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第三章 セイクリア教国の歪み
第二百話 静かなる激動(二)
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バルさんが依頼を受けて去った後、冒険者ギルドではバルさんの噂が駆け巡りました。
曰く、『絡もうとした連中をことごとく殺気で昏倒させ、いきなりAランクになった新人が居るぞ』と。
それに対して私は『化け物だなんて失礼なっ。バルさんは私の想い人ですっ』と返したのだが、もしかしたらそれは不味かったのかもしれない。なぜか噂は『とんでもなく強いけど、肉食獣に見初められた可哀想なやつ』になっていました。
えぇ、なぜルビに当たる方が私の名前かと言いますと、はっきりと私を視界に捕らえながら『あいつ、肉食獣だよな』などと失礼なことを言ってきた冒険者が居たからでして……もちろん、その冒険者はボコボコに伸しておきましたよ?
そんなことをやっているうちに、そろそろ他の娘と受付業務の交代の時間という時間になっていました。まだ、交代する相手は来ていないので待たなくてはなりません。いつもなら早く代わってほしいと思うのに、今日に限ってはバルさんが心配で、バルさんが帰ってくるまでここに居たいという気持ちが強くありました。
「はぁ、バルさん……」
恋する乙女のため息に、途端にギルドの男どもがギョッとしたような視線を寄越してきますが、こういう時は無視に限ります。……失礼だとは思いますが。
と、そんな時、扉が開きました。内心では、バルさんだったら良いなぁと思いながら、大した期待もせずにそちらを見ます。すると……そこには、バルさんの姿がありました。
「ん?」
何やら首をかしげたバルさんでしたが、すぐに私の方へと来てくれます。私は、ドキドキとする胸を押さえながら舞い上がる心のままに喜びの声を上げます。
「あっ、バルさん。戻られたんですねっ」
きっと、敵情視察か討伐の準備をして、依頼達成が難しいことが分かったのでしょう。となると、依頼未達成ということで違約金を払わなければなりませんが、バルさんの安全を考えればそれが良いと思えます。私は、バルさんを彼氏にしたいのですから。……ですが、バルさんは私にとって予想外の発言をします。
「あぁ、依頼を達成したから、報告に来た」
「はい?」
……聞き間違いでしょうか? 今、『依頼を達成した』と聞こえたような……?
「ただ、依頼書に数の誤りがあったぞ。ジャイアントスコーピオン三体ではなく、十四体だった」
『三体』ではなく、『十四体』? あの、ジャイアントスコーピオンが?
「ジャイアントスコーピオンは十四体全部、『収納』してある。どこに行けば良い?」
もし、バルさんの言うことが本当だとして、十四体ものジャイアントスコーピオンを収納できるだけの魔力量の持ち主? 普通、二体か三体が限界なのに?
「あぁ、後、依頼書のミスということで、報酬が増えるとかはあるのか? そこら辺の説明はなかったから、詳しく聞きたい」
……はっ、仕事しなきゃっ。
「は、はい。えぇっと、ですね……まずは、このギルドの地下に大型の魔物を解体、査定してくれる場所があるので、そこに向かってください。それで、その、十四体のジャイアントスコーピオンが確認されれば、依頼書のミスが明らかになりますので、その際はギルドマスターとの話し合いとなります。報酬は確実に増えると思われます」
「そうか。だが、ギルドマスターとの話し合いか……」
言い淀むバルさんを見て、私はすぐさま時間が厳しいのではないかと推測し、提案をする。
「あ、あの。お時間がないようでしたら、また後日、時間を設けるということも可能です。恐らく、それだけのジャイアントスコーピオンなら、もしギルドに素材を売られる場合、査定に時間がかかるものと思われますし、その金額の支払いが明日以降になる可能性もあります」
「そうか。分かった。様子を見て決めることにする。ありがとう」
「はっ、はいっ。どういたしましてっ」
フード越しで顔は見えないものの、確かに口許が笑みを浮かべるのを見て、私の心は舞い上がる。絶対、絶対、バルさんの心を手に入れてみせますっ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
…………。
はい、結局願望に勝てず、『静かなる激動(二)』を書き上げてしまいました。
記念すべき二百話目でこんなことになるとはっ。
そして、この恋の行方はどうなるんでしょうねぇ。
バルディスは色々と頑張らなきゃならないかもです。
それでは、また!
曰く、『絡もうとした連中をことごとく殺気で昏倒させ、いきなりAランクになった新人が居るぞ』と。
それに対して私は『化け物だなんて失礼なっ。バルさんは私の想い人ですっ』と返したのだが、もしかしたらそれは不味かったのかもしれない。なぜか噂は『とんでもなく強いけど、肉食獣に見初められた可哀想なやつ』になっていました。
えぇ、なぜルビに当たる方が私の名前かと言いますと、はっきりと私を視界に捕らえながら『あいつ、肉食獣だよな』などと失礼なことを言ってきた冒険者が居たからでして……もちろん、その冒険者はボコボコに伸しておきましたよ?
そんなことをやっているうちに、そろそろ他の娘と受付業務の交代の時間という時間になっていました。まだ、交代する相手は来ていないので待たなくてはなりません。いつもなら早く代わってほしいと思うのに、今日に限ってはバルさんが心配で、バルさんが帰ってくるまでここに居たいという気持ちが強くありました。
「はぁ、バルさん……」
恋する乙女のため息に、途端にギルドの男どもがギョッとしたような視線を寄越してきますが、こういう時は無視に限ります。……失礼だとは思いますが。
と、そんな時、扉が開きました。内心では、バルさんだったら良いなぁと思いながら、大した期待もせずにそちらを見ます。すると……そこには、バルさんの姿がありました。
「ん?」
何やら首をかしげたバルさんでしたが、すぐに私の方へと来てくれます。私は、ドキドキとする胸を押さえながら舞い上がる心のままに喜びの声を上げます。
「あっ、バルさん。戻られたんですねっ」
きっと、敵情視察か討伐の準備をして、依頼達成が難しいことが分かったのでしょう。となると、依頼未達成ということで違約金を払わなければなりませんが、バルさんの安全を考えればそれが良いと思えます。私は、バルさんを彼氏にしたいのですから。……ですが、バルさんは私にとって予想外の発言をします。
「あぁ、依頼を達成したから、報告に来た」
「はい?」
……聞き間違いでしょうか? 今、『依頼を達成した』と聞こえたような……?
「ただ、依頼書に数の誤りがあったぞ。ジャイアントスコーピオン三体ではなく、十四体だった」
『三体』ではなく、『十四体』? あの、ジャイアントスコーピオンが?
「ジャイアントスコーピオンは十四体全部、『収納』してある。どこに行けば良い?」
もし、バルさんの言うことが本当だとして、十四体ものジャイアントスコーピオンを収納できるだけの魔力量の持ち主? 普通、二体か三体が限界なのに?
「あぁ、後、依頼書のミスということで、報酬が増えるとかはあるのか? そこら辺の説明はなかったから、詳しく聞きたい」
……はっ、仕事しなきゃっ。
「は、はい。えぇっと、ですね……まずは、このギルドの地下に大型の魔物を解体、査定してくれる場所があるので、そこに向かってください。それで、その、十四体のジャイアントスコーピオンが確認されれば、依頼書のミスが明らかになりますので、その際はギルドマスターとの話し合いとなります。報酬は確実に増えると思われます」
「そうか。だが、ギルドマスターとの話し合いか……」
言い淀むバルさんを見て、私はすぐさま時間が厳しいのではないかと推測し、提案をする。
「あ、あの。お時間がないようでしたら、また後日、時間を設けるということも可能です。恐らく、それだけのジャイアントスコーピオンなら、もしギルドに素材を売られる場合、査定に時間がかかるものと思われますし、その金額の支払いが明日以降になる可能性もあります」
「そうか。分かった。様子を見て決めることにする。ありがとう」
「はっ、はいっ。どういたしましてっ」
フード越しで顔は見えないものの、確かに口許が笑みを浮かべるのを見て、私の心は舞い上がる。絶対、絶対、バルさんの心を手に入れてみせますっ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
…………。
はい、結局願望に勝てず、『静かなる激動(二)』を書き上げてしまいました。
記念すべき二百話目でこんなことになるとはっ。
そして、この恋の行方はどうなるんでしょうねぇ。
バルディスは色々と頑張らなきゃならないかもです。
それでは、また!
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