ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ

文字の大きさ
8 / 16

08 アデリーヌ、きれる

 大きな声で拒絶の言葉を口にしたら、私の頬に触れていたロランの指が、ピクッと動いた。
 もしかしてロランの心に、少しは響いている?
 普段はどんなに拒絶しても全然通じないから、手応えを感じられてうれしい。
 このまま畳み掛けるしかない。
 なにか、なんでもいいからロランの心に突き刺さって、彼の目を覚まさせる言葉をぶつけなくては!

「監禁なんてする人、私、大嫌い」
「……!?」

 ロランの目を見つめて、きっぱりと言う。
 それからあとはひたすらに淡々と、彼の『ないわ』という部分を上げ連ねていった。

「ちょっと顔がいいからって、ちょっと王子様だからって、何しても許されると思っているところが最低よ。既成事実? 何言ってるの。そもそも、こんな場所で?」

「い、いや違うよ!? まさかここで最後までしようなんて――……」

「最後とか言わないでください」

「あ、はい。ごめんなさい」

「あなただって、貴族の娘が結婚前にそんな行為を行ったら、どんな扱いを受けるかぐらい知ってるはずよね。なのに平然と求めてくる。それって結局、あなたは自分の欲で頭がいっぱいで、私の人生なんてどうでもいいってことなのよ」

「違うよ、アデリーヌ! 僕は君の人生を、バラ色の幸せで満たしたいんだ!」

「そう思い込んでいるだけよ。あなたは私を愛してなんかいない。大切にもしていない。恋してるつもりになって、そのことに酔うのはもうやめて。私を巻き込まないで。迷惑でしかないから」

「……っ」

 慌てふためいて、言い返してきていたロランだったけれど、ようやく黙り込んでくれた。
 呆然とした顔で、瞬きを繰り返している彼は無表情で、何を考えているかわかりづらい。
 でも、まあきっと、落ち込んでいるのだろう。
 大切に育てられたであろう王子様。
 他者から全否定されることになんて慣れていないのかも。

 正直私だってこんなふうに、誰かを容赦なく糾弾したことなどない。
 心の奥がじくじく痛む。
 傷、つけたよね……。
 ロランは変態監禁魔だけれど、それでもさすがに言い過ぎたかな……。
 ……いやいや、だめだめ。
 同情してはだめ。
 この身勝手な変態に、つけいる隙を与えることになりかねない。

「ロラン、私が言いたいことは伝わったでしょう? わかったら、いますぐ解放して」

 彼の決断を促すために、声をかける。
 ロランは自分の胸に手を当ててから、悩ましげなため息を吐いた。

「ハァ……。心に響きすぎて、言葉がすぐには出てこなかったよ……」

 あれ……!?
 なんでこの男、頬を赤く染めているの!?
 予想外の反応が返ってきて、ゾッとする。
 なんだか雲行きが怪しい。

「心臓がすごくドキドキしている。君は恋じゃないというけれど、恋じゃなかったら、どうしてこんなふうになるのかな?」

「病気じゃない!?」

 思わずやけくその返答をしてしまった。
 ロランはふふっと笑って、にっこりと微笑みを浮かべた。

「そうだね。病気だ。恋の病。永遠に治ることのない不治の病を、君が僕にかけたんだ」

 こっちは胸を痛めながら、必死の思いで文句を言ったというのに。
 この反応……。
 絶望しかない。
 なんなの……。
 なんでこの男、こんなに打たれ強いの……。

「さっきの私の話、ちゃんと理解している……? 右から左に聞き流していたんでしょう……」

「まさか。全部しっかりちゃんと聞いていたよ。冷静に僕を糾弾する君、すごく素敵だった。淡々と利詰めにしてくるところなんて、とても色っぽかった」

「……」

「でも僕が相手だからいいけれど、この状況で監禁してる犯人を責めるのは、あんまり良くないよ。逆上してひどいことされたらどうするの?」

「……」

「アデリーヌ?」

黙り込んだ私の顔を、ロランが覗き込んでくる。

「僕と結婚する意思が固まった?」

「いえ、しません……」

「そっか。それじゃあ僕とアデリーヌで根競べだね。この部屋でふたりきりでいると、本当に良からぬことをしでかしそうだから、僕は外にいるね。気が変わったらいつでも呼んでくれ」

 ひらひらと手を振って、ロランが部屋の外に姿を消す。
 万事休す……。
 どうしよう……。
 私、このいかれた男に監禁されたままなの……?
感想 1

あなたにおすすめの小説

最高魔導師の重すぎる愛の結末

甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。 いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。 呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。 このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。 銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。 ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。 でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする…… その感は残念ならが当たることになる。 何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…

甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。 身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。 だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!? 利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。 周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。  ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!