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第三章 セイクリア教国の歪み
第百八十九話 聖騎士長(二)
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またしてもモヤモヤとし出した頭を抱えながら、我は報告と処理のために教皇庁の第二区画へと足を踏み入れる。
捕らえた男女を引きずるようにして引き連れ、一つの豪奢な扉の前に立つと、ピシリと直立不動の体勢を取る。
「聖騎士長、グラハム・ヴェリー、ただいま帰還いたしました」
ハキハキと宣言すれば、中から低い男の声で『入れ』と告げられる。
ダメだ。行くな。行ってはいけないっ!
またしても始まった心の叫びを我は無視して入室する。まさか、我が忠誠を誓ったあのお方を待たせるわけにはいかない。
「失礼しますっ」
おのれっ、おのれっ、こいつだけは、こいつだけは許さないっ!
うるさいっ。あのお方に対する無礼など許さぬぞっ。
目の前にはフードを被った小柄な男が一人、椅子に腰かけていた。その男を相手に、我の感情は荒れ狂うが、そのあまりにも不敬な感覚に心の中で反論する。そう、目の前に居るこのお方こそが、我が生涯の忠誠を誓ったお方だった。
「ご苦労。今回の収穫はその二人か?」
「はっ、その通りでございます」
そう言って、背後の部下へと視線を投げ掛ければ、二人の部下が、縛り上げて猿轡を嵌めた二人の男女を床へと転がす。
「んーんんんー」
「むーむー」
意識は保ったままであるため、少々うるさいが、これも処理が終われば静かになる。
「ククッ、威勢が良いな。では、始めよう」
そう言っておもむろに立ち上がった、彼のお方は、転がった二人の頭に手を置く。それは、剣など握ったこともないというような白く滑らかな手で、その手で触れられている二人に、つい嫉妬してしまいそうになる。
違うっ。こいつは敵だっ。早く、早くこのことを報せなければならないのにっ。助けなければならないのにっ。
またしても沸き上がる不敬な感覚。それに反応しようとした瞬間、我は、ふいに何者かの視線を感じた気がして辺りを見渡す。
「『操術』」
しかし、何も見つけられないままに、処理が完了する。忠実な僕を作る処理が。
「どうした? 聖騎士長」
「いえ、気のせいだったようでございます」
まだモヤモヤとしている頭で、とにかく心配をかけないように即答すると、部下に命じて二人の縄を解かせる。今はもう、二人の男女が暴れる心配などない。我らの仲間となったのだから。
「それでは、時間を見て、送り届けて参ります」
「あぁ」
お願いだ。これ以上は、やめてくれ。
かすかにそんな意識を感じながらも、我は任務遂行のために踵を返す。全ては、このお方の野望のために。そのために、我は剣を捧げたのだから……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
聖騎士長視点はここで終わりです。
この後は……ディアムかタロ視点になるはずです。
途中で何か思い浮かばない限りは、プロット通りに進めますね。
それでは、また!
捕らえた男女を引きずるようにして引き連れ、一つの豪奢な扉の前に立つと、ピシリと直立不動の体勢を取る。
「聖騎士長、グラハム・ヴェリー、ただいま帰還いたしました」
ハキハキと宣言すれば、中から低い男の声で『入れ』と告げられる。
ダメだ。行くな。行ってはいけないっ!
またしても始まった心の叫びを我は無視して入室する。まさか、我が忠誠を誓ったあのお方を待たせるわけにはいかない。
「失礼しますっ」
おのれっ、おのれっ、こいつだけは、こいつだけは許さないっ!
うるさいっ。あのお方に対する無礼など許さぬぞっ。
目の前にはフードを被った小柄な男が一人、椅子に腰かけていた。その男を相手に、我の感情は荒れ狂うが、そのあまりにも不敬な感覚に心の中で反論する。そう、目の前に居るこのお方こそが、我が生涯の忠誠を誓ったお方だった。
「ご苦労。今回の収穫はその二人か?」
「はっ、その通りでございます」
そう言って、背後の部下へと視線を投げ掛ければ、二人の部下が、縛り上げて猿轡を嵌めた二人の男女を床へと転がす。
「んーんんんー」
「むーむー」
意識は保ったままであるため、少々うるさいが、これも処理が終われば静かになる。
「ククッ、威勢が良いな。では、始めよう」
そう言っておもむろに立ち上がった、彼のお方は、転がった二人の頭に手を置く。それは、剣など握ったこともないというような白く滑らかな手で、その手で触れられている二人に、つい嫉妬してしまいそうになる。
違うっ。こいつは敵だっ。早く、早くこのことを報せなければならないのにっ。助けなければならないのにっ。
またしても沸き上がる不敬な感覚。それに反応しようとした瞬間、我は、ふいに何者かの視線を感じた気がして辺りを見渡す。
「『操術』」
しかし、何も見つけられないままに、処理が完了する。忠実な僕を作る処理が。
「どうした? 聖騎士長」
「いえ、気のせいだったようでございます」
まだモヤモヤとしている頭で、とにかく心配をかけないように即答すると、部下に命じて二人の縄を解かせる。今はもう、二人の男女が暴れる心配などない。我らの仲間となったのだから。
「それでは、時間を見て、送り届けて参ります」
「あぁ」
お願いだ。これ以上は、やめてくれ。
かすかにそんな意識を感じながらも、我は任務遂行のために踵を返す。全ては、このお方の野望のために。そのために、我は剣を捧げたのだから……。
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聖騎士長視点はここで終わりです。
この後は……ディアムかタロ視点になるはずです。
途中で何か思い浮かばない限りは、プロット通りに進めますね。
それでは、また!
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