婚約者に横領と不貞を指摘したら婚約破棄されたけど、元執事に愛されて会計事務所を開きます!

津田ミト

文字の大きさ
4 / 8

ウィリアムとの生活

しおりを挟む


婚約破棄されて、領地から追い出されることになった私は、隣のセントリー領へ向かう乗り合い馬車を待つベンチで深くため息をつきました。


婚約破棄されて、領地から追い出されることになった私は、隣のセントリー領へ向かう乗り合い馬車を待つベンチで深くため息をつきました。

私がこの地を去るときの、私を陥れたアーサー様とローズの満足そうな顔を思い出していたのです。

いつの間にここまで嫌われていたんだろう…。

その時、執事のウィリアムが「セシリア様、お待ちください」と言って私を追いかけてきたのが見えました。

普段は整った執事服姿だが、今日はラフなズボンとシャツ姿です。

「私も退職してきました。セシリア様と一緒にいさせてもらえませんか。きっと自分は役に立ちます。」

私は驚いてウィリアムに目を向けました。

彼はアーサー様の横領を暴くため一緒に戦った相棒です。
心底信頼できる彼が一緒に来てくれれば、どんなに心強いかわかりません。

でも、真面目なウィリアムのことです。この事態に責任を感じてそう言っているのかもしれません。

彼のように有能な執事ならば、マクマレー家での仕事を辞めても引く手数多なはず。

私はウィリアムの負担にならないに「プロポーズのようね」と、軽口を叩きました。

するとウィリアムは、赤くなりながら「そう思ってくれてかまいません。」とうなずいたのです。

「横領を暴くために共に戦った時間は厳しくも充実していました。だんだんとセシリア様の優しさや強さに心惹かれていきました。はじめは戦友のように思っていましたが、今はあなたを守りたいと思っています。共に人生を歩んでもらえないでしょうか」

私もつられて頬に熱が集まっていくのがわかりました。

「馬車の待合所で言う言葉じゃないわ。でも、嬉しい」

ウィリアムと一緒なら、きっと大丈夫。私たちは、セントレー領へ向かう馬車に乗り込みました。


***********


その後は間をおかず私たちは結婚し、彼と共に平民として暮らすことになりました。私の安全も考えてのことです。

私は、王都の学院を首席で卒業した経歴を活かし、下級貴族の家庭教師として働くことになりました。

ウィリアムも同様に貴族家の使用人としてのお仕事を見つけていました。

雇われたばかりのウィリアムはまだ下働きのような扱いで、元は執事として大きな仕事を任されていた彼の能力が発揮できていないことに、私は申し訳なさを感じていたのです。

「元は貴族家の執事だったのだから、下働きなんて退屈でしょう?」

ウィリアムは笑って答えました。

「セシリア様と暮らせるのだから何の問題もありませんよ。」



庶民としての暮らしは新鮮で、私自身が日々成長しているのを実感でき、充実していました。

最初、子爵令嬢として育った私は、家事はまったくと言っていいほどできませんでした。

しかし、ウィリアムは何でもできる多才な人物で、彼が根気強く教えてくれたことで少しずつ家事を覚えていきました。

「セシリア様、こう切るのですよ。そうすれば早くできるし、美味しく仕上がりますから。」

私は緊張しながらも、彼の指示に従いながら包丁を握ってみました。

最初はぎこちなかったのですが、手慣れてくると楽しいもので、自分でも驚くほど美味しく料理が仕上がりました。

「すごいです、セシリア様。もう少しで、私よりも上手くなりますね。」

ウィリアムの言葉はお世辞に違いありませんが、私は嬉しくなりました。

「ウィリアム、ありがとう。あなたがいなかったら、こんなに家事を上手にできるようにならなかったわ。」

「そのようなことはありませんよ。あなたはもともと、真面目で誠実な心の持ち主です。私が教えたのは、技術的なことにすぎません。あとは、あなた自身の努力の成果ですよ。」

そう言うと、ウィリアムは私をぎゅっと抱きしめました。

ウィリアムはまだ私への敬語が抜けきれないようでしたが、スキンシップは大胆なのです。

今までの生活にはなかった幸福感が、私を包み込んでいました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~

しましまにゃんこ
恋愛
年若い辺境伯であるアレクシスは、大嫌いな第三王子ダマスから、自分の代わりに婚約破棄したセシルと新たに婚約を結ぶように頼まれる。実はセシルはアレクシスが長年恋焦がれていた令嬢で。アレクシスは突然のことにとまどいつつも、この機会を逃してたまるかとセシルとの婚約を引き受けることに。 とんとん拍子に話はまとまり、二人はロイター辺境で甘く穏やかな日々を過ごす。少しずつ距離は縮まるものの、時折どこか悲し気な表情を見せるセシルの様子が気になるアレクシス。 「セシルは絶対に俺が幸せにしてみせる!」 だがそんなある日、ダマスからセシルに王都に戻るようにと伝令が来て。セシルは一人王都へ旅立ってしまうのだった。 追いかけるアレクシスと頑なな態度を崩さないセシル。二人の恋の行方は? すれ違いからの溺愛ハッピーエンドストーリーです。 小説家になろう、他サイトでも掲載しています。 麗しすぎるイラストは汐の音様からいただきました!

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。

ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。 ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

処理中です...