救援を向かわせたとか言われて、追い返されて……」


 無駄骨どころか、ラーミアを危険に晒してしまっている現状がとても辛いのだろう。拳をギュッと握り込むリリナは、またしても頭を下げる。


「すまねぇっ。俺じゃあ、助けられなかった!」

「………………顔を上げてくれ。リリナ」


 たっぷり間を置いて、バルディスはリリナにそう告げる。


「にゃあ……(ラーミア……)」

「大丈夫だ。恐らく、ラーミアはまだ殺されてはいない」

「にゃっ(本当であるかっ)」

「セイクリア教国は亜人種に対する差別意識が強い。そして、そういった者をいたぶる文化がある」

「……にゃ(……それって)」


 淡々とした、何を考えているか分からないバルディスの言葉に、我輩だけでなく、その場の全員が青ざめる。


「絶対に、取り戻す。ディアム、タロ、すぐに準備をしろっ。今日中にここを発つ」

「承知」

「にゃっ(わ、分かったのだっ)」

「ではっ、馬の手配はこちらでしましょうぞ」

「頼む」


 唐突に決まった予定。それに対し、ノルディは馬の手配をしてくれるらしい。それが分かったところで、我輩、はたと立ち止まる。


 準備、するものがないのだ。


 そう、我輩、基本的に身一つで行動しているために、準備するようなものが何もないのだ。


「ま、待ってくれ! 俺も、俺も着いていくっ」

「リリナ!?」


 リリナの言葉に最も驚いたのは、ロッダだった。しかし……。


「ダメだ」


 見たこともないような冷たい目をしたバルディスが、リリナを制する。


「っ、なぜっ」

「お前を連れていくと、効率が悪い。これはもう、俺達の問題だ」

「元はといえばっ、俺がラーミアを見捨てたからで「それでもだ」っ」


 そう言って、リリナを止めたバルディスは、絶対零度の視線を保ったまま、ロッダに向き直る。


「ロッダ。俺達は、これでもうここから離れる。だから、魔族への偏見の目をなくすように努力してくれ」

「あぁ。必ず」


 実のところ、ロッダが教皇になることが決まり、国民に向けた声明を出した際、ミルテナ帝国とファルシス魔国が組んでいるというのは嘘であることを話している。火を着けた者達が魔族に変装していたことを話し、すでに噂のほとんどは終息している。だから、バルディスがロッダに求めたのはそれ以上のこと。魔族というだけで疑われる状況を変えろということ。


「僕の力の限りで成し遂げてみせよう」


 それにうなずいたバルディスは、今度こそ、その身を翻して歩き出す。
 ラーミアを助けるため、セイクリア教国へと、我輩達は向かうのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


いやぁ、長かった。

これで、サナフ教国のお話は終わり……あっ、いえ、あとちょっとだけありますね。

サナフ教国自体の話しは終わりで間違いないですが。

明日、更新したら、その後はプロット整理に少し休むかもしれません。(三日くらい?)

まだ全部のプロット書けてませんので、時間がほしいです。

それでは、また!
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