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第三章 セイクリア教国の歪み
第百七十六話 ブチ
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扉を蹴破って入ってきたバルディスは、周りを見渡して確認すると、盛大なため息を吐いて崩れ落ちる。
「に、にゃあ? (バ、バルディス?)」
「ふにゃん(どうやら、心配なかったようだな)」
バルディスに声をかけた我輩だったが、バルディスからの返事はなく、なぜかバルディスと一緒に来ていたブチが言葉を発する。
「にゃあ? にゃ? (ブチ? なぜここに?)」
我輩、ブチのことをバルディスに紹介した覚えはないのだがと思いながら、ブチに問いかけてみる。
「ふにゃー(あぁ、それはな、お前が連れ去られたところを目撃した奴が居たからだ)」
ふむ、なるほど、そうなると、バルディスは我輩の手がかりを求めてブチ達に協力を仰いだというところか。
「ブチ?」
と、状況確認を進めている中、我輩と、恐らくブチにしか見えないであろうご老人が声をかけてくる。
「ふ、ふにゃんっ(フ、フレッドっ)」
ご老人に声をかけられたブチは、細い目を見開いて、ご老人を凝視する。どうやら我輩、この目の前のブチと間違われていたらしい。
「ふにゃっ。ふにゃあっ(フレッド、お前、何でっ。ずっと、ずっと、帰りを待ってたんだぞっ)」
悲しげに鳴くブチは、気づいている。このご老人が、すでにこの世のものではないことを。
「あぁ、すまんのぉ。ブチ。一人、置いていってしもうて。すまんのぉ」
ブチを抱き締めるように腕を動かし、しかし、その腕が通り抜けてしまうことにショックを受けた様子のご老人は、ただただ謝る。
「ふ、ふにゃん。ふにゃにゃー(あ、謝るなよ。帰って来ないのは寂しかったが、フレッドと一緒に居られた時間は幸せだったんだから)」
「……タロ、ブチは誰と話してるんだ?」
「にゃっ(しっ、静かにするのだっ)」
「あ、あぁ」
こっそりと耳打ちするバルディスに、小声で注意を返せば、戸惑いながらも素直に従う。
今は、邪魔をしてはいけない場面なのだ。
「ありがとうのぅ。ブチが居てくれて、ワシも幸せじゃったよ」
「ふにゃん……(フレッド……)」
触れることはできない。できないが、ご老人はそれでもブチの頭を撫でる仕草をする。ブチの心情を推し量ることはできないものの、その表情は、どこか寂しげだった。
「ふにゃ? ふにゃあ(逝くのか? フレッド)」
「あぁ、もう心残りはないからのぅ。ブチや。お前は、もう少し長く生きるんじゃよ。ちゃんと、いつまでも待っておるからのぅ」
「ふにゃ(分かってる)」
悲しげに、それでもしっかりと意思を持って、ブチが鳴いた直後だった。ご老人が、光に包まれ出したのは。
「ふにゃっ(フレッドっ)」
「またの。ブチや」
そう言うとともに、ご老人は、光の粒になって天へと昇っていくのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回の話だけ見ると、ブチが主人公っぽいですね。
「にゃっ!? (なぬっ!?)」
もちろん、主人公はタロですが。
「にゃあ(良かったのだ)」
……このコーナーは作者のものだったのに、一度発言を許したせいか、タロが入り込んでいますね。
「にゃ(うむ)」
まぁ、いいですけど。
それでは、また!
「に、にゃあ? (バ、バルディス?)」
「ふにゃん(どうやら、心配なかったようだな)」
バルディスに声をかけた我輩だったが、バルディスからの返事はなく、なぜかバルディスと一緒に来ていたブチが言葉を発する。
「にゃあ? にゃ? (ブチ? なぜここに?)」
我輩、ブチのことをバルディスに紹介した覚えはないのだがと思いながら、ブチに問いかけてみる。
「ふにゃー(あぁ、それはな、お前が連れ去られたところを目撃した奴が居たからだ)」
ふむ、なるほど、そうなると、バルディスは我輩の手がかりを求めてブチ達に協力を仰いだというところか。
「ブチ?」
と、状況確認を進めている中、我輩と、恐らくブチにしか見えないであろうご老人が声をかけてくる。
「ふ、ふにゃんっ(フ、フレッドっ)」
ご老人に声をかけられたブチは、細い目を見開いて、ご老人を凝視する。どうやら我輩、この目の前のブチと間違われていたらしい。
「ふにゃっ。ふにゃあっ(フレッド、お前、何でっ。ずっと、ずっと、帰りを待ってたんだぞっ)」
悲しげに鳴くブチは、気づいている。このご老人が、すでにこの世のものではないことを。
「あぁ、すまんのぉ。ブチ。一人、置いていってしもうて。すまんのぉ」
ブチを抱き締めるように腕を動かし、しかし、その腕が通り抜けてしまうことにショックを受けた様子のご老人は、ただただ謝る。
「ふ、ふにゃん。ふにゃにゃー(あ、謝るなよ。帰って来ないのは寂しかったが、フレッドと一緒に居られた時間は幸せだったんだから)」
「……タロ、ブチは誰と話してるんだ?」
「にゃっ(しっ、静かにするのだっ)」
「あ、あぁ」
こっそりと耳打ちするバルディスに、小声で注意を返せば、戸惑いながらも素直に従う。
今は、邪魔をしてはいけない場面なのだ。
「ありがとうのぅ。ブチが居てくれて、ワシも幸せじゃったよ」
「ふにゃん……(フレッド……)」
触れることはできない。できないが、ご老人はそれでもブチの頭を撫でる仕草をする。ブチの心情を推し量ることはできないものの、その表情は、どこか寂しげだった。
「ふにゃ? ふにゃあ(逝くのか? フレッド)」
「あぁ、もう心残りはないからのぅ。ブチや。お前は、もう少し長く生きるんじゃよ。ちゃんと、いつまでも待っておるからのぅ」
「ふにゃ(分かってる)」
悲しげに、それでもしっかりと意思を持って、ブチが鳴いた直後だった。ご老人が、光に包まれ出したのは。
「ふにゃっ(フレッドっ)」
「またの。ブチや」
そう言うとともに、ご老人は、光の粒になって天へと昇っていくのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回の話だけ見ると、ブチが主人公っぽいですね。
「にゃっ!? (なぬっ!?)」
もちろん、主人公はタロですが。
「にゃあ(良かったのだ)」
……このコーナーは作者のものだったのに、一度発言を許したせいか、タロが入り込んでいますね。
「にゃ(うむ)」
まぁ、いいですけど。
それでは、また!
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