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第三章 セイクリア教国の歪み
第百七十五話 襲撃者は……?
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我輩、心配してくれるご老人を余所に、音を立てないよう、気配を殺して我輩を拐った者達が居るであろう部屋に近づき、聞き耳を立てる。
「それにしても、あの猫、本当にお貴族様のものなんかねぇ」
「はっ、もし貴族のもんじゃなかったとしても、あれだけ上等な服を猫に与えられる奴なんだ、金持ちに決まってる」
「見張りの奴が帰ってきたら、どんな奴があの猫の飼い主かくらい分かんだろ」
……我輩、もしかしなくとも、身代金目当てに誘拐されたのか?
ここまでの会話を聞けば、さすがの我輩もどういう目的だったかの想像はつく。むしろ、迷子だと思ったことが大きな間違いだったのだ。そして、我輩、もう一つ、とんでもない事実に気づく。
我輩、バルディス達に迷惑をかけてるのでは……?
男は、見張りが居ると言っていた。となれば、我輩の仲間がバルディス達だとバレている可能性は高いわけで……。
むっ? しかし、見張りくらいならあの二人は気づきそうなものだが……?
そう思った我輩は、はたして、間違いではなかった。
「そう。見張り、これ?」
「おぉ、そうそう、帰ってき……っ、誰だテメェっ!」
そこに居たのは、顔の原型が分からなくなるほどボコボコにされた男を担いだディアムだった。隠密を主とするディアムが、こんな風に登場するのはとても珍しい。
「タロ。どこ?」
ただ……。
ディアムが滅茶苦茶怒っているのだっ。こ、怖いのだ。
声は荒げていないものの、目に強烈な怒りを宿したディアムの様子に、我輩、ビクッとなる。
「へっ、この人数に勝てるわけがねぇっ。こいつも身ぐるみ剥いでやっちまうぞっ」
「「「おぉーっ」」」
確かに、普通なら勝てる人数ではないだろう。ディアムが引き付けている間にチラリとその場を覗いてみたところ、そこには三十人近くの人間が居た。ただ、ディアムは普通ではない。ファルシス魔国、隠密部隊隊長だ。
集団でディアムに襲いかかる人間達。それに合わせて、我輩、背後でご老人が止めるのも聞かずに駆け出す。そして……。
「にゃおーんっ! (猫流奥義、ガリガリプラスっ!)」
ここは、我輩も参加させてもらおうと、背後からディアムを襲おうとしていた人間を攻撃する。
「ぎゃあぁぁっ!」
「っ、タロっ!」
ディアムが呼び掛ける声に、我輩視線だけで応えると、すぐさま近くの人間を攻撃し始める。
「にゃおーんっ! (猫流奥義、クルクルアタックっ!)」
「ぐおぉぉおっ」
容赦はしない。彼らは、先程の半透明の者達を散々に傷つけ、殺してきたのだろうから。
「にゃおーんっ! にゃおーんっ! にゃっおーんっ!! (猫流奥義、ガリガリプラスっ! 猫流奥義、ガリガリっ! 猫流奥義、ドッスンっ!!)」
最後、重力を操作して、それなりの重さで落ちると、地響きが起こる。
うむ? 加減を間違えたか?
しかし、それだけ戦えば、ディアムの方もいくらか倒していただけあって、全てが片付く。気絶ですんでいる者も居れば、死んだ者も居る。ちなみに、死んだ者は、半透明の仲間入りをして、袋叩きにあっていた。こればかりは、因果応報で、手出しはできないのだ。
「タロ、無事!」
「にゃ(無事なのだ)」
若干返り血を浴びてしまったものの、我輩自身に怪我はない。ただ、我輩の言葉が分からないディアムは、我輩のボディのあちこちを触って確かめていく。
「にゃー(大丈夫なのだがなぁ)」
そして、確認を終えると、ホッとした様子で我輩の頭を一撫でする。
「無事、良かった」
「にゃ(迷惑かけてすまなかったのだ)」
「バル、今から連絡、する」
うっ……お説教、なのだ。
そう思って、我輩、ちょっとシュンとしていると、すぐにディアムは我輩と視線を合わせる。
「バル、もうすぐ、来るらしい」
にゃんと!?
そうして、我輩の背後にあった扉が吹き飛んだのは、心の準備もする間もない、その直後だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さぁ、魔王の登場です!
いや、本物の魔王でもありますけど、その意味ではなく、ね?
果たしてタロは、無事、説教の嵐を耐え抜くことができるのでしょうかっ!
次回、『タロ、死す』(←嘘です)
それでは、また!
「それにしても、あの猫、本当にお貴族様のものなんかねぇ」
「はっ、もし貴族のもんじゃなかったとしても、あれだけ上等な服を猫に与えられる奴なんだ、金持ちに決まってる」
「見張りの奴が帰ってきたら、どんな奴があの猫の飼い主かくらい分かんだろ」
……我輩、もしかしなくとも、身代金目当てに誘拐されたのか?
ここまでの会話を聞けば、さすがの我輩もどういう目的だったかの想像はつく。むしろ、迷子だと思ったことが大きな間違いだったのだ。そして、我輩、もう一つ、とんでもない事実に気づく。
我輩、バルディス達に迷惑をかけてるのでは……?
男は、見張りが居ると言っていた。となれば、我輩の仲間がバルディス達だとバレている可能性は高いわけで……。
むっ? しかし、見張りくらいならあの二人は気づきそうなものだが……?
そう思った我輩は、はたして、間違いではなかった。
「そう。見張り、これ?」
「おぉ、そうそう、帰ってき……っ、誰だテメェっ!」
そこに居たのは、顔の原型が分からなくなるほどボコボコにされた男を担いだディアムだった。隠密を主とするディアムが、こんな風に登場するのはとても珍しい。
「タロ。どこ?」
ただ……。
ディアムが滅茶苦茶怒っているのだっ。こ、怖いのだ。
声は荒げていないものの、目に強烈な怒りを宿したディアムの様子に、我輩、ビクッとなる。
「へっ、この人数に勝てるわけがねぇっ。こいつも身ぐるみ剥いでやっちまうぞっ」
「「「おぉーっ」」」
確かに、普通なら勝てる人数ではないだろう。ディアムが引き付けている間にチラリとその場を覗いてみたところ、そこには三十人近くの人間が居た。ただ、ディアムは普通ではない。ファルシス魔国、隠密部隊隊長だ。
集団でディアムに襲いかかる人間達。それに合わせて、我輩、背後でご老人が止めるのも聞かずに駆け出す。そして……。
「にゃおーんっ! (猫流奥義、ガリガリプラスっ!)」
ここは、我輩も参加させてもらおうと、背後からディアムを襲おうとしていた人間を攻撃する。
「ぎゃあぁぁっ!」
「っ、タロっ!」
ディアムが呼び掛ける声に、我輩視線だけで応えると、すぐさま近くの人間を攻撃し始める。
「にゃおーんっ! (猫流奥義、クルクルアタックっ!)」
「ぐおぉぉおっ」
容赦はしない。彼らは、先程の半透明の者達を散々に傷つけ、殺してきたのだろうから。
「にゃおーんっ! にゃおーんっ! にゃっおーんっ!! (猫流奥義、ガリガリプラスっ! 猫流奥義、ガリガリっ! 猫流奥義、ドッスンっ!!)」
最後、重力を操作して、それなりの重さで落ちると、地響きが起こる。
うむ? 加減を間違えたか?
しかし、それだけ戦えば、ディアムの方もいくらか倒していただけあって、全てが片付く。気絶ですんでいる者も居れば、死んだ者も居る。ちなみに、死んだ者は、半透明の仲間入りをして、袋叩きにあっていた。こればかりは、因果応報で、手出しはできないのだ。
「タロ、無事!」
「にゃ(無事なのだ)」
若干返り血を浴びてしまったものの、我輩自身に怪我はない。ただ、我輩の言葉が分からないディアムは、我輩のボディのあちこちを触って確かめていく。
「にゃー(大丈夫なのだがなぁ)」
そして、確認を終えると、ホッとした様子で我輩の頭を一撫でする。
「無事、良かった」
「にゃ(迷惑かけてすまなかったのだ)」
「バル、今から連絡、する」
うっ……お説教、なのだ。
そう思って、我輩、ちょっとシュンとしていると、すぐにディアムは我輩と視線を合わせる。
「バル、もうすぐ、来るらしい」
にゃんと!?
そうして、我輩の背後にあった扉が吹き飛んだのは、心の準備もする間もない、その直後だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さぁ、魔王の登場です!
いや、本物の魔王でもありますけど、その意味ではなく、ね?
果たしてタロは、無事、説教の嵐を耐え抜くことができるのでしょうかっ!
次回、『タロ、死す』(←嘘です)
それでは、また!
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