77 / 97
第七章 異世界であろうと、夢は見るようです
5.少女の夢、たまとの話、彼の説教
しおりを挟む
奇妙な感覚に包まれている。
たとえて言うなら、自分の靴を履いていたのに気づけば他人の靴に替えられていた、そういう奇妙な居心地の悪さに近かった。
『朝だよ、起きて』
朝? それなら起きなくちゃ。でも瞼が重くて言うことを聞いてくれない。
『ネハってば。プリャに怒られてもいいのか?』
それはいやだ。私はそう思ってしぶしぶ目を開ける。低い天井、薄っぺらい毛布。そして覗き込んでいる少年を見て、あたしは反射的に声を上げる。
『ナラ・ガル! あたしの部屋に入らないでって何度言わせるつもりなの』
私の声ってこんな細くて高かったっけ。勝手にすらすらと言葉が口から出て行く。そんなことを思いながら少年を見つめる。
小学生のなかばくらいだろうか。その少年は燃えるような赤い短い髪に金色の瞳を持っている。
教会のステンドグラスから飛び出してきたように清らかで衒いのないまなざし。その目元の柔らかさに見覚えがある。
えっ、ていうかナラ・ガルさん? どういうことだ。
『だってネハが来ないから。プリャが呼んでこいって』
困ったように眉を下げるナラ・ガル少年。まじか、こんな華奢でお人形のように可愛らしい少年が、将来あんなにごつくて雄々しい用心棒になるというのか。
男性ホルモンとか成長期ってすごいとショックを受けていると、身体がひとりでに動いた。手元にあった枕をナラ・ガルさんに投げつける。
『神性の高いこのあたしの部屋に――。出てって、次やったらプリャがどうかばっても追い出してやるんだから!』
拾われ子のくせに、と吐き捨てた私の言葉がナラ・ガルさんの顔から表情を奪った。
悲しむわけでも怒るわけでもなく、ただ静かに私を見つめ返している。幼い顔立ちからはどのような感情もすくい取れなかった。彼はごめんと小さく呟いて部屋から出て行く。
心底からの怒りの感情が、私の意識に流れ込んでくる。それはまるで耳に油を注がれるように不愉快で抗いがたいものだった。
これは私の感情ではない。どういうことだ――そう思っているうちに身体が勝手に動いた。寝台から降りて部屋の隅にかけてあるいびつな鏡に向かう。
足裏にはしっとりと冷たい土を感じるのに、どこか現実的な手ごたえのない状況。
そして鏡に映った顔を見て愕然とする。
腰まで届く三つ編みの茶髪。浅黒い肌。やや釣り気味の紅茶色の瞳。見知らぬ少女。
そして私は目を覚ます。
※
目を開くと、薄闇の中にある風化した天井とぼろぼろの土壁。それは昨夜寝る前に目にしたものと同じで、しかし夢で見たものにも酷似していたから私は混乱した。
慌てて身体を起こして自分の頬に両手を当てる。ぺたぺたと触ってから離し、目の前に広げて手のひらをじっと見つめる。見覚えのある手相。私の手だ。ピアノは弾けないがブラインドタッチはそこそこできる、人生の苦楽をともにしてきた私の手だ。
はっとして顔を動かす。夢と同じ位置に、壁と同化するほどに汚れた板のようなものがあった。
寝台を降りてその前に向かってみる。ひやりと冷たい湿った土の感触が裸足の足裏に伝わってくる。私の顔の位置よりもだいぶ低いところにあるそれは、まだ伸び盛りの子の顔の位置にあるように思える。
屈んでそっとその表面を手でこすると、土と埃が嘘みたいに固まったものが薄く剥がれ落ちて、傷だらけの曇った鏡が出てきた。ぎりぎり鏡としての役目を果たすそれを覗き込めば、ちゃんと私が映りこんでる。
「……ネハ?」
って誰? うつろに呼んだ見知らぬ少女の名前が、空気に溶けた。
「おはようございます、ナラ・ガルさん」
ナラ・ガルさんから借りた上着を着て居間へ出ると、彼はいつものように火を熾し終えて斧の手入れをしていた。
ちなみに借りた服はそれだけでワンピースになってしまうので、縄で浴衣の帯のように調節して着ている。靴は羊毛でざっくり編み上げたサボっぽいもの(ナラ・ガルさんお手製)をもらえている。
彼はいつも朝と夕方はいなくなるのだが、今朝はもう戻ってきていたようだった。
そういえばククルージャでも誰よりも早く起き出して活動していたのは彼だった。勤勉で優しくて器用って、現代日本ではモッテモテでは?
「……ああ、おはよう」
ナラ・ガルさんは一緒に過ごし始めてしばらく経った今でも私への態度に変化はない。バス停で待っている他人どうしみたいに、ちらりと視線を合わせた。
そんな彼に対して、私はとりあえず距離を保つようにしている。
ここでどう振る舞うべきか、やっぱり私にはわからないのだ。だったら衣食住に感謝して働いて、天珠の出現を待つしかない。
そう、天珠。
私は改めてそう考えて気が重くなる。今まではごたごたの中で天珠が現れたけど、冷静に思い返せばひたすら恐縮することではないか。人が人を心から大切にするというのは、そう単純なことではない。
天珠は愛情の上澄みだ。そんな貴重なものをもらっていいのか、そもそも私相手に愛情を持ってもらえるのか、そしてそれが必要でここに居候させてもらっているという後ろめたさで、不安と居心地の悪さがないまぜになっている。
「ナラ・ガルさん、この家に女の子って住んでいたんですか」
そんなことをつらつらと考えていた私は、ナラ・ガルさんとの距離を考えずに不用意にも尋ねていた。起き抜けでいくら頭が回っていなかったとはいえ、あまりにもうかつだった。その質問をすべきではなかったとすぐに思ったのは、金色の瞳がにわかに薄くなったせいだ。
「……どうして、そう思うのかな」
部屋に鏡がとなるべく軽く聞こえるように返せば、そうか、そうだったなと呟いて目を伏せた。顔から表情がすっぽり抜け落ち、そのくせ言いようのない苦味だけは感じ取れた。
まるでつつかれた貝みたいに、その全身をまるで殻のように固くして拒絶している。
出会ったばかりの私だったらきっと何も言わずに見なかったふりをしただろう。だけど今は、関わった以上は力になれたらと、そう思うのに。
届かないのだ。私の言葉は。
今ここでできることは何もないと思ったので、私は静かに部屋を出た。
外へ出れば、昇りたての光が目を焼く。山の麓から吹き上げる朝の乾いた冷たい風にぶるりと身体が震えた。通り抜ける緑のにおい。
不用意な質問をしてしまったと反省する。けどきっとこのまま過ごしても、ナラ・ガルさんとは平行線だ。だとしたら遠ざけられる覚悟をしてでも、こちらから踏み込むことも必要なのかもしれない。いずれは通る道だったと、ちょっと開き直りもした。どちらにしろ口から出た言葉は取り消せないのだ。
私は切り替えるつもりで大きく深呼吸をして伸びをした。
それにしてもこの、目の前に広がる牧歌的な世界。
ゆったり流れる雲の影が草原を横切り、羊は何もかもを知っている大賢人のような顔で口を動かす。耳に届くのは葉擦れと羊の歯の音だけ。
「連休に来たい」
ぽつりと呟く。日本で働いていたなら大型連休に、できれば夏に、ぼうっとするために来たい場所だ。
さて、と私はあたりを見回した。働かざるもの食うべからずという信条を実践しなければならない。
外の作業には薪割りや畑の手入れ、食べられる植物の摘み取り、羊と家の管理などがある。が、どれもすることを許可されていない。本当に見かけによらず頑固な人だ。
「そうだ、水汲み」
いつもはナラ・ガルさんが済ませてしまうけど、甕を覗き込んでみれば今朝はまだのようだった。これなら怒られないだろうと、手ごろな甕を両手で持ち、仮家から少し下ったところの泉へ向かう。
草は青々と一面に茂り、中には腰のあたりまで伸びているから足元はまったく見えない。うっかり石でも巻き込めば足をひねってさらに邪魔者になってしまうので、慎重に降りていく。
泉まであと少しというところで腕が疲れたので、ちょっと休憩する。坂を転がらないように注意しながら水甕から手を離す。取っ手がないからとても不便だ。工夫したのを作れたらいいのになあ。
草むらに座って後ろ手を突けば、背の高い植物にすっぽり覆われてしまう。
「ねえたま、けさ不思議な夢を見たの」
あのねと続けようとして、返事がないのに気づく。聞こえなかったのかなともう一度尋ねるが、やはり何も聞こえない。
腰の巾着(ヒルダがくれたのを、ナラ・ガルさんが貸してくれた服に付け替えたものだ)に入った頭輪(たま)の気配が今までになく薄いような。
手のひらに取り出して呼びかけると、ようやくかすかな声が聞こえた。縁子、とか細い声。
「たま? どうしたの、声が遠い」
(――以前も言ったが、この場所はひどく魔力が通りにくい。加えて不思議に澄んだ力も感じる。縁子と疎通するのに、ひどく力を割く)
届いた声は遠いだけでなく奇妙にざらついていた。昔のテレビで画像が乱れたときのような。
そういえば魔力が響きにくいとか言ってたっけ。そのせいで、本当は私のことを忘れているはずだったナラ・ガルさんが、少しのあいだ私の名前を覚えていた……のだったか。
ただそう言われても相手はあくまで頭輪なので、正直あまり気遣おうとは思えなかった。本体じゃないし、たまだし。
(それで、何か用か。手短にしてほしいが)
「ああ、うん。あのね、びっくりするほど鮮明な夢を見たの。その夢の中で私は小さな女の子で、それもここの家だったっぽい。小さいナラ・ガルさんまでいて」
夢を思い返しながらたまに話す。その子の言葉も、感情までも自分のものみたいに感じられた。他人の喜怒哀楽を避けようがなく共有するだなんてぞっとしない。特に流れ込んできた怒りの感情にはあまり免疫がないので、ひどく疲れた。
ふむ、とたまは考えを巡らせるように沈黙した。
(何かの書物で読んだことがある。不毛の山岳地帯、小柄な遊牧民族が暮らし、中には巫じみた性質をもつものもいると)
小柄な遊牧民族。仮家の天井が低いのはそのせいか。
でもかんなぎとは何だ。
(魔法とはものごとを体系づけて整理し、目的に合わせて編み上げる論理的な技だ。緻密さと忍耐強さと数多くの試行錯誤の末に得られる道筋のこと。対して巫はむしろ生まれ持った勘や感性の鋭さでものごとに繋がる者のこと。その娘、夢に近しい体質だったのだろう。その娘が身を横たえ続けていた寝台を使ったなら、じゅうぶんありえる事象と思うがな)
へえ。なんか初めてたまが魔法使い(の弟子)っぽいと思えたぞ。
「つまり、私は夢を通じて彼女の小さいころを覗いてるってこと? 現実にあったできごとを?」
そうなるな、と言うたまの声が疲れてきた。私は手早くもうひとつ聞きたかったことを尋ねた。
「あとさ、これが最後の転移って言ってたよね」
切り込むように聞けばたまは黙った。
「なによその反応。これって最後の転移なんでしょ。あとひとつ天珠を手に入れれば、阿止里さんたちへの借金はたまに返してもらって、私は日本に返してもらえるんだもんね」
ちょっと都合よく確認をすると、案の定たまはほだされなかった。
(待て。天珠については正しいが、借金のくだりは初耳だぞ)
ちっ、ばれたか。私は開き直ってみる。
「魔法使いの弟子でしょ、お給料よさそうじゃん。私にさんざん迷惑をかけてきたんだからちょっとは融通してくれてもいいでしょうよ」
(あいにく魔法使いの弟子は無給でな。丁稚奉公のようなものである。なんとか糊口をしのいで生きている涙ぐましい存在なのだ)
「あんたね、今の私の状況って、実質あんたのために働いてるようなもんじゃないの。立派な雇用関係よ。賃金として四人への借金、協力しなさいよ!」
(前向きに検討しよう)
こいつに口で勝てる気はしない。こういうことになるから世界では契約書というものが必要なのだ。私は下唇を噛みながら半眼で頭輪を見下ろして、なんとか乗せられないものかと持ち上げてみることにする。男性にはわりと利くよいしょ法だ。
「……それにしても、たまって本当にすごい魔法使いなんだね。あんたの予知だっけ、時間を越えたり転移したり、人の記憶まで変えたり。独り立ちもできるんじゃないの」
たまはまんざらでもなさそうに鼻を鳴らした。
(ふん。ようやく敬う気になったか? 予知はその絶大さゆえ使用を禁じられるくらいに、世界でもまたとない特殊な力。我輩は稀なそれを使える、すごい魔法使いの卵なのだぞ)
敬う気にはならないので、私は黙っておく。すごいとは思うがそもそも私は権威主義とは縁遠い。こっちの世界ではたまは有名大学を出ているかのような特権階級なのかもしれないが、私の尊敬する対象ではない。私がこういう目にあっているのは、だいたいこいつのせいなのだ。
「禁じられてたのに使いまくってんじゃん……。まあでも、魔法使いの弟子って響きはかっこいいね。唯一無二って感じがする」
これはわりと本心だ。
映画とか小説でも、魔法使いとその弟子って一蓮托生、師弟愛! のイメージだ。横柄なこの弟子も師匠の前ではかしこまったりするのだろうか。
そんなことを考えていると、たまが面白くなさそうに呟いた。
(……唯一無二ではないぞ。我輩には兄弟子がひとりいるからな)
「えっ、そうなの?!」
聞いたことないと言えば、別に聞かれていないしなとしれっとしている。いちいち癇に障る。
しかし意外だ。たまとの会話からアレクシス以外の第三者の話題が出るなんて初めてかもしれない。兄弟子ってことは先輩なのか。こんな後輩いたらすごく面倒かけられそうだとか想像したところで、たまが続ける。
(失礼なこと考えてないか? 兄弟子とはいってもだな、我輩のほうが面倒をみたりしているんだぞ。魔法使いの弟子にあるまじき無気力なやつで、まったく世話のやける……)
なんだか個人的な恨みをぶつぶつと言っている。魔力の動かし方の教本を広げた上で寝てよだれまみれにしただとか、ごはんも好みの味付けじゃないと食べずに無言で見つめてくるだとか。
あっ、そういう……と、あんがい苦労性だったのかもしれないたまの生活が垣間見えた。
ナラ・ガルさんと再会したときも思ったけど、人って集団の中にいるときとそうでないときでずいぶん印象が違うことがある。
私はふと高校のクラスを思い出す。だいたいいくつかの集団に分かれて、いったんその集団ができあがると、他の集団との接点はあまりなくなる。でも委員の話とかでいざ他の集団の人と話せば、意外なくらい話が合ったりする。かと言ってまた集団の中に戻ればぜんぜん関わらなかったり。
その集団の中でさえ、ひとりひとりよく見てみると無理してそこに属そうとしていたりもする。部活とか仕事でも、相手が年上か年下かでも態度が変わるっけ。誰もがお祭りの屋台みたいにいろんな仮面を持っていて、そのときに合ったものを無意識に選んでいるかのよう。
まあきっと私だってそうなんだろうし、いいとか悪いではなく人間はそういう生き物なのだろう。
私以外の誰かと一緒にいるたまを想像したとき、声が聞こえた気がして振り向いた。
草の隙間、遠くに赤い頭がきょろきょろと動いている。草が深いのであのあたりからは私は見えないかもしれない。
膝立ちになって頭を出すと、彼の焦ったような顔から表情が抜け落ちた。安堵とも困惑とも取れる顔。直後、ナラ・ガルさんは唇を引き結んでゆっくりと近づいてきた。
「私の名前、呼びました?」
「あなたの名前は呼んではいない」
頑なである。この人は未だに私の名前を呼ばない。私は私でちょっと意地になってなんとか呼ばせようとしているが成功率はゼロのままだ。
「こんなところで何をしている?」
「水を汲もうとしてました」
そう答えると彼は私の隣に置かれた水甕を見て、それから近くにある泉を見て、もう一度私を見た。
「そんなことは、しなくてもいい」
「え」
「水の入った甕がどれだけ重いか知らないようだ。可憐な女性になどとても持たせられない」
「可憐」
「それにうっかり転んで甕の破片でけがをしたらどうするつもりだ。女性の肌は赤子のように薄く脆いだろう」
「もう肌の曲がり角過ぎてます」
「一人で出歩くことも危険と言ったのに。かどわかしがないとは限らないんだ」
「はるかな地平線のその先まで人っ子ひとり見当たりませんが」
過保護モードに入ったナラ・ガルさんは私の話を聞いてくれない。このあたりではいわゆる”誘拐結婚”の風習もあるらしく、男性は気に入った女性を文字通りかっさらって仮家に閉じ込め、諦めて婚姻を受け入れるまで監禁するのだと。悪しき風習としてだんだん失われつつあるらしいが、まだまだ名残りがあるんだって。
そんなことを言われてもテレビの向こう側の話にしか聞こえない。実感と危機感を持てないのはけして私のせいではないぞ。360度、私たちと羊さんしかおらんのだ。
ただ訥々と話すナラ・ガルさんに言い返すのは火に油だともう知っているので、私はただ黙って聞いていた。穏やかに見えて、地雷っぽい部分を刺激すると頑固な一面があらわれる。そうと知らずに前に反論してすごく長引いたのだ。二の舞はごめんである。
言いたいだけ言って気が済んだのか、それからナラ・ガルさんは母親が転んだ幼子にするように慌しく私の全身を眺めて、何の異常もないのを確認してから、手早く甕を拾って水を汲む。
私はその様子に、ここまで女性を壊れもののように扱う彼に違和感を覚えた。
いくら何でも、行き過ぎてはいないか。
いつも「女性だから」というカテゴリで話をするのも。気づかうようにこちらを見る瞳のその奥、襞を掻き分けると、一種病的な強迫観念のようなものすら感じられるのだ。
不思議な夢。幼い少女とナラ・ガルさん。女性への固定された態度。
彼の怯えと笑顔が遠いことに、関係あるのだろうか。
「聞いている? なにかあってからでは遅いわけで」
「心から反省してます」
「心を感じなかったけど」
「込めましたって」
それから一緒に仮家まで登っていったけど、その間もずっと説教された。なぜ。
たとえて言うなら、自分の靴を履いていたのに気づけば他人の靴に替えられていた、そういう奇妙な居心地の悪さに近かった。
『朝だよ、起きて』
朝? それなら起きなくちゃ。でも瞼が重くて言うことを聞いてくれない。
『ネハってば。プリャに怒られてもいいのか?』
それはいやだ。私はそう思ってしぶしぶ目を開ける。低い天井、薄っぺらい毛布。そして覗き込んでいる少年を見て、あたしは反射的に声を上げる。
『ナラ・ガル! あたしの部屋に入らないでって何度言わせるつもりなの』
私の声ってこんな細くて高かったっけ。勝手にすらすらと言葉が口から出て行く。そんなことを思いながら少年を見つめる。
小学生のなかばくらいだろうか。その少年は燃えるような赤い短い髪に金色の瞳を持っている。
教会のステンドグラスから飛び出してきたように清らかで衒いのないまなざし。その目元の柔らかさに見覚えがある。
えっ、ていうかナラ・ガルさん? どういうことだ。
『だってネハが来ないから。プリャが呼んでこいって』
困ったように眉を下げるナラ・ガル少年。まじか、こんな華奢でお人形のように可愛らしい少年が、将来あんなにごつくて雄々しい用心棒になるというのか。
男性ホルモンとか成長期ってすごいとショックを受けていると、身体がひとりでに動いた。手元にあった枕をナラ・ガルさんに投げつける。
『神性の高いこのあたしの部屋に――。出てって、次やったらプリャがどうかばっても追い出してやるんだから!』
拾われ子のくせに、と吐き捨てた私の言葉がナラ・ガルさんの顔から表情を奪った。
悲しむわけでも怒るわけでもなく、ただ静かに私を見つめ返している。幼い顔立ちからはどのような感情もすくい取れなかった。彼はごめんと小さく呟いて部屋から出て行く。
心底からの怒りの感情が、私の意識に流れ込んでくる。それはまるで耳に油を注がれるように不愉快で抗いがたいものだった。
これは私の感情ではない。どういうことだ――そう思っているうちに身体が勝手に動いた。寝台から降りて部屋の隅にかけてあるいびつな鏡に向かう。
足裏にはしっとりと冷たい土を感じるのに、どこか現実的な手ごたえのない状況。
そして鏡に映った顔を見て愕然とする。
腰まで届く三つ編みの茶髪。浅黒い肌。やや釣り気味の紅茶色の瞳。見知らぬ少女。
そして私は目を覚ます。
※
目を開くと、薄闇の中にある風化した天井とぼろぼろの土壁。それは昨夜寝る前に目にしたものと同じで、しかし夢で見たものにも酷似していたから私は混乱した。
慌てて身体を起こして自分の頬に両手を当てる。ぺたぺたと触ってから離し、目の前に広げて手のひらをじっと見つめる。見覚えのある手相。私の手だ。ピアノは弾けないがブラインドタッチはそこそこできる、人生の苦楽をともにしてきた私の手だ。
はっとして顔を動かす。夢と同じ位置に、壁と同化するほどに汚れた板のようなものがあった。
寝台を降りてその前に向かってみる。ひやりと冷たい湿った土の感触が裸足の足裏に伝わってくる。私の顔の位置よりもだいぶ低いところにあるそれは、まだ伸び盛りの子の顔の位置にあるように思える。
屈んでそっとその表面を手でこすると、土と埃が嘘みたいに固まったものが薄く剥がれ落ちて、傷だらけの曇った鏡が出てきた。ぎりぎり鏡としての役目を果たすそれを覗き込めば、ちゃんと私が映りこんでる。
「……ネハ?」
って誰? うつろに呼んだ見知らぬ少女の名前が、空気に溶けた。
「おはようございます、ナラ・ガルさん」
ナラ・ガルさんから借りた上着を着て居間へ出ると、彼はいつものように火を熾し終えて斧の手入れをしていた。
ちなみに借りた服はそれだけでワンピースになってしまうので、縄で浴衣の帯のように調節して着ている。靴は羊毛でざっくり編み上げたサボっぽいもの(ナラ・ガルさんお手製)をもらえている。
彼はいつも朝と夕方はいなくなるのだが、今朝はもう戻ってきていたようだった。
そういえばククルージャでも誰よりも早く起き出して活動していたのは彼だった。勤勉で優しくて器用って、現代日本ではモッテモテでは?
「……ああ、おはよう」
ナラ・ガルさんは一緒に過ごし始めてしばらく経った今でも私への態度に変化はない。バス停で待っている他人どうしみたいに、ちらりと視線を合わせた。
そんな彼に対して、私はとりあえず距離を保つようにしている。
ここでどう振る舞うべきか、やっぱり私にはわからないのだ。だったら衣食住に感謝して働いて、天珠の出現を待つしかない。
そう、天珠。
私は改めてそう考えて気が重くなる。今まではごたごたの中で天珠が現れたけど、冷静に思い返せばひたすら恐縮することではないか。人が人を心から大切にするというのは、そう単純なことではない。
天珠は愛情の上澄みだ。そんな貴重なものをもらっていいのか、そもそも私相手に愛情を持ってもらえるのか、そしてそれが必要でここに居候させてもらっているという後ろめたさで、不安と居心地の悪さがないまぜになっている。
「ナラ・ガルさん、この家に女の子って住んでいたんですか」
そんなことをつらつらと考えていた私は、ナラ・ガルさんとの距離を考えずに不用意にも尋ねていた。起き抜けでいくら頭が回っていなかったとはいえ、あまりにもうかつだった。その質問をすべきではなかったとすぐに思ったのは、金色の瞳がにわかに薄くなったせいだ。
「……どうして、そう思うのかな」
部屋に鏡がとなるべく軽く聞こえるように返せば、そうか、そうだったなと呟いて目を伏せた。顔から表情がすっぽり抜け落ち、そのくせ言いようのない苦味だけは感じ取れた。
まるでつつかれた貝みたいに、その全身をまるで殻のように固くして拒絶している。
出会ったばかりの私だったらきっと何も言わずに見なかったふりをしただろう。だけど今は、関わった以上は力になれたらと、そう思うのに。
届かないのだ。私の言葉は。
今ここでできることは何もないと思ったので、私は静かに部屋を出た。
外へ出れば、昇りたての光が目を焼く。山の麓から吹き上げる朝の乾いた冷たい風にぶるりと身体が震えた。通り抜ける緑のにおい。
不用意な質問をしてしまったと反省する。けどきっとこのまま過ごしても、ナラ・ガルさんとは平行線だ。だとしたら遠ざけられる覚悟をしてでも、こちらから踏み込むことも必要なのかもしれない。いずれは通る道だったと、ちょっと開き直りもした。どちらにしろ口から出た言葉は取り消せないのだ。
私は切り替えるつもりで大きく深呼吸をして伸びをした。
それにしてもこの、目の前に広がる牧歌的な世界。
ゆったり流れる雲の影が草原を横切り、羊は何もかもを知っている大賢人のような顔で口を動かす。耳に届くのは葉擦れと羊の歯の音だけ。
「連休に来たい」
ぽつりと呟く。日本で働いていたなら大型連休に、できれば夏に、ぼうっとするために来たい場所だ。
さて、と私はあたりを見回した。働かざるもの食うべからずという信条を実践しなければならない。
外の作業には薪割りや畑の手入れ、食べられる植物の摘み取り、羊と家の管理などがある。が、どれもすることを許可されていない。本当に見かけによらず頑固な人だ。
「そうだ、水汲み」
いつもはナラ・ガルさんが済ませてしまうけど、甕を覗き込んでみれば今朝はまだのようだった。これなら怒られないだろうと、手ごろな甕を両手で持ち、仮家から少し下ったところの泉へ向かう。
草は青々と一面に茂り、中には腰のあたりまで伸びているから足元はまったく見えない。うっかり石でも巻き込めば足をひねってさらに邪魔者になってしまうので、慎重に降りていく。
泉まであと少しというところで腕が疲れたので、ちょっと休憩する。坂を転がらないように注意しながら水甕から手を離す。取っ手がないからとても不便だ。工夫したのを作れたらいいのになあ。
草むらに座って後ろ手を突けば、背の高い植物にすっぽり覆われてしまう。
「ねえたま、けさ不思議な夢を見たの」
あのねと続けようとして、返事がないのに気づく。聞こえなかったのかなともう一度尋ねるが、やはり何も聞こえない。
腰の巾着(ヒルダがくれたのを、ナラ・ガルさんが貸してくれた服に付け替えたものだ)に入った頭輪(たま)の気配が今までになく薄いような。
手のひらに取り出して呼びかけると、ようやくかすかな声が聞こえた。縁子、とか細い声。
「たま? どうしたの、声が遠い」
(――以前も言ったが、この場所はひどく魔力が通りにくい。加えて不思議に澄んだ力も感じる。縁子と疎通するのに、ひどく力を割く)
届いた声は遠いだけでなく奇妙にざらついていた。昔のテレビで画像が乱れたときのような。
そういえば魔力が響きにくいとか言ってたっけ。そのせいで、本当は私のことを忘れているはずだったナラ・ガルさんが、少しのあいだ私の名前を覚えていた……のだったか。
ただそう言われても相手はあくまで頭輪なので、正直あまり気遣おうとは思えなかった。本体じゃないし、たまだし。
(それで、何か用か。手短にしてほしいが)
「ああ、うん。あのね、びっくりするほど鮮明な夢を見たの。その夢の中で私は小さな女の子で、それもここの家だったっぽい。小さいナラ・ガルさんまでいて」
夢を思い返しながらたまに話す。その子の言葉も、感情までも自分のものみたいに感じられた。他人の喜怒哀楽を避けようがなく共有するだなんてぞっとしない。特に流れ込んできた怒りの感情にはあまり免疫がないので、ひどく疲れた。
ふむ、とたまは考えを巡らせるように沈黙した。
(何かの書物で読んだことがある。不毛の山岳地帯、小柄な遊牧民族が暮らし、中には巫じみた性質をもつものもいると)
小柄な遊牧民族。仮家の天井が低いのはそのせいか。
でもかんなぎとは何だ。
(魔法とはものごとを体系づけて整理し、目的に合わせて編み上げる論理的な技だ。緻密さと忍耐強さと数多くの試行錯誤の末に得られる道筋のこと。対して巫はむしろ生まれ持った勘や感性の鋭さでものごとに繋がる者のこと。その娘、夢に近しい体質だったのだろう。その娘が身を横たえ続けていた寝台を使ったなら、じゅうぶんありえる事象と思うがな)
へえ。なんか初めてたまが魔法使い(の弟子)っぽいと思えたぞ。
「つまり、私は夢を通じて彼女の小さいころを覗いてるってこと? 現実にあったできごとを?」
そうなるな、と言うたまの声が疲れてきた。私は手早くもうひとつ聞きたかったことを尋ねた。
「あとさ、これが最後の転移って言ってたよね」
切り込むように聞けばたまは黙った。
「なによその反応。これって最後の転移なんでしょ。あとひとつ天珠を手に入れれば、阿止里さんたちへの借金はたまに返してもらって、私は日本に返してもらえるんだもんね」
ちょっと都合よく確認をすると、案の定たまはほだされなかった。
(待て。天珠については正しいが、借金のくだりは初耳だぞ)
ちっ、ばれたか。私は開き直ってみる。
「魔法使いの弟子でしょ、お給料よさそうじゃん。私にさんざん迷惑をかけてきたんだからちょっとは融通してくれてもいいでしょうよ」
(あいにく魔法使いの弟子は無給でな。丁稚奉公のようなものである。なんとか糊口をしのいで生きている涙ぐましい存在なのだ)
「あんたね、今の私の状況って、実質あんたのために働いてるようなもんじゃないの。立派な雇用関係よ。賃金として四人への借金、協力しなさいよ!」
(前向きに検討しよう)
こいつに口で勝てる気はしない。こういうことになるから世界では契約書というものが必要なのだ。私は下唇を噛みながら半眼で頭輪を見下ろして、なんとか乗せられないものかと持ち上げてみることにする。男性にはわりと利くよいしょ法だ。
「……それにしても、たまって本当にすごい魔法使いなんだね。あんたの予知だっけ、時間を越えたり転移したり、人の記憶まで変えたり。独り立ちもできるんじゃないの」
たまはまんざらでもなさそうに鼻を鳴らした。
(ふん。ようやく敬う気になったか? 予知はその絶大さゆえ使用を禁じられるくらいに、世界でもまたとない特殊な力。我輩は稀なそれを使える、すごい魔法使いの卵なのだぞ)
敬う気にはならないので、私は黙っておく。すごいとは思うがそもそも私は権威主義とは縁遠い。こっちの世界ではたまは有名大学を出ているかのような特権階級なのかもしれないが、私の尊敬する対象ではない。私がこういう目にあっているのは、だいたいこいつのせいなのだ。
「禁じられてたのに使いまくってんじゃん……。まあでも、魔法使いの弟子って響きはかっこいいね。唯一無二って感じがする」
これはわりと本心だ。
映画とか小説でも、魔法使いとその弟子って一蓮托生、師弟愛! のイメージだ。横柄なこの弟子も師匠の前ではかしこまったりするのだろうか。
そんなことを考えていると、たまが面白くなさそうに呟いた。
(……唯一無二ではないぞ。我輩には兄弟子がひとりいるからな)
「えっ、そうなの?!」
聞いたことないと言えば、別に聞かれていないしなとしれっとしている。いちいち癇に障る。
しかし意外だ。たまとの会話からアレクシス以外の第三者の話題が出るなんて初めてかもしれない。兄弟子ってことは先輩なのか。こんな後輩いたらすごく面倒かけられそうだとか想像したところで、たまが続ける。
(失礼なこと考えてないか? 兄弟子とはいってもだな、我輩のほうが面倒をみたりしているんだぞ。魔法使いの弟子にあるまじき無気力なやつで、まったく世話のやける……)
なんだか個人的な恨みをぶつぶつと言っている。魔力の動かし方の教本を広げた上で寝てよだれまみれにしただとか、ごはんも好みの味付けじゃないと食べずに無言で見つめてくるだとか。
あっ、そういう……と、あんがい苦労性だったのかもしれないたまの生活が垣間見えた。
ナラ・ガルさんと再会したときも思ったけど、人って集団の中にいるときとそうでないときでずいぶん印象が違うことがある。
私はふと高校のクラスを思い出す。だいたいいくつかの集団に分かれて、いったんその集団ができあがると、他の集団との接点はあまりなくなる。でも委員の話とかでいざ他の集団の人と話せば、意外なくらい話が合ったりする。かと言ってまた集団の中に戻ればぜんぜん関わらなかったり。
その集団の中でさえ、ひとりひとりよく見てみると無理してそこに属そうとしていたりもする。部活とか仕事でも、相手が年上か年下かでも態度が変わるっけ。誰もがお祭りの屋台みたいにいろんな仮面を持っていて、そのときに合ったものを無意識に選んでいるかのよう。
まあきっと私だってそうなんだろうし、いいとか悪いではなく人間はそういう生き物なのだろう。
私以外の誰かと一緒にいるたまを想像したとき、声が聞こえた気がして振り向いた。
草の隙間、遠くに赤い頭がきょろきょろと動いている。草が深いのであのあたりからは私は見えないかもしれない。
膝立ちになって頭を出すと、彼の焦ったような顔から表情が抜け落ちた。安堵とも困惑とも取れる顔。直後、ナラ・ガルさんは唇を引き結んでゆっくりと近づいてきた。
「私の名前、呼びました?」
「あなたの名前は呼んではいない」
頑なである。この人は未だに私の名前を呼ばない。私は私でちょっと意地になってなんとか呼ばせようとしているが成功率はゼロのままだ。
「こんなところで何をしている?」
「水を汲もうとしてました」
そう答えると彼は私の隣に置かれた水甕を見て、それから近くにある泉を見て、もう一度私を見た。
「そんなことは、しなくてもいい」
「え」
「水の入った甕がどれだけ重いか知らないようだ。可憐な女性になどとても持たせられない」
「可憐」
「それにうっかり転んで甕の破片でけがをしたらどうするつもりだ。女性の肌は赤子のように薄く脆いだろう」
「もう肌の曲がり角過ぎてます」
「一人で出歩くことも危険と言ったのに。かどわかしがないとは限らないんだ」
「はるかな地平線のその先まで人っ子ひとり見当たりませんが」
過保護モードに入ったナラ・ガルさんは私の話を聞いてくれない。このあたりではいわゆる”誘拐結婚”の風習もあるらしく、男性は気に入った女性を文字通りかっさらって仮家に閉じ込め、諦めて婚姻を受け入れるまで監禁するのだと。悪しき風習としてだんだん失われつつあるらしいが、まだまだ名残りがあるんだって。
そんなことを言われてもテレビの向こう側の話にしか聞こえない。実感と危機感を持てないのはけして私のせいではないぞ。360度、私たちと羊さんしかおらんのだ。
ただ訥々と話すナラ・ガルさんに言い返すのは火に油だともう知っているので、私はただ黙って聞いていた。穏やかに見えて、地雷っぽい部分を刺激すると頑固な一面があらわれる。そうと知らずに前に反論してすごく長引いたのだ。二の舞はごめんである。
言いたいだけ言って気が済んだのか、それからナラ・ガルさんは母親が転んだ幼子にするように慌しく私の全身を眺めて、何の異常もないのを確認してから、手早く甕を拾って水を汲む。
私はその様子に、ここまで女性を壊れもののように扱う彼に違和感を覚えた。
いくら何でも、行き過ぎてはいないか。
いつも「女性だから」というカテゴリで話をするのも。気づかうようにこちらを見る瞳のその奥、襞を掻き分けると、一種病的な強迫観念のようなものすら感じられるのだ。
不思議な夢。幼い少女とナラ・ガルさん。女性への固定された態度。
彼の怯えと笑顔が遠いことに、関係あるのだろうか。
「聞いている? なにかあってからでは遅いわけで」
「心から反省してます」
「心を感じなかったけど」
「込めましたって」
それから一緒に仮家まで登っていったけど、その間もずっと説教された。なぜ。
0
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
【美醜逆転】ポジティブおばけヒナの勘違い家政婦生活(住み込み)
猫田
恋愛
『ここ、どこよ』
突然始まった宿なし、職なし、戸籍なし!?の異世界迷子生活!!
無いものじゃなく、有るものに目を向けるポジティブ地味子が選んだ生き方はーーーーまさかの、娼婦!?
ひょんなことから知り合ったハイスペお兄さんに狙いを定め……なんだかんだで最終的に、家政婦として(夜のお世話アリという名目で)、ちゃっかり住み込む事に成功☆
ヤル気があれば何でもできる!!を地で行く前向き女子と文句無しのハイスペ醜男(異世界基準)との、思い込み、勘違い山盛りの異文化交流が今、始まる……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる