我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百五話 祈り?

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 『迷子にならないように』と、バルディスに注意を受け、自分でも分かるくらいに挙動不審にはなったものの、何とか誤魔化すことに成功した。そして、我輩は今、そっと、そーっと、教皇庁とやらに忍び込んでいる最中だった。


「ふにゃ……(なんでこんなことに……)」


 耳を垂らして、情けなく鳴くブチとともに。


「にゃっ(静かにっ)」


 そう注意して、我輩、先に進む。今日は、ちゃんと服を着た状態での潜入であり、我輩、ちょっと気分が良いのだ。

 聖騎士とやらの巡回をかわし、見張りが居る場所を避けて通気孔を利用し、どんどん進んでいくと、とうとう広い場所に出る。


「ふにゃあ(もう、帰りたい)」

「にゃ。にゃあ(大丈夫なのだ。ブチは我輩が守るのだ)」


 今日は、ここに来る前に、一応顔を出しておこうと思って集会所に行ってきた。すると、ミケからブチは道を良く知っていて役に立つから連れていくようにと預かってきたのだ。我輩としても迷子を防止できるとあって喜んだのだが、ミケに逆らえないブチはどこか不満げだ。マウマウはいなさそうだから大丈夫だと思うのだが……。


「ふにゃ(ここ、『教皇の間』ってところだ)」

「にゃ? にゃー? (『教皇の間』? ここに教皇が来るのか?)」


 部屋には目立つ大きな像が一つと、椅子が一つ、台が一つあって、それ以外には何もない。しかし、この世界に来る前の白い空間を思い起こさせる香りが微かにあって、懐かしい感じがするのだ。


「ふにゃん(ここは、教皇が祈りを捧げる場所だって聞いたことがある)」

「にゃあ? (祈り?)」

「ふにゃ(何でも、祈ったら神様からの声が聞こえるらしい)」

「にゃー……にゃっ(それは……おもしろ現象なのだなっ)」

「ふにゃ(そうだな)」


 そんな面白いことがあるというのなら、是非ともやってみるべきだろう。


「にゃ? (どうやるのだ?)」


 ワクワクしながらそう尋ねると、ブチは変な顔をする。


「……ふにゃあ? (……お前、祈るつもりか?)」

「にゃっ(そうなのだっ)」


 ワクワク、ワクワク。


「…………ふにゃにゃあ(…………あの椅子に座って、像に向かって頭を垂れて祈るらしい)」

「にゃっ(やってみるのだっ)」


 本当は、ラーミアのために調査を優先させなければならないのだろうが、今の我輩は、それよりも祈りによる不思議現象の方に気を取られていた。

 我輩、椅子にピョンっと飛び乗ると、早速、像に向かって頭を垂れる。そしておもむろにカッと目を見開き気合いを入れる。あまりの気迫にブチがビクッとなったのを横目に、我輩、祈りを開始する。





 ささみ、かつおぶし、マグロ、ささみ、サーモン、ささみ、ハマチ、ささみ、イワシ、ささみ、キャットフード、ささみ、小魚、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ、ささみ…………。



 それは、食欲の発露だった。


《タロさん、ストップ!》


 我輩、そんな声がかかるまで、ひたすらささみを思い浮かべたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タ、タロの祈りの内容が、これしか思い浮かばなかったっ(笑)

タロ以外だったら別の何かだったと思うんですけどね?

ささみをひたすら祈られた神様は堪ったもんじゃないですね。

それでは、また!
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