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しおりを挟む奈留くんに頭を押さえつけられた状態のおれは、彼の言葉を理解するのに数秒かかり、脳が再起動するまで更に数秒かかった。
「……え、っと、死んでも要望しないんじゃなかったっけ、」
「気が変わった」
「ゆ、夕飯冷め、ちゃう……けど……」
「なら早く済ませば? 得意でしょ」
得意どころか未経験である。考え無しに発言した以前のおれが憎い。
奈留くんはどう言っても考えを変えてくれる気が無さそうだ。
怒髪天を衝くとはこの事か。おれが奈留くんの好きなとこ沢山見つけたのがそんなに嫌だったんだろうか。そりゃ嫌か。嫌いな奴に好かれて嬉しいことなんか何もねえわ。
「……さ、触っても」
「いちいち聞かないでよ」
「んな無茶な……」
ノロノロと奈留くんの制服に手をかける。こ、こういうのってベルトごと外した方がいいんだろうか。チャックだけでいいの?
一応汚すかも知れないと思いベルトも外した。金属の擦れる音と時計の針の音がやけに耳元で響いている。
紺地に赤いステッチの入った下着が覗くと、いよいよもって取り返しがつかない事になったぞと実感し始めた。
家に呼ばれた時から思いつく限りの覚悟は決めていたものの、いざ直面すると普通にビビる。覚悟ひとつでなんでも出来るなら人生はもっとスムーズだ。
「失礼しまーす……」
「声腹立つ。喋らないで」
何だとコラと言いかけたが口には出さなかった。声まで嫌われてたのかマジか。
割れ物扱う時並にそーっと下着に触れて、特に何の反応もしてない奈留くんの男性器を取り出す。
こんなに近くで他人の股間を凝視したのは初めてだ。当たり前だけど。
右手でつまんでみる。柔らかい。すんごい巨根ってわけじゃない。でも小さくもない。
「早く」
観察のし過ぎで怒られた。
ええい男は度胸だ、フェラチオごときで失うものなど何も無い!
手始めに先端にキスを落とす。おれのファーストキスはお前だちんこ君。
「…………、」
頭上で息を飲む音が聞こえる。奈留くんも慣れてないんだろうか。
おれは必死にエロ漫画を思い出していた。ガキの頃仲良くなったホームレスのおっさんと肩並べて読んだやつ。
確かえーと、歯は立てないんだろ。あと強く吸うんだっけ?
先を持ち上げて裏筋から根本に向かって順にキスして、下まで辿り着くと次は舌で上まで舐め上げて先端を咥える。
「……っやっぱ慣れてるじゃないか」
見下すような口調の奈留くんだ。首尾は上々ってことでいいのかな?
褒められて気を大きくしたおれは一思いに奥まで飲み込んだ。
まだ柔らかいし行けるだろと思ったら途端に口内の性器が硬くなり始める。あ待って存外、存外キツい。
急いで半分ほど口から出す。口の中でビクビク動いてるのが変な感じだ。
見知らぬ感覚を珍しがってる場合じゃなかった。さっさと終わらせないと。
亀頭を口内でひと舐めしてから、顔全体を前後に動かして抜き差しする。
奥まで咥えると吐きそうだったので入らない部分は手で扱いた。力加減は同じ男だし、一人遊びする時と同じくらいで大丈夫だろう。
この状態で吸うの難しくない? と心中で文句を垂れつつ気合いで吸い込む。裏筋に舌を添えながらすると少しやりやすい。
すぐ近くでハッ、ハッ、と荒い息遣いが聞こえてくる。
順調かも、と得意げになっていると、頭を両手で掴まれた。
え、ちょっと、まさか。
「……んっ! ぐ、うっ、んっんッ!」
案の定奈留くんはおれの頭を乱暴に動かして自分で扱き始めた。
これなんて言うんだっけ、何か名前あるよな。当てないように気をつけてた喉ちんこまで何度も突き入れられてクラクラしながら、そんなどうでもいいことを考えていた。
多少苦しいけど、早く終わるならまあ我慢出来る。
なるべく締め付けるように吸い続けていると、喉奥の性器がブルブルと震えだす。
「……ッ、は、あッ!」
「んぐっ、んーっ……!」
思い切り根本まで咥え込まされ、喉に直接精液をびゅうびゅう流し込まれた。吐きそう。
出したくても奈留くんがおれの頭をしっかりホールドしてて出せない。飲むしかない。
溺れそうになりながら少しずつ飲み込む。喉がごくごくと大仰な音を立てるのが妙に恥ずかしい。
奈留くんは最後の一滴までおれの喉に出してからようやく手を離した。口からまだ少し勃起したままの男根をだすと、鈴口とおれの舌を粘っこくて白い糸が繋いだ。
それを見て妙な羞恥心に駆られたおれが最後に亀頭に口付けて残りの精液を吸い取ると、奈留くんが一瞬悲鳴みたいな声を上げた。
「…………はっ、はぁっ………」
「………………はーっ、は……」
二人して荒い息を整えてるのが何だか滑稽で、おれはどうしようもなく愛おしいような、なんかそんな気分になった。
「……触っ、て、い……?」
「…………ん」
放心中の奈留くんはどこか無防備だ。ぞくぞくする。
おれは奈留くんの股ぐらに跪いたまま、お腹に抱き着いた。
制服のシャツ越しでも奈留くんの体温がやたら高いのがわかる。
耳を引っ付ける。すごい、バクバク聞こえる。奈留くんがおれの口で興奮した証拠だ。
お腹に頬を擦り付けるおれの髪を奈留くんが今までだと考えられないほど優しく梳いてくれる。本当はあんまり嫌われてないんじゃと勘違いしそうな手つきだ。
「……あはは、おれ、チューより先にフェラ経験しちゃった」
「…………嘘」
「嘘言ってどうすんだよ」
奈留くんがおれの頬をあっつい両手で包んで上向かせる。
部屋の電気を背負ってるせいで、その表情は見えない。
暗い顔が近付いて、おれに覆い被さる。奈留くんの吐き出す息が唇に触れ、次に彼の唇が触れる。
ああ、キスされてる、おれ。
ちゅう、と音をさせただけで離れた唇が、もう一度重なる。
おれの下唇を食む動作に思わず少し口を開けると、口付けが深くなった。
お互いの息を交換しながら舌をくっつけあって、本当の恋人みたいに貪られる。
奈留くんの少し曇った眼鏡が頬に当たってカチャリと音を立てたら、もどかしそうにした奈留くんが一旦唇を離し雑に眼鏡を取り払うと、時間が惜しいと言わんばかりにまた深いキスをされる。
やばい。勃っちゃいそうだ。でもやめたくない。
やっと気が済んだらしい奈留くんがおれを解放する頃には、もうおれの頭はドロッドロになっていた。
キスってすごいね、頭おかしくなる。
奈留くんは頬を包んだままの両手でおれの唇を弄ったり、人差し指と中指で挟んだ耳朶を撫でたりしている。
これは誰だ。本当に奈留くんなのか? そっくりさんと入れ替わったりしてない?
眼鏡のない奈留くんの顔を拝めるチャンスなのに、やっぱり暗くてよく見えなかった。
「……ピアス、どうして左ばかり開けてるの」
「え、……えと、に……友達と一緒に開けよーってなったんだけど、左の1番上開けたら痛すぎてそれ以上開けるの嫌になっちゃった」
「なにそれダサい」
奈留くんの声色がすごく柔らかくて、もしかしたら笑ってるのかもしれないと思った。
そしたら何だかたまらない気持ちになって、おれもへらりとだらしねえ笑みがこぼれる。
「……あの、飯食べる?」
「……………………うん」
それにしても気まずいなこれ!
夕飯は当然ながらそこそこ冷めていた。
奈留くんが決まり悪そうな顔で「……次は早く食べるから」と言ってくれたのが可愛くて可笑しかった。
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