我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百二十七話 情報入手と帰還

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「俺、初めて……ファースト、キス……」

「何をいじけてますの? ディアム?」


 とんでもない勢いでファーストキスを奪い去ったラーミアは、全く悪びれる様子も、恥ずかしがる様子も見せずに胡乱げな表情で俺を見る。しかし、俺自身の状況はといえば、魂が半分くらい抜けかけている。それほどまでに、ラーミアとの口付けはショックだった。


「それよりも、何か私に用があるのでしょう? 早くシャキッとなさいっ」

「あ、あぁ」


 ただ、さすがに任務でここに来ている以上、ぼんやりしているわけにもいかない。俺は、心の傷を見ないふりして、ラーミアに要件を告げる。


「俺、連絡手段確保、情報収集のため、来た」

「それについては、私も考えていましたわ。不用意に『念話』を続ければ、さすがにマギウスに気づかれる危険性がありますものね」


 ラーミアの言う通り、『念話』というものは盗聴される危険性がある。近くで交わす『念話』であれば、その危険性は薄いが、遠くでやり取りする『念話』は、その話の内容を盗聴しようと思えばできてしまうのだ。
 人間だけであれば、盗聴の技術が拙いことからそこまでの警戒をする必要はないものの、魔族の盗聴の技術は、残念ながら素晴らしいものである。故にマギウスを警戒して極力『念話』を使わないというのは正解なのだ。


「私は、タロに情報のやり取りの仲介を頼もうと思っていましたが、どうでしょうか?」

「仲介、賛成。タロ、隠密、向いてる」


 ラーミアの意見は、俺自身も考えていたことだ。タロの服に手紙を隠して持って行ってもらうか、タロ自身の『収納術』で手紙を持って行ってもらうかは後で考えるとして、タロを使うのは良案だと思われた。


「では、そのようにお願いしますわ」


 その後、ラーミアからミルテナ帝国が動き出しているとの情報を手に入れた俺は、聖騎士の姿が見えないことを確認して撤退する。宿屋に戻れば、バルディスと、もしかしたら出掛けていたタロも居るかもしれないが、すぐにでも情報を渡そうと急ぐ。ついでに、心の傷を癒すため、タロを構い倒したい。そして……。


「……これ、どういう、こと?」


 宿屋に戻った俺の目の前に広がった光景は、黒装束の人間が十人ほどと、見知らぬ青年を一人、床に転がして、何かを話し込んでいるバルディスとタロの姿だった。


「こ、これはだな、ディアム」

「バル? 俺、大人しくするよう、言った」

「い、いや、ちょっとギルドで依頼を受けただけであってだなぁ」

「正座」

「……はい」


 そうして俺は、帰って早々に、バルディスへと説教することとなったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


これにて、ディアム視点は終了です。

可哀想に、ディアムは心の傷を癒す余裕もなく、バルディスに説教せねばならない事態に(笑)

次回は、タロ視点となります。

それでは、また!
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