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第六章 エルフ王国編
第258話 披露宴
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あれよあれよと時間は過ぎて。
陽が落ちきった夜。
きっと21時くらい。
結婚式の披露宴は、まだ続いていた。
場所をエルフィニア大聖堂から、エリシフォン家の鳳凰の間に移して、飲めや歌えやの大宴会。
高そうな酒やら食べ物が大盤振る舞いされ、飲み食いするVIPたちをエリシフォン家のメイドさん達がもてなしている。
キリキリとそつなく働くメイドさん達に、近所の吸血鬼姉妹にこれだよこれと言いたくなる。
披露宴は今もなお、大いに盛り上がっていた。
披露宴における新郎新婦の役割は、飲み食いする事でもウェイウェイする事でもない。
客をもてなす立場なのだ。
そんなわけで、ウェディングルーナはよそ行き笑顔で今も客の対応中だ。
ルーナは、本日三度目のお色直しでブルーのドレスを纏い、金髪をアップに纏めて、メイクアップもバッチリで美人度マシマシだった。
エルフ王国のVIPたちに囲まれながら、上品な笑顔を浮かべる様は、まさに若奥様。
なんというか。
NTRしてやりたくなる程の見事な奥様っぷりだった。
NTRっていうか、私の嫁なんですけどね(自慢)。
というかですよ。
いや、新郎であるおめえは何してんだよって話ですよね。
自分の嫁にエロい目を向けてる場合じゃねえだろ、と。
いえね、私も最初はルーナと一緒に客をもてなしに行こうとしたんです、ええ。
でも。
「いえ、閣下は結構です。閣下がアレなのはわかっていますから、その辺でじっとしててください!」
「ア、アレなコウも大好きだよ?」
エレインとルーナに止められてしまったのだ。
つうかアレってなんだよ。
確かにそういうの苦手だけど。
さっきなんだかんだでエルダーエルフ様に頭突きかましたのが悪かったのだろうか。
ちなみに、俺をアレ呼ばわりしたエレインはルーナの後ろに控えてサポート中である。
私はアサギリ家筆頭家臣ですから、とか自慢げに言っていた。
ドレスアップして、メイクアップしている結婚式仕様のエレインはエロかった(褒め言葉)。
ルーナと同じく金髪をアップにして、主役は私だと言わんばかりの豪華なアイボリーのドレス。
キリッとした細眼鏡には、できる女臭をまんべんなく漂わせている。
結婚式の披露宴に白っぽいドレスを着てくるのはどうかと思うのだが、膝上くらいのセミフォーマルな感じのスカートなので、一応自重している感は出ている。
たまに意味深な期待を込めた目で俺をチラチラ見てくるのだが。
まあ、いつかエレインともちゃんと結婚してやらなきゃなと思う。
そんなわけで、ルーナとエレインが頑張って来客対応をする中、暇な俺はというと。
「……うう、ルーナちゃん。小さい頃は、大きくなったらパパのお嫁さんになるって言ってたのに……うう、ぐふ、うう、ぶすん……」
隣でよよよと泣き崩れる面倒くさいオヤジの相手をしていた。
いや、ぶすんて。
「おい、聞いてんのか、アサギリ? ルーナちゃんはな、本当は私と、わ、私と……うぐっ、ひっく、かわいかったなあ、あの頃のルーナちゃんは……って、聞いてんのか、おい? む、杯が空いているではないか、よし、飲め」
泣き上戸で、絡み酒、しかも酒を飲ませまくるっていう。
面倒くさい酔っぱらい数え役満状態のパパの相手をずっとしていた。
すでに数時間くらい。
一言でいうと、地獄である。
「……あ、どうも。お義父さんもどうぞ」
「ん、悪いな……って誰がお義父さんか!?」
とりあえず、返杯して頭を叩かれる。
全然テッパンじゃないのに、この下りをすでに10回以上やっている。
一言でいうと、煉獄である。
これだから結婚式は……!?
「うう、ルーナちゃん……」
ごくごくーと酒の注がれたゴブレットを一気に飲み干すルーナパパ。
その顔は真っ赤で、髪やヒゲもヨレヨレ、服はこぼした酒のせいでビショビショ。
午前三時の新橋にいそうなザ・酔っ払いだった。
ちなみに、俺もそんなに酒に強くないので、俺達の酒は水に変えてもらっている。
へべれけなパパにばれないように、こっそりメイドさんに変えてもらったのだ。
「ぐ、ぐふう、貴様にわかるか!? 娘を盗られた父親の気持ちが!? わかるのか!? 私の苦しみが!? おい、聞いてんのかアサギリ!?」
水しか飲んでいないのに、一向に酔いの醒めないパパの不思議。
面倒くさい事この上ないのだが。
「ルーナさんは、私が幸せにしますので……」
娘どころか、嫁まで奪った身としては大人しく相手をするしかなかった。
「本当だな!? その言葉、忘れんからな!? って、これじゃお前を認めたみたいではないか!? このチンパンが!!!!」
そして頭を叩かれる。
ステータスに差がありすぎる事や、痛覚耐性のおかげで、痛くはないのだが。
ウザいことこの上なかった。
いや、しかしルーナとアーニャの代償と思えば……。
「ルーナちゃんはな、昔はよくパパ大好きってなあ、うう」
今のルーナからは考えられないセリフだった。
一体、何歳くらいのルーナが言っていたんだろう。
「2歳半くらいかな」
ギリギリの初期状態だった。
「そんな事を言うくらいなら死んだほうがマシだ!!」
しかも、やってきたルーナに命をかけて否定されるっていう。
「コウ、ごめんね、一人にさせちゃって。しかもこんなのの相手をさせちゃって」
「こんなの!?」
俺とパパの間に割り込むように座ってくるルーナ。
ふんわりと香るのは、いつもと違って化粧の匂い。
ムギュッと押し付けられる抱き慣れた肢体。
場末の飲み屋に舞い降りた天使のようだった。
こんなの呼ばわりされたパパはショックを受けていたが。
「もう客の相手は終わったのか?」
「うん! みんなおめでとーって言ってくれてたよ」
「アサギリ家としての顔つなぎもバッチリです」
後ろに立ったエレインがポンと肩に触れてくる。
ルーナもエレインも化粧がバッチリで美人度が爆発している。
一気に場が華やいだ感じになった。
さっきまでオッサン同士でしみったれた酒(水)を飲んでいたのが嘘のようだ。
こうなるとオッサンたちは女の子を必死に歓迎しようとするもので。
「ル、ルーナちゃん! お疲れ様! 疲れただろう、何か食べるものを……」
パパが必死にルーナを持て成そうとしているのが痛いほどわかって悲しくなった。
「やだ、お父様近い。やめて。離れて。どっか行って」
「ええ!?」
ルーナは目は、こっそり捨てられた家庭ゴミを嫌そうに見つめるコンビニ店員のそれだった。
凍てつきすぎて怖い。
傍から見てる俺ですら、背筋が寒くなるような目つきだった。
少なくとも結婚式当日の娘が父親に向ける目ではない。
「あ、あはは。パパちょっとお酒飲みすぎちゃったかな? ご、ごめんね? きれいなドレスに臭いが移っちゃうもんね?」
必死にルーナから距離を取ろうとするパパは、哀れだった。
「そう、臭い。お父様、臭い。生き方が臭い」
「生き方!?」
しかも娘は問答無用でトドメを刺しに行くっていう。
どうやったら娘をここまで反抗期に育てられるのか。
父親になろうとしている身としては、胃が痛くなるのでやめて欲しいのだが。
「アサギリくん!! こんな男に近寄っちゃダメだ!! 悪いクセが移っちゃうじゃないか!!」
そんな事を言いながらやってきたのは、同じくドレスアップをしたアーニャ。
新婦の母らしくモスグリーンの落ち着いたドレスを身にまとったアーニャが、ルーナと反対側の俺の隣に座ってくる。
ムニュッと押し付けられるのは、昨日ウェディングドレスを着せて楽しんだばかりの肉付きの良い肢体。
正直に言って、股間がオッキした。
ちなみに、俺達が座っているのは三人がけのソファーだった。
トーチャン、ルーナ、俺で座っていたソファーにカーチャンが加わったという事は。
「ああ!?」
哀れなトーチャンが押し出されて、床に転げ落ちていた。
哀れすぎて、見ているのが辛い。
「あら、アナタ。そんな所で床を舐めてどうしたの? そろそろいつもの時間ではなくて? 不埒なお店に出かけてらしたら?」
トーチャンを見つめるアーニャの目は、灰皿を撤去したというのに相変わらず吸い殻が捨てられているのを発見したコンビニ店員の目だった。
こっちも凍てつきすぎて怖い。
「お父様サイテー」
しかもそこに、自動ドアの前に放置されたペットの糞を発見したコンビニ店員の目をしたルーナが追い打ちをかける。
え、なんなのこの家族。
家庭崩壊しすぎてて怖いんだけど。
「る、ルーナちゃん!? ナーシャさんも! ちょっとアサギリに近づきすぎじゃないかな?」
地べたを這ったパパは、悔しそうにそんなセリフを吐いた。
――むにゅ。
――もにゅ。
近づきすぎっていうか、俺は両手でルーナとアーニャは抱き寄せていた。
両手に美人母娘とか。
我が人生に一片の悔い無し。
「「夫(義息)なんだから当然じゃないか!」――ってなんでお母様までギュッとしているんだ!?」
ルーナとアーニャの声がハモる。
ルーナが面倒くさいことに気づいたが、誤差みたいなもんである。
「お、夫はともかく義息ってそういうものじゃないんじゃ……?」
「お黙りなさい! アサギリくんは私がしっかりと傍についています。あなたのようにエッチなお店に通うダメな夫にならないように!!」
気の毒なくらいオドオドと突っ込んだトーチャンを、カーチャンが一瞬で黙らせた。
娘と嫁に嫌われ過ぎて、少しトーチャンが可哀想になるのだが。
ふと素朴な疑問が湧いてきた。
抱き寄せたアーニャの横顔を眺める。
艷やかなプラチナブロンド。
すっと通った鼻梁。
滑らかな頬に、淡く紅の引かれた艶めかしい唇。
俺にムニュッと押し付けられたのは、爆乳。
バインと突き出たエロい尻を撫でながら、思うのだ。
え、完璧な女じゃん、と。
こんな嫁がいて?
風俗に足繁く通うとか。
床に這いつくばる義父を見て思うのだ。
こいつは頭に何か沸いてんのかと。
「こんなに素敵な奥さんがいるのに、なんで浮気するんすか?」
なので素直に聞いてみた。
「ちょっと閣下……?」
後ろに立つエレインが冷や汗をかきながらジト目を向けてくる。
なんか文句あんのか。
「す、素敵って、もうアサギリくんっ! わ、私も大好きだよ! えへへ」
「お母様何言ってんの!?」
アーニャの反応は娘と同じで、可愛いなおい。
「ふっ、青いなアサギリよ」
俺の素朴な疑問に、パパがスクっと立ち上がる。
「嫁がどんなにいい女でも、他の女は別腹。だっていっぱいエッチしたいもん。……それが男ってものだろう?」
パパは今日イチの決め顔だった。
もん、じゃねえけど。
「「「…………」」」
ルーナ、アーニャ、エレインは寒イボを立ててドン引きしていた。
しかし、俺は素直に思った。
「かっこいい」
「「「ええええ!?」」」
アレな義父だけど、良いことを言う。
尊敬に値する義父かもしれない。
もしかしたら、パパとはいい関係が築けるかも……。
「ふふ」「はは」
そんな思いを胸に、俺とパパは小さく笑い合う。
それは紛れもなく義父と義息の笑みだった、
「あ、あんなのかっこいいとか言っちゃダメじゃないか!!」「私の今の旦那様のアサギリくんはあんな風になっちゃダメだ!!」「他の女ばっかり見てないで、閣下はもっと私を見るべきなんです!!」
三人の女には全否定されたが。
そんな時だった。
「ふう、全くやかましいのう、ここは」
ドカッと向かいのソファーに美脚を投げ出して座る美女。
「やっと陛下や重臣どもから開放されたわ」
シュボッと魔法でキセルに火をつけて、艶美な唇に咥える。
「さて婿殿。家族水入らずの話しをしようか?」
嫣然と笑うエスメラルダさんが、美脚を色気たっぷりに組み直したのだった。
陽が落ちきった夜。
きっと21時くらい。
結婚式の披露宴は、まだ続いていた。
場所をエルフィニア大聖堂から、エリシフォン家の鳳凰の間に移して、飲めや歌えやの大宴会。
高そうな酒やら食べ物が大盤振る舞いされ、飲み食いするVIPたちをエリシフォン家のメイドさん達がもてなしている。
キリキリとそつなく働くメイドさん達に、近所の吸血鬼姉妹にこれだよこれと言いたくなる。
披露宴は今もなお、大いに盛り上がっていた。
披露宴における新郎新婦の役割は、飲み食いする事でもウェイウェイする事でもない。
客をもてなす立場なのだ。
そんなわけで、ウェディングルーナはよそ行き笑顔で今も客の対応中だ。
ルーナは、本日三度目のお色直しでブルーのドレスを纏い、金髪をアップに纏めて、メイクアップもバッチリで美人度マシマシだった。
エルフ王国のVIPたちに囲まれながら、上品な笑顔を浮かべる様は、まさに若奥様。
なんというか。
NTRしてやりたくなる程の見事な奥様っぷりだった。
NTRっていうか、私の嫁なんですけどね(自慢)。
というかですよ。
いや、新郎であるおめえは何してんだよって話ですよね。
自分の嫁にエロい目を向けてる場合じゃねえだろ、と。
いえね、私も最初はルーナと一緒に客をもてなしに行こうとしたんです、ええ。
でも。
「いえ、閣下は結構です。閣下がアレなのはわかっていますから、その辺でじっとしててください!」
「ア、アレなコウも大好きだよ?」
エレインとルーナに止められてしまったのだ。
つうかアレってなんだよ。
確かにそういうの苦手だけど。
さっきなんだかんだでエルダーエルフ様に頭突きかましたのが悪かったのだろうか。
ちなみに、俺をアレ呼ばわりしたエレインはルーナの後ろに控えてサポート中である。
私はアサギリ家筆頭家臣ですから、とか自慢げに言っていた。
ドレスアップして、メイクアップしている結婚式仕様のエレインはエロかった(褒め言葉)。
ルーナと同じく金髪をアップにして、主役は私だと言わんばかりの豪華なアイボリーのドレス。
キリッとした細眼鏡には、できる女臭をまんべんなく漂わせている。
結婚式の披露宴に白っぽいドレスを着てくるのはどうかと思うのだが、膝上くらいのセミフォーマルな感じのスカートなので、一応自重している感は出ている。
たまに意味深な期待を込めた目で俺をチラチラ見てくるのだが。
まあ、いつかエレインともちゃんと結婚してやらなきゃなと思う。
そんなわけで、ルーナとエレインが頑張って来客対応をする中、暇な俺はというと。
「……うう、ルーナちゃん。小さい頃は、大きくなったらパパのお嫁さんになるって言ってたのに……うう、ぐふ、うう、ぶすん……」
隣でよよよと泣き崩れる面倒くさいオヤジの相手をしていた。
いや、ぶすんて。
「おい、聞いてんのか、アサギリ? ルーナちゃんはな、本当は私と、わ、私と……うぐっ、ひっく、かわいかったなあ、あの頃のルーナちゃんは……って、聞いてんのか、おい? む、杯が空いているではないか、よし、飲め」
泣き上戸で、絡み酒、しかも酒を飲ませまくるっていう。
面倒くさい酔っぱらい数え役満状態のパパの相手をずっとしていた。
すでに数時間くらい。
一言でいうと、地獄である。
「……あ、どうも。お義父さんもどうぞ」
「ん、悪いな……って誰がお義父さんか!?」
とりあえず、返杯して頭を叩かれる。
全然テッパンじゃないのに、この下りをすでに10回以上やっている。
一言でいうと、煉獄である。
これだから結婚式は……!?
「うう、ルーナちゃん……」
ごくごくーと酒の注がれたゴブレットを一気に飲み干すルーナパパ。
その顔は真っ赤で、髪やヒゲもヨレヨレ、服はこぼした酒のせいでビショビショ。
午前三時の新橋にいそうなザ・酔っ払いだった。
ちなみに、俺もそんなに酒に強くないので、俺達の酒は水に変えてもらっている。
へべれけなパパにばれないように、こっそりメイドさんに変えてもらったのだ。
「ぐ、ぐふう、貴様にわかるか!? 娘を盗られた父親の気持ちが!? わかるのか!? 私の苦しみが!? おい、聞いてんのかアサギリ!?」
水しか飲んでいないのに、一向に酔いの醒めないパパの不思議。
面倒くさい事この上ないのだが。
「ルーナさんは、私が幸せにしますので……」
娘どころか、嫁まで奪った身としては大人しく相手をするしかなかった。
「本当だな!? その言葉、忘れんからな!? って、これじゃお前を認めたみたいではないか!? このチンパンが!!!!」
そして頭を叩かれる。
ステータスに差がありすぎる事や、痛覚耐性のおかげで、痛くはないのだが。
ウザいことこの上なかった。
いや、しかしルーナとアーニャの代償と思えば……。
「ルーナちゃんはな、昔はよくパパ大好きってなあ、うう」
今のルーナからは考えられないセリフだった。
一体、何歳くらいのルーナが言っていたんだろう。
「2歳半くらいかな」
ギリギリの初期状態だった。
「そんな事を言うくらいなら死んだほうがマシだ!!」
しかも、やってきたルーナに命をかけて否定されるっていう。
「コウ、ごめんね、一人にさせちゃって。しかもこんなのの相手をさせちゃって」
「こんなの!?」
俺とパパの間に割り込むように座ってくるルーナ。
ふんわりと香るのは、いつもと違って化粧の匂い。
ムギュッと押し付けられる抱き慣れた肢体。
場末の飲み屋に舞い降りた天使のようだった。
こんなの呼ばわりされたパパはショックを受けていたが。
「もう客の相手は終わったのか?」
「うん! みんなおめでとーって言ってくれてたよ」
「アサギリ家としての顔つなぎもバッチリです」
後ろに立ったエレインがポンと肩に触れてくる。
ルーナもエレインも化粧がバッチリで美人度が爆発している。
一気に場が華やいだ感じになった。
さっきまでオッサン同士でしみったれた酒(水)を飲んでいたのが嘘のようだ。
こうなるとオッサンたちは女の子を必死に歓迎しようとするもので。
「ル、ルーナちゃん! お疲れ様! 疲れただろう、何か食べるものを……」
パパが必死にルーナを持て成そうとしているのが痛いほどわかって悲しくなった。
「やだ、お父様近い。やめて。離れて。どっか行って」
「ええ!?」
ルーナは目は、こっそり捨てられた家庭ゴミを嫌そうに見つめるコンビニ店員のそれだった。
凍てつきすぎて怖い。
傍から見てる俺ですら、背筋が寒くなるような目つきだった。
少なくとも結婚式当日の娘が父親に向ける目ではない。
「あ、あはは。パパちょっとお酒飲みすぎちゃったかな? ご、ごめんね? きれいなドレスに臭いが移っちゃうもんね?」
必死にルーナから距離を取ろうとするパパは、哀れだった。
「そう、臭い。お父様、臭い。生き方が臭い」
「生き方!?」
しかも娘は問答無用でトドメを刺しに行くっていう。
どうやったら娘をここまで反抗期に育てられるのか。
父親になろうとしている身としては、胃が痛くなるのでやめて欲しいのだが。
「アサギリくん!! こんな男に近寄っちゃダメだ!! 悪いクセが移っちゃうじゃないか!!」
そんな事を言いながらやってきたのは、同じくドレスアップをしたアーニャ。
新婦の母らしくモスグリーンの落ち着いたドレスを身にまとったアーニャが、ルーナと反対側の俺の隣に座ってくる。
ムニュッと押し付けられるのは、昨日ウェディングドレスを着せて楽しんだばかりの肉付きの良い肢体。
正直に言って、股間がオッキした。
ちなみに、俺達が座っているのは三人がけのソファーだった。
トーチャン、ルーナ、俺で座っていたソファーにカーチャンが加わったという事は。
「ああ!?」
哀れなトーチャンが押し出されて、床に転げ落ちていた。
哀れすぎて、見ているのが辛い。
「あら、アナタ。そんな所で床を舐めてどうしたの? そろそろいつもの時間ではなくて? 不埒なお店に出かけてらしたら?」
トーチャンを見つめるアーニャの目は、灰皿を撤去したというのに相変わらず吸い殻が捨てられているのを発見したコンビニ店員の目だった。
こっちも凍てつきすぎて怖い。
「お父様サイテー」
しかもそこに、自動ドアの前に放置されたペットの糞を発見したコンビニ店員の目をしたルーナが追い打ちをかける。
え、なんなのこの家族。
家庭崩壊しすぎてて怖いんだけど。
「る、ルーナちゃん!? ナーシャさんも! ちょっとアサギリに近づきすぎじゃないかな?」
地べたを這ったパパは、悔しそうにそんなセリフを吐いた。
――むにゅ。
――もにゅ。
近づきすぎっていうか、俺は両手でルーナとアーニャは抱き寄せていた。
両手に美人母娘とか。
我が人生に一片の悔い無し。
「「夫(義息)なんだから当然じゃないか!」――ってなんでお母様までギュッとしているんだ!?」
ルーナとアーニャの声がハモる。
ルーナが面倒くさいことに気づいたが、誤差みたいなもんである。
「お、夫はともかく義息ってそういうものじゃないんじゃ……?」
「お黙りなさい! アサギリくんは私がしっかりと傍についています。あなたのようにエッチなお店に通うダメな夫にならないように!!」
気の毒なくらいオドオドと突っ込んだトーチャンを、カーチャンが一瞬で黙らせた。
娘と嫁に嫌われ過ぎて、少しトーチャンが可哀想になるのだが。
ふと素朴な疑問が湧いてきた。
抱き寄せたアーニャの横顔を眺める。
艷やかなプラチナブロンド。
すっと通った鼻梁。
滑らかな頬に、淡く紅の引かれた艶めかしい唇。
俺にムニュッと押し付けられたのは、爆乳。
バインと突き出たエロい尻を撫でながら、思うのだ。
え、完璧な女じゃん、と。
こんな嫁がいて?
風俗に足繁く通うとか。
床に這いつくばる義父を見て思うのだ。
こいつは頭に何か沸いてんのかと。
「こんなに素敵な奥さんがいるのに、なんで浮気するんすか?」
なので素直に聞いてみた。
「ちょっと閣下……?」
後ろに立つエレインが冷や汗をかきながらジト目を向けてくる。
なんか文句あんのか。
「す、素敵って、もうアサギリくんっ! わ、私も大好きだよ! えへへ」
「お母様何言ってんの!?」
アーニャの反応は娘と同じで、可愛いなおい。
「ふっ、青いなアサギリよ」
俺の素朴な疑問に、パパがスクっと立ち上がる。
「嫁がどんなにいい女でも、他の女は別腹。だっていっぱいエッチしたいもん。……それが男ってものだろう?」
パパは今日イチの決め顔だった。
もん、じゃねえけど。
「「「…………」」」
ルーナ、アーニャ、エレインは寒イボを立ててドン引きしていた。
しかし、俺は素直に思った。
「かっこいい」
「「「ええええ!?」」」
アレな義父だけど、良いことを言う。
尊敬に値する義父かもしれない。
もしかしたら、パパとはいい関係が築けるかも……。
「ふふ」「はは」
そんな思いを胸に、俺とパパは小さく笑い合う。
それは紛れもなく義父と義息の笑みだった、
「あ、あんなのかっこいいとか言っちゃダメじゃないか!!」「私の今の旦那様のアサギリくんはあんな風になっちゃダメだ!!」「他の女ばっかり見てないで、閣下はもっと私を見るべきなんです!!」
三人の女には全否定されたが。
そんな時だった。
「ふう、全くやかましいのう、ここは」
ドカッと向かいのソファーに美脚を投げ出して座る美女。
「やっと陛下や重臣どもから開放されたわ」
シュボッと魔法でキセルに火をつけて、艶美な唇に咥える。
「さて婿殿。家族水入らずの話しをしようか?」
嫣然と笑うエスメラルダさんが、美脚を色気たっぷりに組み直したのだった。
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