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第三章 セイクリア教国の歪み
第百六十二話 ナージャ様の旅(五)
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「っ、って、あれ?」
「お帰りなさいませ。ナージャ様」
いきなりサナフ教国へと飛んだはずだったリリアンヌは、とても良く見慣れた景色と、自身の片割れである茶色の角のマリアンヌを見て放心する。
「えぇ、ただいま。マリアンヌ。良く考えたら、執務が溜まっているのでしたわっ。すぐに終わらせて、バル様を捜しますわよ。おーほほほほほっ」
高笑いをしながら、ナージャは怒濤の勢いで執務室へと去っていく。その後ろ姿を、リリアンヌはポカンと見つめていた。
「? リリー? どうしたの?」
「えっ、あっ、いや……わ、私、次の国に行くための準備をしたいから、ナージャ様はマリーに任せて良い?」
「分かったわ。任せなさいっ」
トンっと胸を叩くマリアンヌに、リリアンヌは感謝の言葉を告げながら急いで準備に取りかかる。持っていくものは武器や食料はもちろん、念話が使えない時の緊急連絡用に魔法具を一つ、ナージャの姿を隠す用にローブや砂漠の地に相応しい服等々。それらを手早く準備したリリアンヌは、ナージャの元へと急ぐのだった。
「おーほほほほほっ。これでまた、バル様を捜しに行けますわっ」
「では、ナージャ様。こちらにお召し替えをお願い致します」
「分かりましたわ。おーほほほっ」
執務室にあった大量の書類を捌ききったナージャは、肌のほとんどを隠してしまうような砂漠の衣装へと着替える。頭にはターバンまで巻いて、準備は万端だ。
「さぁ。次こそはバル様を見つけてみせますわっ。マリアンヌ、留守をお願いね」
「御意」
「リリアンヌはまた私に着いてきなさい」
「御意」
「それでは「お待ちくださいナージャ様」」
アルトルム王国へ向かった時のように、また転移でサナフ教国へと向かおうとしたナージャは、マリアンヌにそれを止められる。
「何かしら? マリアンヌ」
それに対して、ナージャは嫌な顔一つせずににこやかに問いかける。
「はっ。少々お耳に入れたいことがございまして……幽閉した左大臣のことです」
「左大臣。バル様を追いやった首謀者とされている者ね。それで? 何か分かって?」
「それが、どうも様子がおかしく、当時の記憶が飛んでいるのではないかとの見解が出ております」
「記憶が……?」
記憶が飛んでいるとは、穏やかではない。それは、頭に強い衝撃を与えたか、何者かに操られていなければ起こり得ないことなのだから。
「左大臣を操った者が居ると?」
「その可能性が高いと考えられております。ナージャ様。くれぐれもお気をつけください。その者の目的もまだ判明しておりませんが、今、最も王座に近い者はナージャ様でございます」
もし、その何者かが王座につく者を狙ったのだとすれば、次に危険があるのは、バルディスと婚約しているナージャ本人だ。真剣な表情のマリアンヌに、ナージャも重々しくうなずく。
「……分かりましたわ。肝に命じます。さぁっ、それでは行きますわよ。サナフ教国へ。バル様の元へっ」
そして、今度こそ、『転移』魔法の光に包まれて、サナフ教国へと向かうのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バルディス達が飛ばされた真相は、また分からなくなりましたね。
ナージャ様には、頑張って真相を突き止めてもらいたいものです。
さて、次の話は、ナージャ様とサナフ教国の話になります。
下僕大量生産の次は何を巻き起こすのか、楽しみにしていてください。
それでは、また!
「お帰りなさいませ。ナージャ様」
いきなりサナフ教国へと飛んだはずだったリリアンヌは、とても良く見慣れた景色と、自身の片割れである茶色の角のマリアンヌを見て放心する。
「えぇ、ただいま。マリアンヌ。良く考えたら、執務が溜まっているのでしたわっ。すぐに終わらせて、バル様を捜しますわよ。おーほほほほほっ」
高笑いをしながら、ナージャは怒濤の勢いで執務室へと去っていく。その後ろ姿を、リリアンヌはポカンと見つめていた。
「? リリー? どうしたの?」
「えっ、あっ、いや……わ、私、次の国に行くための準備をしたいから、ナージャ様はマリーに任せて良い?」
「分かったわ。任せなさいっ」
トンっと胸を叩くマリアンヌに、リリアンヌは感謝の言葉を告げながら急いで準備に取りかかる。持っていくものは武器や食料はもちろん、念話が使えない時の緊急連絡用に魔法具を一つ、ナージャの姿を隠す用にローブや砂漠の地に相応しい服等々。それらを手早く準備したリリアンヌは、ナージャの元へと急ぐのだった。
「おーほほほほほっ。これでまた、バル様を捜しに行けますわっ」
「では、ナージャ様。こちらにお召し替えをお願い致します」
「分かりましたわ。おーほほほっ」
執務室にあった大量の書類を捌ききったナージャは、肌のほとんどを隠してしまうような砂漠の衣装へと着替える。頭にはターバンまで巻いて、準備は万端だ。
「さぁ。次こそはバル様を見つけてみせますわっ。マリアンヌ、留守をお願いね」
「御意」
「リリアンヌはまた私に着いてきなさい」
「御意」
「それでは「お待ちくださいナージャ様」」
アルトルム王国へ向かった時のように、また転移でサナフ教国へと向かおうとしたナージャは、マリアンヌにそれを止められる。
「何かしら? マリアンヌ」
それに対して、ナージャは嫌な顔一つせずににこやかに問いかける。
「はっ。少々お耳に入れたいことがございまして……幽閉した左大臣のことです」
「左大臣。バル様を追いやった首謀者とされている者ね。それで? 何か分かって?」
「それが、どうも様子がおかしく、当時の記憶が飛んでいるのではないかとの見解が出ております」
「記憶が……?」
記憶が飛んでいるとは、穏やかではない。それは、頭に強い衝撃を与えたか、何者かに操られていなければ起こり得ないことなのだから。
「左大臣を操った者が居ると?」
「その可能性が高いと考えられております。ナージャ様。くれぐれもお気をつけください。その者の目的もまだ判明しておりませんが、今、最も王座に近い者はナージャ様でございます」
もし、その何者かが王座につく者を狙ったのだとすれば、次に危険があるのは、バルディスと婚約しているナージャ本人だ。真剣な表情のマリアンヌに、ナージャも重々しくうなずく。
「……分かりましたわ。肝に命じます。さぁっ、それでは行きますわよ。サナフ教国へ。バル様の元へっ」
そして、今度こそ、『転移』魔法の光に包まれて、サナフ教国へと向かうのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バルディス達が飛ばされた真相は、また分からなくなりましたね。
ナージャ様には、頑張って真相を突き止めてもらいたいものです。
さて、次の話は、ナージャ様とサナフ教国の話になります。
下僕大量生産の次は何を巻き起こすのか、楽しみにしていてください。
それでは、また!
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