我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第百六十五話 セイクリアの町(一)

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 何事もなく無事入国した我輩達は、即座に拠点となる宿を決め、行動を開始した。バルディスとディアムは協力して隠密活動によってラーミアを捜し、我輩は同胞の情報網からラーミアを捜すこととなったのだ。合流時間を決めれば、我輩、同胞に会いに行くべく走り出した。


「……にゃあ? (……むぅ、ここはあらびあん?)」


 この国の町並みは、飼い主が見せてくれた『あらびん』だったか、『あらびあん』だったか忘れたが、そんな世界によく似ている。丸いクリームの天辺に、ちょんっと角を立てたような形の屋根をした建物がちょくちょくと見受けられる。


 うむ、飼い主には止められたが、あのクリームというのは柔らかそうで、食べて見たかったのだ。


 そう思いながら、我輩、同胞が居そうな路地裏へと入り込む。一匹でも同胞を見つければ、ボスのところに案内してもらえる。この国は広いと言われているので、各地のボス廻りをする必要があるかもしれないが、ひとまずはここら辺のボスを捜すべきだろう。


「にゃー? (誰か居ないであろうか?)」


 隠れられて遊べそうな場所を見つけた我輩は、何気なしに声をかけてみる。きっと、マウマウに警戒している同胞がこんなに分かりやすい場所に居るわけがないと思いながらの行動だった。しかし……。


「ふにゃ? (うん?)」


 右斜め前方より、返事がきた。我輩、すかさずその同胞の元へと駆け寄る。


「にゃあ? (あんた誰?)」

「にゃあにゃ(我輩は紳士、タロなのだ)」

「ふにゃー。ふにゃ(ふーん、俺はブチ。よろしくな)」


 そこに居たのは、でっぷりと太った緑の体に茶色の斑点模様がある同胞だった。ちょみっとだけ親近感が沸いたような気がしたが、我輩、ここまでは太っていないと思い直す。
 そして、ブチが何をしていたかと言えば、ゴミ箱を漁って何かを食べている様子だった。


「ふにゃ? ふんにゃ(んで、何の用? 餌場は渡さないぞ)」


 我輩が餌場を荒らしに来た者だと思ったらしいブチは、一気に警戒を強めて低い声で問いかける。しかし、我輩はこの餌場に興味はない。そんなことより、ラーミアの手がかりがほしかった。


「にゃー(いや、ボスのところに案内してほしいのだ)」

「ふにゃん? (ボスのところ?)」


 餌場荒しではないと分かれば、ブチは態度を軟化させる。


「にゃ(聞きたいことがあるのだ)」

「ふにゃ。ふにゃあ(分かった。着いてこい)」


 こうして我輩、幸先良く協力者を得られたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回から、しばらくは猫の話が続きます。

サナフではあんまりタロを活躍させてあげられなかったので、今回はがっつり行こうと思ってますよ。

それでは、また!
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