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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百十一話 闇の会合

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 ミルテナ帝国が進軍を開始したとの報告があった日の夜。マギウスは一人、室内で虚空を見つめ、じっと佇んでいた。
 真っ暗闇の中、動くものは何一つない。静かな……いや、静か過ぎる夜。しかし、そこにふいに変化が表れた。
 足元の闇が大きく膨れ上がり、人の形をとって盛り上がる。そして、一気に闇は霧散し、そこには真っ黒なフードを被った何者かが立っていた。


「状況は?」


 ローブを被った者が現れた瞬間、ひざまづいたマギウスは、頭を垂れてそのしわがれた老婆のような声に応える。


「教皇の命は後わずか。ミルテナ帝国は進軍を開始しております」


 しかし、マギウスの声は、全く抑揚がなく、その目は何も映していないように見えた。


「順調のようで、何より。しかし、オルグは邪魔よの」

「……」


 ローブ姿の人物の言葉に、マギウスは全く反応を返すことなく黙りこくる。いや、そもそも話を聞いているのかすら怪しい。


「オルグを暗殺せよ。期限は、ミルテナ帝国が侵略を開始する前までぞ」

「御意」


 マギウスの言葉にローブ姿の人物は大きくうなづくと、ここに現れた時の逆再生のように真っ黒な闇に包まれ、トプンと地面に吸い込まれるようにして消える。
 そうして、また、静寂が戻る。


「…………あぁ、動かなくては」


 ぼんやりと、やはり抑揚の欠けた声で呟いたマギウスは、目を閉じて念話を開始する。


《ラーミア。今すぐここに来い》

《はい》


 念話で話した相手は、ラーミア。ラーミアは現在、教皇のための薬師としてオルグに信用されつつある。つまりは、オルグを暗殺するのに一番使える駒であるということだ。
 ほどなくして扉がノックされ、ラーミアが入室を果たす。


「ラーミア。これより密命を下す。ミルテナ帝国が侵略を開始する前に、オルグ・ディバンを殺害しろ。手段は問わない」


 抑揚が戻った声で、マギウスはラーミアに密命を下す。本来、操術が発動している限り、このように声に出して命じる必要性はあまりない。ただ、声で命じることで逆らいがたくする効果はあるため、本人の心が忌避感を示す事柄に限ってはこうして命じることが効果的だ。特に、マギウスは自身より強者である相手に対しては必ずこの方法をとっていた。それが、マギウスを今の今まで生かしてきたのだ。


「はい。承りました」


 優雅にお辞儀をするラーミア。それを横目に、マギウスは先程までフード姿の人物が居た場所を見つめる。

 ラーミアが退出し、夜が更けるまで、マギウスはそこをじっと見つめ続けるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


事態が色々と動き出す~。

ちゃんとまとめられるように頑張らないと、気を抜いたらバラバラとこぼれ落ちそうで怖いです。

しっかりプロット通りに進めていこうと思います。

それでは、また!
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