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第三章 セイクリア教国の歪み
第二百三十一話 オルグとの会談(一)
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黒装束の聖騎士達を解放してから四日が経った。
あの後、ディアムにミルテナ帝国が動き出していることを聞いて、またミルテナ帝国が関与しているのだろうかと疑いを持つに至ったが、正確なところはまだ分からないままだった。それ以外では、サナフ教国から聖騎士団が引き返してきていることが分かったり、黒装束の聖騎士達が案外優秀で、次々に『操術』を解くことができたことくらいだろうか。
そして、今日、我輩達は元黒装束だった聖騎士達に連れられて、教皇庁を訪れていた。それも、賓客として……。
「よく来てくれたな」
そうして、少し疲れた顔で出迎えた男は、『オルグ・ディバン』と名乗った。言わずもがな、あのジアス・ディバンの、教皇の息子の一人だ。
その柔らかい声音にどことなく安心感を抱きつつ、我輩、先にラーミアも来ていたことに内心、驚く。
「本日は斯様な場所にお呼びいただき、身に余る光栄でございます」
そう、バルディスが良く分からない言葉を放つと、オルグはニコリと微笑む。
「そのように畏まる必要はない。私はお前達の働きに感謝しているのだから」
うむ、我輩、しっかり働いたのだ。大勢の人間を、『操術』から救ったのだ。
褒められれば嬉しい我輩は、それでも紳士としてそれを態度に出してはいけないとポーカーフェイスを貫く。
「我々は、奪われた仲間を取り戻すため、動いたまでです」
「そう謙遜することはない。私は……いや、この国は、お前達の行動によって随分と救われている」
「身に余る光栄です」
全く態度を崩す様子のないバルディスを、オルグは苦笑しながら見守っていたが、どうやら本題に入るらしく、すぐにその表情は引き締まったものへと変わる。
「さて、今回呼び出したのは、感謝を伝えたかったのもあるが、お前達の目的を知りたいと思ったからでもある」
「目的、ですか? それならば、聖騎士の方々にお話しておいたはずですが?」
「あぁ、確かに聞いた。お前達は、仲間を取り戻したいと。そして、仲間を操った奴へ報復を行いたいのだと」
ふぅむ? ちゃんと理由は伝わっているはずなのに、何が問題なのであろうか?
何となく話を聞いていると、どうにもその道筋が良く分からない。
我輩が猫だから、考えが及ばないのであろうか?
我輩、猫であるがゆえに、世間知らずではある。世の中の情勢だとかよりも、人間の常識だとか、その感覚、考え方に疎いのだ。それは仕方のないことではあるのだが、話の内容が掴めないこの状況はあまり嬉しくない。待つことしかできないのは、何だか損をしている気分だ。
「その通りでございます」
「そうか? 私は報復などは国に任せれば良いと判断するがな?」
う、む? 報復がいけないのか? しかし、我輩達は魔族がこの件に関わっていることを知られるわけには…………もしかして、我輩達がそれを隠していることに気づいているのか?
そうだとしたら、少々不味いことになる。バルディスからもらった情報では、この国、セイクリア教国は、亜人への迫害が最も苛烈な場所なのだとある。もし、マギウスが魔族であることがバレてしまえば、そのまま魔族への悪感情が大きくなってしまう。バルディスが最も避けたいと思っている国同士の対立の構図ができてしまうかもしれない。
「にゃ……(バルディス……)」
心配になってバルディスの顔を見上げてみれば、バルディスは至って冷静な表情だった。
「恐れながら、我々とその者の間には浅からぬ因縁がございます。そのため、我々は何としてでもこの手で報復を実現させたいのでございます」
にゃんとっ!? それは初耳なのだが!?
まさか、また、我輩だけかやの外だったのかと思い、少なからぬショックをその場で受け、我輩、カチンと固まるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タロ、一生懸命考えてます。
小さな脳味噌をフル回転させて、考えてます。
健気な(時折とんでもない答えを出す)タロを、どうか応援してやってください(笑)
それでは、また!
あの後、ディアムにミルテナ帝国が動き出していることを聞いて、またミルテナ帝国が関与しているのだろうかと疑いを持つに至ったが、正確なところはまだ分からないままだった。それ以外では、サナフ教国から聖騎士団が引き返してきていることが分かったり、黒装束の聖騎士達が案外優秀で、次々に『操術』を解くことができたことくらいだろうか。
そして、今日、我輩達は元黒装束だった聖騎士達に連れられて、教皇庁を訪れていた。それも、賓客として……。
「よく来てくれたな」
そうして、少し疲れた顔で出迎えた男は、『オルグ・ディバン』と名乗った。言わずもがな、あのジアス・ディバンの、教皇の息子の一人だ。
その柔らかい声音にどことなく安心感を抱きつつ、我輩、先にラーミアも来ていたことに内心、驚く。
「本日は斯様な場所にお呼びいただき、身に余る光栄でございます」
そう、バルディスが良く分からない言葉を放つと、オルグはニコリと微笑む。
「そのように畏まる必要はない。私はお前達の働きに感謝しているのだから」
うむ、我輩、しっかり働いたのだ。大勢の人間を、『操術』から救ったのだ。
褒められれば嬉しい我輩は、それでも紳士としてそれを態度に出してはいけないとポーカーフェイスを貫く。
「我々は、奪われた仲間を取り戻すため、動いたまでです」
「そう謙遜することはない。私は……いや、この国は、お前達の行動によって随分と救われている」
「身に余る光栄です」
全く態度を崩す様子のないバルディスを、オルグは苦笑しながら見守っていたが、どうやら本題に入るらしく、すぐにその表情は引き締まったものへと変わる。
「さて、今回呼び出したのは、感謝を伝えたかったのもあるが、お前達の目的を知りたいと思ったからでもある」
「目的、ですか? それならば、聖騎士の方々にお話しておいたはずですが?」
「あぁ、確かに聞いた。お前達は、仲間を取り戻したいと。そして、仲間を操った奴へ報復を行いたいのだと」
ふぅむ? ちゃんと理由は伝わっているはずなのに、何が問題なのであろうか?
何となく話を聞いていると、どうにもその道筋が良く分からない。
我輩が猫だから、考えが及ばないのであろうか?
我輩、猫であるがゆえに、世間知らずではある。世の中の情勢だとかよりも、人間の常識だとか、その感覚、考え方に疎いのだ。それは仕方のないことではあるのだが、話の内容が掴めないこの状況はあまり嬉しくない。待つことしかできないのは、何だか損をしている気分だ。
「その通りでございます」
「そうか? 私は報復などは国に任せれば良いと判断するがな?」
う、む? 報復がいけないのか? しかし、我輩達は魔族がこの件に関わっていることを知られるわけには…………もしかして、我輩達がそれを隠していることに気づいているのか?
そうだとしたら、少々不味いことになる。バルディスからもらった情報では、この国、セイクリア教国は、亜人への迫害が最も苛烈な場所なのだとある。もし、マギウスが魔族であることがバレてしまえば、そのまま魔族への悪感情が大きくなってしまう。バルディスが最も避けたいと思っている国同士の対立の構図ができてしまうかもしれない。
「にゃ……(バルディス……)」
心配になってバルディスの顔を見上げてみれば、バルディスは至って冷静な表情だった。
「恐れながら、我々とその者の間には浅からぬ因縁がございます。そのため、我々は何としてでもこの手で報復を実現させたいのでございます」
にゃんとっ!? それは初耳なのだが!?
まさか、また、我輩だけかやの外だったのかと思い、少なからぬショックをその場で受け、我輩、カチンと固まるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タロ、一生懸命考えてます。
小さな脳味噌をフル回転させて、考えてます。
健気な(時折とんでもない答えを出す)タロを、どうか応援してやってください(笑)
それでは、また!
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