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しおりを挟むグラウンドでの喧騒が聴こえる保健室の中、おれは友達に馬乗りされていた。人の上に乗るな。
「……えっと、もっかい言って」
「だからお前が俺の事好きって言ったのに何で他の奴に目移りしてんのって言ってんだよ!」
こんなに苦しそうな顔の楡は初めて見た。が今はそれどころじゃない。
「いやおれ木ノ重にも吾妻にもじゃんじゃん好きなとこ言ってるくない?」
「言ってるけど」
「言ってるよね!? 何ならクラスの半分に言ってるよね!?」
「でも俺だけ特別じゃんか!」
「待ってちょっと待って」
両肩を掴む力が強くなる。痛い。あと顔が近い。
外そうと身動ぎしてもビクともしない。体重かかってる分楡の方が有利だ。
「俺が言ったらペアのピアス付けたし!」
「楡が三日三晩ゴネ倒したからな」
「俺に合わせて髪同じ色にしただろ……!」
「誕生日にサプライズっつって楡が美容院で全部決めたよな?」
絶妙に食い違いが起きている。
確かに楡の提案は最終的にほぼ全て受け入れ体勢でいるけど、おれは可能な限り嫌がってたし渋ってたぞ。楡が強行突破したんじゃねえか。
「というか罰ゲーム内容楡が決めたんだぞ」
「……」
「万が一オッケーされたら、おれならこうなるってわかってたろ」
「……断られると思うじゃん……」
「それは確かに」
楡曰く、普段おれは楡に好き好きオーラを出しているにも関わらず全然アプローチしてこないから、同性を恋愛対象にするという発想自体が無いのかもしれないと思ったんだそうな。
それに関しては大当たりだ。実際お付き合いするまで男との恋愛はハナから度外視していた。
「だから一回男に告白させたらクローも自覚すると思って……」
「んな事の為に奈留くんをダシにすんなよ」
自覚も何もおれは楡には恋してなかった。今もしてない。
そこはちゃんとはっきりさせなきゃいけない。
「何にせよおれは奈留くんと付き合ってんだからお前は好きにならないよ」
「だからそのごっこ遊びをいつまでやるつもりなんだよ! 何で本気になってんだ!!」
「……そだね、本気だわ。多分終わっちゃってもおれは奈留くんを好きなままだ」
「……留目のせいでカツアゲされてんだろ」
「だから奈留くんのせいじゃないってば、おれが喧嘩売ったの」
「…………何で……」
俺の方がずっと近かったのに、と消え入りそうな声で項垂れる楡。
インナーに俺と同じ色が入った彼の髪がおれの首元をくすぐっている。
楡に気付かなかったのは悪かったと思うけど、こうなっちゃったもんはもう戻りようがないんだ。おれは奈留くんを知らなかった時間に戻れない。
「ごめんな楡そろそろどいて」
「……やだ」
「どかないとタマ潰すぞ」
「どうしてそんな恐ろしい考えができるんだよ!」
楡は速やかに退いた。逃げ足が潔いとこ好……ああ、こういうのがダメなのか。これからは気をつけよう。
もう授業に戻れと促すと、後ろ髪を引かれるように何度も振り返りながら保健室を後にしていく。廊下の方で話し声が聴こえる。先生と鉢合わせたのだろうか?
おれも立ちくらみがしただけだから、もう戻りたい。
寝台から起き上がって降りようとした時、扉がガラガラと開く音がする。
「あー先生、おれもう大丈夫なんで戻りまあす」
「戻らないで」
「……え、」
「カツアゲってどういうこと」
そこに居たのはめちゃめちゃブチ切れた奈留くんだった。
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