我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第百七十一話 タロの捜索(一)

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「……遅いっ」


 俺達は今、タロと待ち合わせた宿屋の前でタロの帰りを待っていた。待ち合わせの時間は大体太陽がどの位置に来るかで決めておいたとはいえ、待てど暮らせどタロは帰って来ない。念話も通じず、そろそろ太陽が沈みかねない時間帯にまでなっている。


「バル、何かあったのかも」

「だが、タロなら大抵のことは何でもこなせるだろう?」


 そう、タロならば、悪人の撃退くらいできるだろうし、それ以外の心配なんて、『念話』ができるタロにはない……はずだ。


「……迷子」

「うっ」

「建物、飛び越え事件」

「ぐっ」

「心配、ない?」

「そう言われると、心配になってきたな」


 たまたま遠くに居て、魔力の通りが悪いせいで『念話』が通じないだけだと思っていた俺は、ディアムの言葉で急に心配になってくる。主に、何かやらかしているんじゃないかという方向で。


「少し、聞き込んでみるか」

「御意」


 そうして、まずは宿屋の主人にここにタロが来てないかを尋ねてみることにする。


 カラランッ。


「お帰りなさい。お客さん」


 宿屋に入ると、ちょうど夕食の支度をしているのか、随分と良い匂いが漂ってくる。出迎えるのは笑顔の宿屋の主人で、どうやら奥方は料理の方を担当しているらしい。


「あぁ、少し良いか? ここに、このくらいのサイズの服を着た白猫は来なかったか?」

「ん? あぁ、お客さんが連れてた猫ね。それなら、随分前にこの宿屋の前で寝てましたよ」

「そう、か。ちょっと捜してくる」


 タロは、俺達が来る前に、この宿屋の前に居たらしい。そうなると、何かに巻き込まれたか、巻き込んだかの可能性が高い。早急に捜し出す必要が出てきた。


「夕食はどうします?」

「外で食べることにする」

「了解っ」


 宿屋の主人に見送られて、俺はディアムとともに宿屋を出る。


「……バル。魔力、辿ろう」

「あぁ、それが早そうだな」


 タロの魔力は量が多いこともあって、辿りやすい。だからこそ、普段はそれを遮断するように言い聞かせているものの、もし、寝ている間に連れ去られたとかいう事態であるならば、その遮断もできていないはずだ。それならば、魔力を辿ることくらい簡単なはずだった。しかし……。


「……無理。タロ、成長してた」

「……どういうことだ?」

「タロ、眠ったまま遮断、できてる」


 どうやら俺達はタロを侮っていたらしい。最初からタロの捜索は難航しそうな気配がしてきた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タロの成長がここで明らかにっ!

でも、何となく事態が事態なだけに喜べない。

複雑なバルディス達でした。

それでは、また!
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