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第三章 セイクリア教国の歪み
第百六十四話 入国
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「にゃー、にゃー(我輩は荷物、我輩は荷物)」
「もうすぐ着くぞ」
今、我輩は荷物……ではなくて、セイクリア教国へと馬に乗って向かっていた。ただ、我輩、馬に乗ることはできないので、バルディスの荷袋の中に荷物として軽量化の魔法を使った状態で入っている。ズンズン走る馬に振り回されながら、待機しているというわけだ。
「にゃー(我輩は荷物なのだ)」
「……タロ。もしかして拗ねてるのか?」
そんなことはないのだ。別に、元サナフ教国、今は新サナフ教国になっている国から出る際に、無造作に袋に詰め込まれたことを根に持っているわけではないのだ。違うのだ。
そう思いながらも沈黙していると、バルディスは馬を駆ったまま、話しかけてくる。
「悪かった。俺も急いでいたんだ」
「にゃー(気にしてないのだ)」
「……なら、何で声が低いんだ?」
「……にゃー(……そういう気分なのだ)」
分かってはいるのだ。ラーミアが危険なこと。すぐにでもセイクリア教国へ向かわなければならないこと。全部、分かっているのだ。だから、我輩、絶対、ぜーったい、拗ねてなどいないのだ。
「……悪かった」
結局のところ、バルディスはそう謝ると、また馬の操縦に集中し出す。また、周りで聞こえる音は馬が砂を蹴る音だけになる。
そうして、セイクリア教国へと辿り着いたのは、きっと一時間もしないうちだった。
「タロ、タロ。起きろ。タロ」
「みにゃあ? (ううむ?)」
目を覚ますと、ここ数日我輩の体を揺さぶっていた振動がなくなっており、食事時以外見ることがなかった地面が見えた。
「にゃ……にゃあ? (食事……いや、着いたのか?)」
「あぁ、ただ、入国審査で俺達の角は引っ掛かるだろうから、タロにはこの角が見えなくなる幻術を頼みたいんだ」
申し訳なさそうにエメラルドの瞳で我輩を見つめるバルディス。
「……にゃあ? (我輩、ただの荷物ではないのか?)」
「まだ引きずってたのか。……あぁ、荷物じゃない。俺達の大切な仲間だ」
「にゃっ(それなら良いのだっ)」
途端に元の調子に戻った我輩は、すぐに二人のために幻術を使うことにする。ちなみに、ディアムは我輩の後ろでじっと待機していて、ちょびっとだけ怖かったのだ。
むぅ、ここは万全を期するためにも、サポートシステムにお願いするのだ。
《 『サポートシステム』起動します。これより、無属性魔法、『幻術』を使用します。サポートは必要ですか?
はい/いいえ 》
『はい』なのだっ。
そう心の中で応じれば、バルディスとディアムの角が見えなくなる。これで、『にゅうこくしんさ』とやらも大丈夫なはずなのだ。
「ありがとうな。タロ」
「にゃ(ささみを要求するのだ)」
そう要求を告げれば、バルディスは苦笑しながら了承する。なんでも、セイクリア教国ならば鶏肉が獲れるらしい。そうして、我輩達は、ラーミアを助けるべく、『にゅうこくしんさ』とやらを受けるための列に並ぶのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日は、国に入るまでのお話でした。
タロが微妙に拗ねている様子でしたが、何とか機嫌を持ち直すに至りました。
荷物扱いはさすがに辛いですからね。
そして、少し所用がありまして、明日、明後日の更新はできそうにありません。
また21日に更新しますので、しばしお待ちください。
それでは、また!
「もうすぐ着くぞ」
今、我輩は荷物……ではなくて、セイクリア教国へと馬に乗って向かっていた。ただ、我輩、馬に乗ることはできないので、バルディスの荷袋の中に荷物として軽量化の魔法を使った状態で入っている。ズンズン走る馬に振り回されながら、待機しているというわけだ。
「にゃー(我輩は荷物なのだ)」
「……タロ。もしかして拗ねてるのか?」
そんなことはないのだ。別に、元サナフ教国、今は新サナフ教国になっている国から出る際に、無造作に袋に詰め込まれたことを根に持っているわけではないのだ。違うのだ。
そう思いながらも沈黙していると、バルディスは馬を駆ったまま、話しかけてくる。
「悪かった。俺も急いでいたんだ」
「にゃー(気にしてないのだ)」
「……なら、何で声が低いんだ?」
「……にゃー(……そういう気分なのだ)」
分かってはいるのだ。ラーミアが危険なこと。すぐにでもセイクリア教国へ向かわなければならないこと。全部、分かっているのだ。だから、我輩、絶対、ぜーったい、拗ねてなどいないのだ。
「……悪かった」
結局のところ、バルディスはそう謝ると、また馬の操縦に集中し出す。また、周りで聞こえる音は馬が砂を蹴る音だけになる。
そうして、セイクリア教国へと辿り着いたのは、きっと一時間もしないうちだった。
「タロ、タロ。起きろ。タロ」
「みにゃあ? (ううむ?)」
目を覚ますと、ここ数日我輩の体を揺さぶっていた振動がなくなっており、食事時以外見ることがなかった地面が見えた。
「にゃ……にゃあ? (食事……いや、着いたのか?)」
「あぁ、ただ、入国審査で俺達の角は引っ掛かるだろうから、タロにはこの角が見えなくなる幻術を頼みたいんだ」
申し訳なさそうにエメラルドの瞳で我輩を見つめるバルディス。
「……にゃあ? (我輩、ただの荷物ではないのか?)」
「まだ引きずってたのか。……あぁ、荷物じゃない。俺達の大切な仲間だ」
「にゃっ(それなら良いのだっ)」
途端に元の調子に戻った我輩は、すぐに二人のために幻術を使うことにする。ちなみに、ディアムは我輩の後ろでじっと待機していて、ちょびっとだけ怖かったのだ。
むぅ、ここは万全を期するためにも、サポートシステムにお願いするのだ。
《 『サポートシステム』起動します。これより、無属性魔法、『幻術』を使用します。サポートは必要ですか?
はい/いいえ 》
『はい』なのだっ。
そう心の中で応じれば、バルディスとディアムの角が見えなくなる。これで、『にゅうこくしんさ』とやらも大丈夫なはずなのだ。
「ありがとうな。タロ」
「にゃ(ささみを要求するのだ)」
そう要求を告げれば、バルディスは苦笑しながら了承する。なんでも、セイクリア教国ならば鶏肉が獲れるらしい。そうして、我輩達は、ラーミアを助けるべく、『にゅうこくしんさ』とやらを受けるための列に並ぶのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日は、国に入るまでのお話でした。
タロが微妙に拗ねている様子でしたが、何とか機嫌を持ち直すに至りました。
荷物扱いはさすがに辛いですからね。
そして、少し所用がありまして、明日、明後日の更新はできそうにありません。
また21日に更新しますので、しばしお待ちください。
それでは、また!
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