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閑話 アーサー・マクマレー
しおりを挟む私はアーサー・マクマレー。
父が病で療養に入ると、私は婚約者のセシリアと共に領主代行としての職責を果たし、領地を良くするために奮闘していた。
セシリアは優秀な才女であり、私にとっては戦友のような存在だった。
だが、妹のローズが現れてから、全てが変わった。
彼女は愛らしく、何よりも素晴らしい笑顔を持っていた。
私は彼女の瞳に見とれてしまうほどだった。
ローズは私にささやいた。
「お姉さまは勉強や領地のことばかりで面白みがないわね。」
「こんな素敵な婚約者のアーサー様がいるのに女を捨てている。」
「アーサー様はただそこにいるだけで良いの。お姉さまの数倍は優秀だわ。」
私はローズの言葉に心を奪われてしまった。
セシリアが私を理解してくれないのに対して、ローズは私を高く評価してくれているのが嬉しかったのだ。
しかし、その感情は私を危険な方向に向かわせることになった。
私はローズと共に視察の名目で遊び歩くようになった。当然お金もかかる。
領地の金にも手をつけたが、それでも足りなかった。
さらにはガラの良くない遊び仲間を集めて、存在しない事業の名目で金を集めるようになった。
私は金策に走っていたが、その行動はセシリアの疑念を抱かせるようになってしまった。
セシリアは私たちの財務状況を調べ始め、ウィリアムと一緒に帳簿や金銭の流れを調査していた。
その頃には、私はセシリアを疎ましく思うようになっていた。
「セシリアを追い出し、ローズと婚約したい」と伝えると、ローズは可愛らしい笑みを浮かべ、私を抱きしめた。
私の父は私に甘く、セシリアが何をしようが、周囲の人々を味方につければ、セシリアは追い出せる。私たちはセシリアを追い出すことに成功した。
しかし、問題はそれから始まった。
半年立たないうちに、私たちの生活は激変した。
ローズは結婚前に妊娠してしまい、私たちは急いで結婚式を挙げることになった。
しかし、それだけではなかった。
私の悪い友人たちを領主補佐官に任命したため、治安が悪化し、領主邸にまで不満の声が届くようになった。
また、私たちの借金はどんどん膨らみ、返済が困難になっていった。
さらに、執事のウィリアムの急な退職のせいで、屋敷の運営がうまく回らなくなってしまった。
使用人たちも、未払いの給料に我慢できなくなり、次々と屋敷を去っていった。
それでもまだ、私にはいくばくか残してあった資金があった。
「これを元手に成功して、帰ってくるのが皆のためである。」
そう自分に言い聞かせ、私は誰にも言うことなく闇夜に紛れて王都を目指した。
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