S級ギルドから追放されたドラゴンテイマーは、竜王の娘たちと契約して最強ギルドを作る。〜後から謝られてももう遅い、俺は世界最強を目指す〜

石八

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第2話 竜族の少女との出会い

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 今俺が滞在している国──アグニエル王国は、この世界で最も冒険者が多く滞在している国として栄えている、世界的にも有名な国だ。

 そんなアグニエル王国にて、僅か五年という歳月で『S級』のギルドとして名を挙げた【強者の楽園】は、今も尚その勢力を拡大し続けている。

 しかし良い評判もあれば悪い評判もあり、傲慢なスヴェンの性格のせいか、冒険者界隈ではある意味嫌われているギルドでもあった。

 そんな【強者の楽園】から追放された俺は、今は一人静かに街並みを歩き回っていた。

 別に、これといってなにか目的があるわけではない。ただ単に、暇なだけなのである。

「はぁ……俺はこれから、どうすればいいんだ……」

 今まで冒険者一筋で生きてきたため、ギルドを追い出された今どうすればいいのかが分からない。

 別のギルドに足を運ぶというのも、一つの方法ではある。

 しかし、それは叶わないものになってしまっている。

 【強者の楽園】から追い出された冒険者は、その先の冒険者人生は転落しか待っていない。冒険者界隈では、そんな評判が出回っている。

 それも、全てスヴェンのせいなのである。

 スヴェンは聡明なわけでも、言葉一つで人々を扇動をするようなカリスマ性も持ち合わせていない。

 しかし、その分狡猾な男であった。そして、それでいて目的のためなら手段を選ばないという、横暴な男でもあった。

 そのため、スヴェンはギルドから追い出した冒険者の情報を、あることないこと全て他のギルドに伝達するのである。

 それにより、俺然り、追い出されてしまった冒険者は、他のギルドに行っても邪険に扱われてしまうのだ。

 そんな一面があるため、スヴェンの統べる【強者の楽園】というギルドは、冒険者界隈では酷く嫌われているのである。

「だが、世間はそれを知らない。世間は、功績しか見ていない」

 結局のところ、冒険者の世界は実力主義の世界だ。

 いくらスヴェンが悪どい男だとしても、奴が残してきた──というより、奴が集めた者たちによって積み上げられた功績は、非常に大きいものだ。

 あそこは、たった一人で一つの村や街を救えるだけでなく、百を超える魔物の群れを討伐できる猛者ばかりだ。

 まさに、あそここそが冒険者にとっての。いや、強者にとっての楽園なのである。

「……ん? なんだ、あれ」

 ふと、俺はあるものを発見する。

 それは、図体の大きな三人組の男が、一人の少女を裏路地へと強引に連れていくところであった。

 しかもその三人組の男は、よく【強者の楽園】のギルドの中で問題ばかり起こしている、問題児として有名な奴らであった。

「あいつら、また影であんなことしてるのか……!」

 冒険者の腕は確かだが、素行の悪さからギルドの中でも評判の悪い者たちなため、よく俺は奴らと揉めたことがあった。

 これでも、俺はギルドの中で起きる喧嘩を止める仲介役として動いていたため、奴らのことはよく知っている方だ。

 だからこそ、こんな真昼間に人通りのない裏路地に少女を連れていくなんて、まともな理由があるはずがなく。

 そのため、俺は頭を掻きむしりながらも、奴らの入っていった裏路地へと向かって走り出した。

 すると意外にもすぐに、俺は問題が起きるであろう場面に居合わせることができた。

「おいおい、つれねぇなぁ。そんなツンツンしてたら、可愛い顔が台無しだぜ?」

「うるさいわね。私は【強者の楽園】に用があるだけで、あなたたちには興味ないの」

 そこには、三人の男に囲まれているというのに決して怯えず、それでいて屈することなく立ち向かう気の強そうな少女の姿があった。

 その少女は、燃え盛る炎のように真っ赤に染まった髪を揺らしており、その長く伸ばされた髪は、まるで絹のような美しさであった。

 そんな髪に男たちが触れようとするのだが、少女は苛立ちを露わにしてその手を払い除けている。

 しかし男たちも余裕そうな表情を保っており、少女の豊かに育った健康的かつ扇情的な肉体を、まるで舐めるように眺めていた。

「そんなこと言うなよなぁ。これでも、オレさまたちは【強者の楽園】でBランク冒険者として活躍してるんだぜ?」

「ふんっ。Bランクなんて、まだまだじゃない。私は、あなたたちみたいな小物に用はないの」

「……っ、おい。少し綺麗だからって、調子に乗るんじゃねぇぞ」

 少女が口にした挑発にすぐ乗る男たちは、額に大きな青筋を浮かべていた。

 やはり、奴らは沸点が低い。低すぎる。

 そのせいで周りからも咎められているというのに、奴らはまだそこに罪を重ねるというのか。

 このままでは、少女の身が危険だ。

 そう思ったとき、俺は無意識のうちに身を隠していた場所から飛び出していた。

「──おいっ! お前ら、外でもこんなことしてるのか。いい加減、こんなつまらないことはやめろ」

 驚くほどに、俺の声は落ち着いていた。

 俺は、弱者だ。そのため、喧嘩の仲介に入るときはいつも暴言を吐かれたり、悪いときは暴力を振るわれたこともあった。

 しかし今の俺は、目の前にいる名前の知らない少女を助けるべく、動き出した。

 決して、誰かに指示されたわけでも、使命感に駆られたわけでもない。あくまで、俺は俺のしたいように動き出したのである。

 だがそんな俺の覚悟とは相反して、俺を嘲笑うかのように見下してくる男たちは、どこか下卑た笑みを浮かべていた。

「おうおう。誰かと思ったら、お前かよ! ビビらせんなよなぁ」

「そうだ、俺だ。悪かったか?」

「いいや。むしろ都合がいいぜ! お前は力を持たないクソザコな癖に、いつも俺たちに説教垂れてきたよな! いい加減、ムカついてたんだよ」

 拳を作って手をコキコキと鳴らす男たちが、舌なめずりをしながら俺の元へと歩み寄ってくる。

 だが、これでいい。

 こいつらは素行の悪い奴らだが、臆病者でもある。

 だから、いくら奴らが俺をボコボコにしたとしても、殺すような真似はしないだろう。

 奴らは少女一人ナンパするために、こんな裏路地へと連れていくほどの小心者だ。そんな奴らが俺にできることは、精々憂さ晴らしの暴力だ。

 そのため、俺はこちらの様子を眺めている少女に『今の内に逃げるんだ』とアイコンタクトを送る。

 しかし、その少女は俺の顔──というより、俺の右手を見てなにか驚いた表情を浮かべており、その場から逃げようとはしてくれなかった。

「おいおい、おいおいおい! まさか、お前。オレさまたちに勝つつもりか?」

「……勝てないだろうな。だが、時間なら稼ぐことはできる」

「ハハハハハ! 無様だなぁ、おい! 所詮、お前は落ちこぼれのクソザコなんだよ! ドラゴンテイマーだなんてスキルを持つだけで、オレさまたちの楽園に土足で入ってきやがって……ずっと、お前が嫌いだったんだよ」

 そう口にする男が、懐からあるものを取り出す。

 それは先端が鋭利に尖ったナイフであり、小型ではあるものの、人を殺すには十分過ぎる凶器であった。

「ここなら、お前を殺してバラしても誰にもバレねぇ! それに、お前が死んだところで悲しむ奴なんて、この世にはいねぇからなぁ!!」

 そう声を荒らげる一人の男が、ナイフを構えて突撃してくる。

 こいつ、ついに人として超えてはいけないラインを超える気だ。

 一応護身術は習ったことはあるものの、実践でナイフを捌くことはやったことがないため、今の俺に奴を捌けるかは分からない。

 しかし、やらなければ待つのは死のみだ。

 そのため、俺は腰を少し低めに構え、ナイフを持つ男を正面から迎え撃とうとするのだが──

「──やっと……やっと、見つけたわ……! あなたが、あなたこそが、長年私が探し求めていた人よっ!」

 突如、そんな少女の声と共に、小さな爆発音が俺の耳に届いてくる。

 気付けば、男たちの後ろでこちらを眺めていた少女は手のひらから炎の玉を放っており、その炎の玉は男のナイフを持つ手に直撃し、ナイフを吹き飛ばしていた。

「お、おい! こいつ、魔術使いだぞ!」

「しかも炎だと!? お前ら、こんな奴はもうどうでもいい! 殺される前に、とっととずらかるぞ!」

 どこか焦った様子で、逃げ惑う三人の男たち。

 しかしそうなってしまうのも、仕方がない。

 この世界で魔術を扱える者は非常に数が少なく、しかもその魔術の属性が最も威力の強い『炎』と知れば、誰だって恐怖を抱くだろう。

 だが俺は、決してその少女に対し恐怖の感情を抱くわけではなく、むしろ腕に炎を纏うその姿が、俺の目には美しく映っていた。

「大丈夫? 怪我はないかしら?」

「あ、あぁ……そっちこそ、なにかされてないのか?」

「えぇ、私は平気よ。だって、私は強いもの」

 美しく伸ばされた髪をなびかせるその姿に、俺は少しだけ見蕩れていた。

 しかし俺の心のどこかで、先ほど少女が口にした言葉が引っかかっていた。

 だがそんな疑問を俺が口にする前に、その少女は俺の思考を読んだかのように、クスリと笑う。

 すると、突然その少女は全身に炎を纏いだし、感じたことのないような熱気を放つようになる。

 そしてその炎が消えると、そこには背中から赤い翼を生やし、短いスカートの下から蛇のようにしなる尻尾を伸ばす、麗しい少女の姿があった。

「私の名前はステラ・ヴェイルムート。焔帝竜ファルク・ヴェイルムートの一人娘よ。これからよろしくね、私の契約者さん?」

 そう口にする少女──ステラが、妖艶な笑みを浮かべながら俺の首に腕を回し、抱きつくように体を寄せてくる。

 しかし俺は、今目の前でなにが起きているのか整理することができず、ただただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった──
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