我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百二十四話 神殿跡地にて(四)

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「にゃ(到着なのだ)」

「……タロ。せめてそいつから下りてやれ」

「にゃ? にゃあ(む? 分かったのだ)」


 寝ている青年がどこか苦しそうに顔を歪めているのを見て、俺はサクッと指示を出す。タロが青年の胸から下りた途端、その表情が安らかなものに変わったことから、俺の判断は間違ってはいなかったのだろう。


「にゃ……にゃー? (ところで……これはどういう状況なのだ?)」


 青年から下りたタロは、目敏く黒装束達を見つけて問いかけてくる。


「あぁ、ここに来た途端、こいつらに襲われてな」

「にゃっ!? にゃあ? にゃ?(にゃんとっ!? 怪我は? 大丈夫なのか?)」

「大丈夫だ。どこも怪我してない」


 心配してにゃあにゃあと鳴いてくれるタロにホッコリしつつ、俺は『念話』では分からなかった青年の様子をじっくりと観察する。


「……本当に、一般人みたいだな」

「にゃ。にゃー(当然なのだ。ちゃんと『探索能力』で確認したのだ)」

「『探索能力』……そういえば、その手があったかっ」

「にゃ? (な、何なのだ?)」


 急に声を上げた俺に、タロはタジタジになっていたが、俺はそれどころではない。これで、黒装束達を拷問せずに情報を得られるのだから。


「タロ。こいつらにその『探索能力』を使ってくれ。こいつらの身元と、どういう目的で俺を襲ったのかを知りたい」

「にゃっ(そういうことなら任せるのだっ)」


 そう言うと、タロは可愛らしく『にゃっ(『探索能力』発動なのだっ)』と鳴いて力を使ってくれる。


「……どうだ?」


 しばらく待って、タロに問いかけると、タロは少し沈黙した後に口を開く。


「にゃあ(まず、この者達の身元は、聖騎士なのだ)」

「……聖騎士、だと?」


 一応、教皇庁を調査しているものの、聖騎士に襲われるようなヘマをした覚えはない。
 どういうことだろうかとタロを見つめると、タロは続きを話してくれる。


「にゃにゃあにゃ(この者達は、マギウスに操られて、『ここを通る者を殺して生け贄にするように』との命令を受けていたようなのだ)」


 『聖騎士』『マギウス』『生け贄』という情報に、俺は最悪の事態に気づく。


「……もしかして、マギウスは聖騎士を牛耳っているのか?」


 もしそうなら、マギウスは生け贄を集め放題になっているということだ。邪神の復活を簡単に進められる位置に居るということだ。


「……にゃにゃー(……どうやら、聖騎士長を筆頭に、半分以上の聖騎士が操られているようなのだ)」


 そうして、タロからもたらされた情報は、最悪のものでしかなかった。


「にゃ? (これは、どうすれば良いのだろうか?)」


 困ったように鳴くタロに、俺は頭をフルに回転させる。


「……まずは、タロ。こっちの青年は完全に『操術』を解いてしまえ。そして、この黒装束達は、ラーミアにしたのと同じようにできるか?」


 『操術』にかかった者は、死んでしまえばその術の効果もなくなってしまう。今は、この青年が死んだように見せかけるべきだとの考えから、青年の方は『操術』を完全に解いてもらうことにする。しかし、俺を襲ってきた黒装束達は、死んだことにするわけにはいかない。


「こいつらには、俺達に協力してもらう」


 聖騎士の半数以上が敵だとするなら、こちらも数をそろえなければなるまい。『にゃ(分かったのだ)』とうなずくタロを尻目に、俺は、これからどうするかを考えるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


バルディス視点はこれで終わりです。

そして、昨日はすみませんでした。

公開予約をしたつもりが、ちょっと間違えて公開できてなくて、途中で気がついて慌てました。

慣れないことはするもんじゃないですね。

次は同じことがないように気を付けます。

それでは、また!
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