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第三章 セイクリア教国の歪み
第百八十八話 聖騎士長(一)
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私は……あぁ、そうだ。私は、グラハム。グラハム・ヴェリー。聖騎士長だ。あのお方に忠誠を誓った……あのお方は、あのお方は……どのようなお方だったか?
混乱する思考の中、私は市民を威圧するように聖騎士達を配し、進む。そして、市場の一画で見つけた。気弱そうな男を。
「おい、貴様」
「は、はいぃっ、ななな、何でしょうかっ」
ちょうど良い。こいつを連れていこう。あのお方の元に連れていけば、きっとすぐに対処していただける。
そんな思考に、なぜか私の心は相反する感情を抱く。
やめろ、もう、もうこれ以上は、やめてくれ……。こんなこと、したくない。
悲痛な感情の叫び。しかし、その叫びは表に出ることなく、口が勝手に動く。
「貴様だな。盗みを働いたという男はっ」
「へっ? そそ、そんなっ。ぬ、盗みなんて、おいらしていませんっ」
ガクガクと震えながら、必死に無実を叫ぶ男。
しかし、私だって分かっている。この男が無実であることくらい。それを分かっていながら、私は、この男を引っ立てようとしていた。全ては、あのお方のために。
違うっ、違うっ。私が忠誠を誓ったお方は、あんな奴なんかじゃないっ。そうだっ、あのお方は、あのお方は……あぁっ、なぜ、なぜ、思い出せないっ。あぁ、また、また、思考が霞む。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。…………誰か、助けてくれ。
抵抗しようとする男を、私は……我は怒鳴りつけ、部下に命じて拘束させる。近くで男の子供らしい幼女が泣き叫んでいたが、それを無視して男を連れていく。
市場は騒然とし、戸惑う者、男へ侮蔑の視線を向ける者、我々聖騎士に恐怖を抱く者と様々な人間が入り乱れる。
「む、無実ですっ。夫は、そんなことをする人じゃありませんっ」
ふと視線を向ければ、部下にすがりつくようにしている男の妻らしき女がいた。しかし……。
「罪人を庇うとはどういうつもりだっ。そなたも共犯か?」
そう怒鳴りつければ、ビクッと体を震わせて懸命に言葉を紡ぐ。
「ちがっ、違いますっ。ですが、本当に、夫はそんな、盗みなんて、する人じゃないんですっ」
「……その女も捕らえよ」
我がそう言えば、市民からはギョッとしたような視線が向けられるのを感じる。しかし、仕方ない。この女が悪いのだから。我の使命を邪魔する、この女が。
「きゃあっ」
「っ、つ、妻は関係ありませんっ。ど、どうかっ、どうかお離しくださいっ」
女を捕らえれば、次は男の方が騒がしくなる。すかさず猿轡を嵌める指示を出し、二人の人間を黙らせる。
市民達は、事の成り行きを見て恐怖したようだったが、誰も動くことはない。それを見て、これ以上の収穫はないと判断し、我は部下達を率いて教皇庁へと向かう。教皇庁の、あのお方の元へと。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回はグラハム視点でした。
何となく、グラハムの身に何が起こっているのかが分かったと思いますが、詳しくはもう少し後に判明するようにしています。
そして……ちょっとそろそろ一話から見直しとか修正とかしていこうかなぁと思ってます。
基本、気が向いた時にチョコチョコとやっていくつもりです。
話の内容は変わらないのでご安心を(本当に、ちょっとした描写の方法の変更とか、誤字脱字があればその修正とかくらいなので)
それでは、また!
混乱する思考の中、私は市民を威圧するように聖騎士達を配し、進む。そして、市場の一画で見つけた。気弱そうな男を。
「おい、貴様」
「は、はいぃっ、ななな、何でしょうかっ」
ちょうど良い。こいつを連れていこう。あのお方の元に連れていけば、きっとすぐに対処していただける。
そんな思考に、なぜか私の心は相反する感情を抱く。
やめろ、もう、もうこれ以上は、やめてくれ……。こんなこと、したくない。
悲痛な感情の叫び。しかし、その叫びは表に出ることなく、口が勝手に動く。
「貴様だな。盗みを働いたという男はっ」
「へっ? そそ、そんなっ。ぬ、盗みなんて、おいらしていませんっ」
ガクガクと震えながら、必死に無実を叫ぶ男。
しかし、私だって分かっている。この男が無実であることくらい。それを分かっていながら、私は、この男を引っ立てようとしていた。全ては、あのお方のために。
違うっ、違うっ。私が忠誠を誓ったお方は、あんな奴なんかじゃないっ。そうだっ、あのお方は、あのお方は……あぁっ、なぜ、なぜ、思い出せないっ。あぁ、また、また、思考が霞む。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。…………誰か、助けてくれ。
抵抗しようとする男を、私は……我は怒鳴りつけ、部下に命じて拘束させる。近くで男の子供らしい幼女が泣き叫んでいたが、それを無視して男を連れていく。
市場は騒然とし、戸惑う者、男へ侮蔑の視線を向ける者、我々聖騎士に恐怖を抱く者と様々な人間が入り乱れる。
「む、無実ですっ。夫は、そんなことをする人じゃありませんっ」
ふと視線を向ければ、部下にすがりつくようにしている男の妻らしき女がいた。しかし……。
「罪人を庇うとはどういうつもりだっ。そなたも共犯か?」
そう怒鳴りつければ、ビクッと体を震わせて懸命に言葉を紡ぐ。
「ちがっ、違いますっ。ですが、本当に、夫はそんな、盗みなんて、する人じゃないんですっ」
「……その女も捕らえよ」
我がそう言えば、市民からはギョッとしたような視線が向けられるのを感じる。しかし、仕方ない。この女が悪いのだから。我の使命を邪魔する、この女が。
「きゃあっ」
「っ、つ、妻は関係ありませんっ。ど、どうかっ、どうかお離しくださいっ」
女を捕らえれば、次は男の方が騒がしくなる。すかさず猿轡を嵌める指示を出し、二人の人間を黙らせる。
市民達は、事の成り行きを見て恐怖したようだったが、誰も動くことはない。それを見て、これ以上の収穫はないと判断し、我は部下達を率いて教皇庁へと向かう。教皇庁の、あのお方の元へと。
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今回はグラハム視点でした。
何となく、グラハムの身に何が起こっているのかが分かったと思いますが、詳しくはもう少し後に判明するようにしています。
そして……ちょっとそろそろ一話から見直しとか修正とかしていこうかなぁと思ってます。
基本、気が向いた時にチョコチョコとやっていくつもりです。
話の内容は変わらないのでご安心を(本当に、ちょっとした描写の方法の変更とか、誤字脱字があればその修正とかくらいなので)
それでは、また!
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