最強勇者は二度目を生きる。最凶王子アルブレヒト流スローライフ

ぎあまん

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18 VS魔獣03

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 竜は空に舞い上がり、俺を振り落とそうとする。
 だが、無駄だ。

「俺のしつこさを舐めちゃいけない」

 体は小さくなっても執念深さまで小さくなったわけじゃないぞ。
 周囲には竜の放つ……竜が二体いてややこしいな。
 こっちは翼が無事だから翼竜としようか。
 翼竜は俺を落とそうと暴れながら、口から雷を吐く。
 それが周囲の大気に帯電し、体中をビリビリと痺れさせる。
 結界の魔法は、完全に自身の周辺を遮断する完全物理結界と、自身への悪意ある攻撃にだけ対応する反応結界がある。
 いま使っているのは後者だ。
 完全物理結界の方が安全性は高いが、周囲の空気まで遮断する。
 長くその中にいると、空気が淀んでその結果、死ぬことになる。
 勝負が長引きそうな時には使わない方がいい。
 いまの結界は、翼竜が口から吐く雷には反応するが、大気に帯電しているだけの電気には反応しない。
 まぁ、それも魔功を効かせた体にはそこまでの痛みにもならない。

「さてと」

 翼竜の頭にある毛を掴み、振り落とされないようにしているのだが、そろそろ反撃してもいいだろう。
 片手を毛から放し、拳を作る。

 深く息を吸い、吐く。
 魔功の基礎は呼吸にある。
 体内の魔力の循環は呼吸と心臓によって循環する血液の流れと連動している。
 魔力だけを動かして行うことも不可能ではないが、呼吸が不全の状態であればどの道、肉体そのものの運用が難しいことに変わりない。

「まったく、せめて十五歳ぐらいの体なら、この程度で苦戦することもないのにな」

 未成熟の我が身を呪いつつ、拳を翼竜の後頭部に当てる。
 練り上げた魔功をそこに叩きつける。

 浸透撃。

 放たれた魔力が翼竜の体内に侵入し、衝撃となって拡散する。

「むう、ぬるい」

 突然の衝撃に翼竜はふらついたが、その程度だ。
 すぐに立ち直る。

「それなら……」

 再び、拳を頭に付ける。

「倒れるまでやるだけだ」

 俺は、しつこいんだ。
 翼竜が涙目でこちらを見ている気がした。
 が、知らん。


●●ソフィー●●


 剣が、折れた。

「くっ!」

 度重なる雷の咆哮をかわし、機と見れば接近して竜の肌を切ることに挑戦していたのだけれど、ついに剣の方が負けてしまった。
 だが、剣はまだもう一振りある。

「ソフィー様、引いてください」
「それは、聞けないわね」
「ソフィー様は王妃なのですぞ」
「だからこそ、と言ったでしょう?」

 騎士の訴えをそう言って流し、剣一本の構えを取り直す。
 嫌で嫌で仕方がないです立場でも、王妃は王妃。

「民を前にして逃げ出すなど許されるものではありません」
「ソフィー様」

 騎士がぐっと呻く。
 その鎧にも汚れていない場所などない。
 雷の咆哮の直撃は避けているが、余波は受けている。
 鎧は汚れているだけだが、その下では雷による火傷ができているはずだ。
 そしてそれはソフィーも同じだ。
 だが、彼女の顔から戦意は失われていない。
 悲壮感もなく、一人の戦士として竜と対峙している。

 だが、竜に戦士として感傷などはない。
 しつこいこの人間に、少々うんざりしてきた。
 縄張り争いに敗れ、苛立ち紛れに落ちた先の人間の集落を破壊していたら、この人間たちが邪魔をしてきた。
 弱い生き物が竜の邪魔をするなど、許されることではない。
 だが、しつこい。
 背中の痛みもある。
 怒りが収まると、邪悪な知恵が竜の頭蓋を巡った。
 そうだ、こいつらは、人間の集落を守るためにここまで竜を誘引したのだったか。

「なっ!」

 竜が雷の咆哮を放とうとしている。
 だがその向きはソフィーたちに向けてではない。
 街に向けてでだ。

「させない!」
「ソフィー様!」

 それが誘いだということは、ソフィーにだってわかる。
 だが、動かなければ竜はそのまま咆哮を放つだけだろう。
 止めに向かうのは、ソフィーがいまこに立っている理由として、当然の行為だった。
 そしてそれを、竜は待っていた、
 咆哮の向きをソフィーに変える。
 ひた走っていたソフィーが、それを避けることなどできるわけもない。
 竜の口内の輝きは増し、いままさに放たれようと……。

「させるかよ」

 新たな声、そして衝撃音。
 衝撃は竜の顎を襲い、その口が閉じられた。
 雷という光の爆発は竜の口内で起こり、目や鼻、毛の中に隠れていた耳から雷の舌が伸びる。

 止まれないソフィーはその光景を目にしながら、さらに飛び、竜の目に自らの剣を叩き込んだ。

 GYAAAAAAAAAAAAA‼︎

 竜の悲鳴に打たれ、ソフィーは剣を手放してその場から離れる。
 そして、竜の顎を蹴った人物を見た。

「お、お父様!」
「おう」

 そこには、見送ったはずのマクシミリアンの姿があった。

「変な空模様だったから走って戻ってきた」
「走ってって……」
「馬も連れも置いてきたが、まっ、後から追いつくだろう」

 我が娘にしても信じられないことを言う。
 だが、それがアンハルト領の主人。
 最強のアンハルト騎士団を率いる、勇者の仲間マクシミリアンなのだ。

「で、だ?」

 マクシミリアン……マックスはやっとこちらを見た竜に向けて話しかけた。
 竜は片目を潰され、自らの雷で顔中が焦げて、怒り心頭となっている様子だ。
 しかし、そんなことはマックスの知ったことではない。

「お前に、うちの娘になにしてくれてんだ?」

 手には、剣がある。
 剥き出しの筋肉が膨れ上がる。
 体内を走る魔功が光となってマックスを覆う。
 その瞬間、竜は、そこにいるのが格上の存在だと理解した。
 もはや遅いのだが。

「くたばれ」

 上段からの一閃が竜を襲う。
 強靭な竜の鱗はマックスの斬撃の前ではなんの役にも立たず、頭から尾まで一閃の元に裂かれ、絶命することとなった。

「お父様!」
「侯爵閣下!」
「やれやれ、ソフィー、お前、運が悪すぎないか?」

 自分で思ったことを父親に言われ、ソフィーが笑みをこぼした。
 その時だ。

 ズドン!

 凄まじい音とともに、真っ二つになった竜になにかが落ちた。
 三人がそこに見たのは翼の生えた、先ほどの竜に似ている魔獣だ。
 そして……。

「「「あっ」」」

 翼竜の頭から姿を見せたアルブレヒトの姿に全員が声を上げた。
 見られたアルも、もちろん「あっ」と言っていた。
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