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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百三十二話 オルグとの会談(二)

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「因縁、か……その内容は?」

「申し訳ありませんが、口にするのは憚られるものですので、ご容赦ください」


 興味深そうに目を光らせるオルグを、バルディスは軽く退ける。両者の顔はにこやかなものではあったものの、その目は一切笑ってはおらず、見るものが見れば恐怖すら覚えただろう光景に、我輩はただただ己の信頼のなさを嘆く。


「にゃあ(我輩、聞いてないのだ)」

《そりゃあ、嘘だからな》

「にゃ……にゃー? (ふむ、そうか……嘘?)」


 念話でバルディスが答えてくれたことに遅れて気づきながら、我輩、その内容に疑問を抱く。


《……にゃー? (……どこからどこまでなのだ?)》

《後でな》


 今は説明してくれる気はないようなので、我輩、とりあえず引き下がる。因縁云々が嘘であるならば、我輩、隠し事をされていたわけではなかったのだと安心できるが、まだ何も分からない今、下手に邪魔することはないだろう。


「……まぁ、良い。一先ずはそれで納得しておこう」


 その目はとても納得した者のそれではなかったが、オルグはそう告げると一呼吸置いて再び口を開く。


「ところで、バル、と言ったか? お前は我が聖騎士に属するつもりはないか?」


 む? バルディスが聖騎士? 魔王であるバルディスが? ……イメージできないのだ。


 オルグの提案にそう思ったのは我輩だけではなかったらしく、ディアムはそっとバルディスから視線を外していた。


 うむ、やはり、バルディスに聖騎士は似合わないのだ。


「申し訳ありませんが、我々は旅を続ける身です。一つの国に縛られるのは良しとしませんゆえ、お断りさせていただきます」

「そうか……ならば、聖騎士達を操っている者を捕縛するためなら、力を貸してもらえるか?」

「そちらに関しましては、微力ながら、お手伝いさせていただく所存でございます」


 うむ、我輩も頑張るのだっ。


 バルディスの言葉に内心同意を示しながら、我輩、どこからかバタバタとした足音が近づいていることに気づく。


 何かあったのだろうか?


 そして、その疑問は直後、扉が開かれたことによって明らかになる。


「報告っ! 報告いたしますっ! ミルテナ帝国が国境まで辿り着きました! 未だ開戦とはいかないものの、それも時間の問題とのことですっ!」


 息を切らせながら報告した聖騎士の言葉に、オルグもバルディス達も息を呑むのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ようやく、ミルテナ帝国が動き出します。

セイクリア教国の危機ですっ。

まだ聖騎士長が操られている中での現状。

教皇も臥せったままの今。

頼りになるのは……タロ?

タロには今後、主人公らしく活躍してもらうことにしますね。

そして、そろそろプロットが詰まりかけです。

明日は更新できるでしょうが、その次は、また休みを入れたいと思います。

それでは、また!
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